――異動先の選択肢に海外はあるのでしょうか?
木瀬さん:もちろんあります。広告業界としても海外展開は重要な戦略の一つなので、最近では増えてきています。1回目の異動のタイミングでインドネシアにいって大活躍している人もいますよ。
――最近の若者は海外志向が弱いイメージがありますが、御社ではそんなことはないのですね
木瀬さん:海外志向の強いひとは多いですね。そうした人たち向けに、「グローバル人材プール制度」というものもあります。これはグローバルビジネスをしていくのに必要な研修を受けられるものです。
――続々と制度名が登場してワタクシ混乱気味ですが、どんなキャリアニーズにも応えられるくらい人材開発プログラムが充実している、ということですね
木瀬さん:そのご理解で問題ありません(笑)
博報堂社内に存在する「企業内大学」
――「多段階キャリア育成制度」によって、約9年かけて複数の専門性を身につけられるのは素晴らしいことですが、実務的な視点で言うと、例えば1年目~3年目の営業の期間でもマーケティングやクリエイティブの視点が求められるようになってきていますよね? 短期的な視点でも複数の職種の知識が必要という点に対してはどうお考えですか?
木瀬さん:そうした広告のプロとしての基礎力については、「博報堂大学」(社内呼称/正式名称は「HAKUHODO UNIV.」)の必修プログラムを通して学んでもらう仕組みがあります。
――なるほどぬかりないですね。資料を拝見すると、「イノベーション講座」や「クリティカルシンキング」「マクロ経済と経営環境」など、本当に大学の授業のような興味深い講座が並んでいますが、これらは全社員が自由に受けられるのですか?
木瀬さん:いえ、これらのいわゆる大学っぽい講座は「ビジネス構想プログラム」といって入社4年目以降の社員に向けたものです。入社5年目までは「構想ベーシックス」という必修プログラムを通して、広告のプロとして働く上で必要となるコアスキルを学びます。
――そのほか、外部講師をお呼びしての講演プログラムもあるようですが、過去の講師陣はまた豪華ですね。ノーベル賞受賞者や有名な建築家など錚々たるプロフェッショナルが名を連ねてますが、ちょっと贅沢すぎませんか?
木瀬さん:ですよね(笑)。通常お金を払って参加する外部のセミナーを社内で受けられるのは、社員にとっても大きなメリットになっていると思います。
30代、40代、50代それぞれの キャリアにあわせたプログラム
木瀬さん:また、これら実務向けの研修プログラムとは別に、「キャリアデザインプログラム」というものもあります。30代、40代、50代それぞれのキャリアの転換期に、過去を振り返って、将来やりたいことを見つめ直し、これからの自分を考えていく機会を提供するものです。
――仕事が忙しすぎて将来のキャリアや生き方についてじっくり考える時間がないという問題はよく耳にしますね
木瀬さん:そうなんです。だからあえてオフサイトで2日間行う「ワークショップ」も実施していて、臨床心理士の資格をもった社員が各自の内面にある思いを深堀するサポートをしたりします。このワークショップがきっかけとなって、「リーママプロジェクト」や「ウェブベルマーク運動」といった新たなプロジェクトも生まれました。
――通常の業務とは異なる場所でも、社会的意義のあるプロジェクトが生まれるのは素晴らしいですね