NANDフラッシュを記録媒体として利用したストレージであるSSD(ソリッドステートドライブ)。HDDとは比べものにならない高速なアクセス速度、駆動部品がないことによる衝撃への耐久性や省電力によって、ノートPCを中心に急激に普及が進んでいる。HDD利用時の不満を解消する多数のメリットを備えたSSDだが、これまで映像制作現場での導入は難しかった。

その最大の理由は、容量不足と耐久性への不安だろう。撮影した多数の素材を利用して編集を行う映像制作の現場では、テラバイトクラスの容量を備えた耐久性の高いストレージが必要となるためだ。しかし技術の向上によりSSDの容量や耐久性は目に見えて進化してきており、同時にその価格も日を追うごとに下がってきている。

1TBという大容量モデルを実現した「Samsung SSD 850 PRO」

9月12日に日本で発売された「Samsung SSD 850 PRO」は、そんなSSDの進化の最先端を行くSSDだ。世界で初めて「3D V-NAND」を採用することで、最速クラスの速度を誇った前モデル「Samsung SSD 840 PRO」を超えるアクセス速度を実現。同時に耐久性も向上させることに成功しており、150TBまでの書き込みを保証、製品の保証期間も10年まで伸びている。さらに、1TBの大容量モデルも用意され、データ用ストレージとしても魅力的な存在となった。

そこでマイナビニュースでは、「Samsung SSD 850 PRO」の1TBモデルを使って構成した自作PCを用意し、映像編集ソフトをインストール。20年間で200本以上のテレビドキュメンタリー作品を制作しており、劇場映画/ドキュメンタリーの監督としても注目を浴びている映像作家・坂口香津美氏に、実際に試用してもらった。本稿ではその様子を紹介したい。

坂口氏がHDDに感じる不満と不安

坂口香津美氏

普段はWindowsを利用し、映像編集時にはMac Proで「Final Cut Pro 7」を使用しているという坂口氏。この環境にして長いとのことだが、色々とストレスを感じている点もあるようだ。まずは不満点について伺ってみよう。

坂口氏 「不満のひとつは、容量ですね。私は映画とドキュメンタリーを制作していますが、特にドキュメンタリーでは映像素材の量がすごく多くなってしまうんです。自分の環境で編集しているときはまだよいのですが、スタジオへデータを持ち込むのにHDDそのものをバイク便で送ったり、持ち歩いたりしなければいけません。HDDは衝撃に弱いですから、ドライブが壊れてデータが消えてしまうのではないかと不安を感じています」

近年は映像の解像度も上がっており、映像データのサイズも飛躍的に増している。そんな映像素材のやり取りでは、最終的にはテラバイトクラスのストレージが欠かせないとのこと。しかし駆動部品の多いHDDは常に破損の危険性があり、その扱いに苦労しているようだ。

坂口氏 「次にFinal Cut Proでの編集中の動作の重さでしょうか。これはHDDだけでなく、私の使用しているパソコンのスペックも関係しているのでしょうけれども、エフェクトをかけた際に待ち時間が発生したり、素材を読み込む際にとても時間がかかったりしてしまいます。せっかくインスピレーションが湧いても、すぐに反映できない。これは大きなストレスですね。このような待ち時間って、トータルで見た時にかなりのタイムロスになっていると思うんです」

編集は、映画監督の重要な創作活動であるのと同時に、もっとも時間のかかる作業。編集ソフトの動作の重さは、坂口氏に大きな影響を与えているようだ。多くの映像素材を活用するということは、それだけ映像を読み込む頻度も高いということなので、アクセス速度へのニーズは非常に高い。

インタビューの合間に坂口氏が見せてくれた愛用の手帳。映画の企画や編集・撮影のアイデアや心得など様々な内容が書き込まれており、すでに15年使用しているという

3.5インチHDDに比べて小さく、そして軽いSSD

坂口氏の不満のひとつは、HDDというメディアの取り扱いにあった。軽い衝撃でもデータが破損してしまう可能性のあるHDDは気軽に持ち運べるものではないため、外部に持ち出す際には細心の注意を払わなければならない。しかしSSDには、駆動部分がないため衝撃に強いという特徴がある。まずは坂口氏に、ハードウェアとしてのSSDをHDDと比較していただいた。

坂口氏 「これがSSDですか。改めてHDDと比べると、本当に小さく感じますね。これで1TBなんですか、ちょっと前のHDDと同じくらい入るんですね。なにより、びっくりするほど軽い。衝撃に強いなら、カバンに放り込んでそのまま外に出かけても大丈夫そうですね。HDDと同じ機能を果たすものとは思えないです」

「Samsung SSD 850 PRO」(左)とHDDを手に取る坂口氏。なお850 PROは、マウンタに設置した状態

自作PCにどのように「Samsung SSD 850 PRO」が設置されているかもチェック頂いた

大容量のストレージと言えばHDDのイメージが強かったようで、軽く、衝撃に強いSSDに大きな魅力を感じていただけたようだ。HDDを持ち運ぶ場合、衝撃から守るためのケースなども必要になり、数が多くなるほど荷物は重くなる。しかしSSDならば本体そのものが軽い上、安心して持ち運びが可能だ。

次ページでは、実際に「Samsung SSD 850 PRO」を組み込んだPCを操作していただこう。