常に全力で戦える相手

──コンピュータを自分の棋力向上のためのパートナーとして付き合うという考え方があります。コンピュータと練習することによって自分をもっと高めようという意識はありますか。

和室のちゃぶ台に設置されているガレリア電王戦

それがあるからガレリア電王戦を使わせてほしいとお願いしたわけです。人間が相手だと、(公式戦以外で)全力で戦える機会はなかなかないんです。研究会でももちろん全力でやっていますけど、やっぱり公式戦とは違います。それに研究会の約束をするときに『明日は持ち時間3時間の長い将棋を指そうね』って言っても、そんなのやってくれる棋士はいないですから(笑)。コンピュータは、こっちだけ予定を調整してしまえばいつでも強い相手と好きな持ち時間で戦える。そういう意味ではすごくありがたいです。

──コンピュータとの練習で、参考になった手や、読み筋を見てなるほどなと感じることはありましたか。

具体的にこの手がっていうわけではないですけど、参考になる考え方とか指し手はすごく多いです。自分の公式戦で指した将棋をよく解析させたりしましたが、自分の考えた以上の手を示すこともあれば、なるほどこういう考え方もあるなっていう手もありましたし、コンピュータもまだまだだなって思うことも(笑)。そういう距離感を測っていた部分もあります。ただ、1手5分くらいでコンピュータに読ませていると、1局解析し終わるまで7~8時間もかかってしまいます。コンピュータの読み筋を見て、自分ももう1回考えながら、どっちの読み筋が正しかったかというようなこともやってました。

──人間の固定観念みたいなもので読みから除外していたところを、もう1回掘り下げることも大切なのでしょうか。

そういうのを気付かせてくれるっていう意味ではとても素晴らしいと思います。ただ、いまのコンピュータの力は、例えば1つの局面で最善の手(100点の手)を探すっていうことだと人間のほうが優れていると思っています。人間ならちゃんと力を出せれば100点の手が指せます。ただし10点や20点の悪手も指してしまうんですが……。コンピュータに局面を見せれば常に正解を出してくれるということでは全くなくて、ちょっとしたヒントをくれるぐらいなんでしょうね。僕のイメージでは常に80点の手を指し続けてくるという印象です。とはいっても常に80点の手を指すっていうのはすごいことなので、勝負では人間に厳しい時期にきてるのかなと思います。

――例え80点の手でも、人間は間違うから形勢を損ねてしまうと?

それはつまり、人間が常に100点の手で粘っていれば逆転もできるということ。ただ、さんざん揺さぶられた上にずっと高値の手を指されるので、終盤で形勢が悪くなると人間は厳しいですね。逆に優勢のまま終盤戦になれば、人間もいけるんじゃないかなっていう印象はある。そういう場面を電王戦で見せたかったので、それは残念でした。

変えられない部分がある

――コンピュータと対局することが、精神修業になるってことをおっしゃった棋士もいます。人間同士の対局では、これは自分が負けるなと分かって気持ち的に降りてしまう瞬間があり、自分が勝てるなと思ったときには乗っていく。そういう流れの見え方、感じ方っていうものに助けられて勝っている部分があるんじゃないかと。コンピュータはそういう降り方は絶対しないので、そこで人間は自分の弱さを感じたりするのだと。

コンピュータは気持ち的に折れないっていうか、この手が通らなければ負けだみたいな一か八かの手を指さないので、負かすのは精神的にすごい大変です。自玉が詰みそうなら延命策をとってくるので、勝つまでに時間がかかる。だから一局を勝つ大変さを知ることができる部分はあります。コンピュータはほんとタフですからね。

――そのタフなコンピュータと練習することによって、自分が以前より精神的に強くなったと感じる部分はありますか。簡単に諦めなくなったとか。

僕はもともと簡単に諦めないですからね(笑)。コンピュータとの練習で、自分のここがこう変わったというのがはっきり目に見える形として表れればいいなとは思いますが、将棋ってなかなかそういうものではないですから。僕も子どもの頃から30年近く指しているし、簡単には変えられない部分があるんです。ちょっとずついい方向に変わっていければいいなとは思います。

――全面的に変えることはできなくても、いい部分を少しずつ取り入れることは可能ではないでしょうか。

そうですね。でも真似できない部分っていうのもすごく多いので(笑)。人間が真似しようとすると逆に痛い目にあうかもしれない部分がたくさんあるんです。ただ、さっき言ったタフさとか、気持ちの折れない相手を倒すことは、絶対マイナスにならないので、そういう部分から少しずつ学んでいければと思います。

魔法の機械ではない

――佐藤六段は、ガレリア電王戦を、今後はどういう風に活用しようと思っていますか。

コンピュータをあまり気軽には使わないで、こっちも常に全力で向かって戦う気持ちで接していくほうがいいんだろうなと思っています。安易に答えを聞こうとするとプラスにならないんじゃないかと。基本的に実戦相手で使っていきたいです。やっぱりお友だちになってはいけない(笑)。

――将棋会館にも同じパソコンが設置されて、棋士が誰でも練習に使えるようになりました。これからいろいろな棋士が研究相手としてコンピュータを活用する機会も増えていくと思われます。こういう風潮をどう感じますか?

そういう時代ですから(笑)。コンピュータに手を聞くことに抵抗がある人もいるとは思うんですけど、将棋の楽しいところを気付かせてくれる部分もすごくあるので、棋士だったら1回触れてしまうと頑なに嫌っていう考えはしなくなるんじゃないかな。僕もそうですしね。

――うまく付き合えば力強いパートナーになると。

そうですね。ただ、研究課題の局面とかをコンピュータに検討させるのは、まだ自分の中のルールではやるべきではないなというのはあります。コンピュータは魔法の機械ではないわけだから、そこはやっぱり自分で考えてやるべきなんだろうなと。

――ガレリア電王戦の使い心地はいかがですか?

快適ですね。コンピュータの処理能力の違いというのは、ソフトの実力の違いにつながるので、練習に使うにはとても素晴らしいパソコンだと思います。

――このガレリア電王戦は、一般に市販もされています。これから購入したいと思っているアマチュアユーザーのために、上達のためのコンピュータ活用法をアドバイスしてください。

より強いソフトで力試しをしたい人、あとは棋譜解析機能でプロの将棋を解析してみて、何がよかったか悪かったかみたいなのを見たり、指し手を解析しながらタイトル戦を観戦したり……。そういう風に使うとガレリアのよさが生かせるんじゃないでしょうか。棋譜解析も、かける時間によって精度が上がるので、高性能なガレリア電王戦は最適なパソコンだと思います。

電王戦公式統一採用パソコン「GALLERIA 電王戦」

価格:299,980円(+税)

「最良の一手」を導く、卓越した性能と安定性

将棋ソフトの持てる力のすべてを出しきれるよう、現在望みうる最高ランクの性能を持つCPUを採用。効率的かつ高速な演算性能により、各ソフトの秘めた力を十二分に引き出すことができます。また、使用パーツを厳選することで、高負荷状態でも長い時間安定して稼動し続けられる、まさに「将棋ソフト向けモデル」です。

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本稿は、日本将棋連盟発行の『将棋世界』2014年11月号の記事の転載です。

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