ポイント3:静かで冷えるクーラー
3つ目のポイントはクーラー。クーラーの重要性はもちろんお分かりだと思うが、あらためてまとめておこう。クーラーが重要なのは大きく3つの理由がある。
まず、昨今のGPU、特にミドルレンジ以上のGPUは、PCパーツのなかでも最も消費電力の大きい、つまり発熱の大きなパーツになっている。例えばCPUならHaswell世代の最上位モデルIntel Core i7-4770KでもTDPは84W程度だが、GeForce GTX 760はその2倍以上となる170Wもある。この表皮電力での発熱をキッチリ冷やす必要がある。なお、リファレンスデザイン・クーラーも、GPUメーカーがしっかり検証したうえで動作に問題ない冷却性能を持っているが、グラフィックスカードメーカーのオリジナルクーラーは、それ以上に冷える点で優れている。
次に静音性。ゲームは、プレイ中のBGMやSEも含めてゲーム観を楽しむものであるし、FPSに関して言えば、勝ち抜くためにも敵の忍び寄る音がしっかり聞こえることが重要だ。そうした音を、PCのノイズがかき消してしまうようでは興ざめというもの。
昨今ではリファレンスクーラーの動作音もかなり低減されているものの、オリジナルクーラーはより静音性を追求している。それも、先の冷却性能との両立を実現しているので、特にファン・チューニングをしなくても、快適に、安心してゲームが楽しめる。
ASUSのグラフィックスカードクーラーでは、DirectCU IIという技術が用いられている。これは、ヒートパイプを、GPUチップに直接接触させる技術だ。通常、ヒートパイプは、ヘッドと呼ばれるクーラーの台座部分に埋め込まれるものだが、直接接触させることでダイレクトに、効率的に熱交換を行うことを目的としている。
また、これまでのDirectCU IIでは、ハイエンドモデルに3スロットの大型クーラーを採用していたが、GeForce 7シリーズカードからは2スロットサイズに小型化された。小型化されたといっても、ヒートパイプは限られたスペースに最大本数を、同時に最大の太さで配置しており、冷却性能は同等以上であるように見える。
こうした効果は実際の動作音にも表れる。3製品ともに、アイドル時は30dB台を記録し、ほぼ無音に近い状態だ。高負荷時は40dBを超えたものがあるが、これはファンから20cmという近い位置で計測しているため。「まあ、動いているな」という程度の感覚で、ケース内に入れてしまえばほぼ無音と言える。
■動作音検証 | |||
モデル名 | GTX760-DC2OC-2GD5 | GTX770-DC2OC-2GD5 | GTX780-DC2OC-3GD5 |
---|---|---|---|
アイドル時 | 31.9 | 31.6 | 36.7 |
高負荷時 | 37.7 | 41.7 | 43.1 |
※バラック状態、ファンより20cmの位置で計測。アイドル時は起動10分後、高負荷時は3DMark Fire Strike eXtreme設定のGT1、GT2実行中の数値 |
そして、先のOC検証時のように、GPU温度も上がったところでせいぜい50℃台と、冷却性能も優れている。この3製品の場合、静音化したい場合はむしろCPUクーラーやケースファン側のノイズ対策側に力を入れるべきといえる。
クーラーが重要であるポイントの3つ目は、GPUの自動OC機能をフル活用するためだ。GeForceは600シリーズからGPU Boostと呼ぶ自動OC機能を搭載している。Radeon HDにも「AMD PowerTune Technology with Boost」という自動OC機能があるが、今回はGeForceのGPU Boostについて説明していこう。
GPU Boostとは、GPU負荷やGPU温度などをGPU上のセンサーが検知し、余裕のある際、自動的にオーバークロックする機能で、そのためGPU Boost対応GPUを搭載するグラフィックスカードでは、GPU Boost時のクロックも併記されている。
GTX760-DC2OC-2GD5では、1.006GHzというGPUコアクロックに対し、GPU Boost時クロックは1.072GHzとされる。ただし、これは最大クロックを示すわけではなく、およそ1.072GHz相当のパフォーマンスが得られるという指標である。今回の3DMarkの計測中、GPUクロックのログを取得してみたところ、最大クロックは1.1497GHzを記録した。
GPU Boostはその時々の状況に合わせてクロックを可変させるため、常時1.1497GHzで動くわけではない。しかし、GPU温度の余裕を見てクロックを調節するため、より高いクロックを維持しようとするならば、冷えるクーラーが有利というわけだ。このクーラー性能によるGPU Boostへの効果を実際に計測してみたのが下のグラフだ。
このグラフでは、3DMark v1.1.0のFire Strike eXtremeプロファイル計測時のGPUクロックとGPU温度のログを計測、抽出している。リファレンスカードでは、38秒経過後にGPUクロックが落ちているが、これは36秒経過時点でGPU温度が80℃に達したため、クロックを調節し、GPU温度を下げようと働いているためだ。
以降、リファレンスカードは、テストが終了する48秒経過時まで最大クロックには戻らなかった。一方、GTX780-DC2OC-3GD5はテスト開始から終了まで一貫して1032.1MHzをキープしつつ、GPU温度も56℃までしか上がらなかった。このように、GPU Boost機能を最大限に活かすためには、高性能なクーラーがポイントとなる。
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