憧れの存在から手の届くアップグレードパーツとなったSSD
PCにおける内蔵ストレージは長らくHDDが主役を担ってきた。後にSSDが台頭してきたが、2000年代前半の登場直後は容量単価的に、HDDと比較するととても高く、身近な存在とは言えなかった。しかし、2010年代になってからはノートPCにおいては標準的な内蔵ストレージとなりつつあり、デスクトップPC用のアフターマーケットにおいても、HDDからのアップグレードパーツとしてSSDに対して熱い視線が送られるようになってきている。
この状況変化には、2つのきっかけがあると筆者は考えている。
1つは、容量単価が若干まだHDDよりは高価とはいえ、十分手の届く価格レンジになったという実感が出てきたことだ。現在、256GBクラスならば1万円台半ばから購入することができ、500GBクラスでも3万円台のものがあるという状況だ。
2つ目は、SSDが高速性だけでなく、十分な信頼性を伴ってきたことが広く知られるようになったこと。NAND型フラッシュの原理的な構造と特性の違いから、SSDには寿命や速度に優れたSLC(Single Level Cell)と、価格と容量重視のMLC(Multi Level Cell)などが存在することを知っている人も多いだろう。MLCはコストパフォーマンス的に優れることから民生向けSSDの主流となっているわけだが、弱点とされてきた寿命や速度についても、今や日進月歩の技術革新があって順当に向上してきている。この部分についてメーカーが太鼓判を押せるからこそ、メーカー製のノートPCの起動ドライブに広く当たり前のように採用されるようになったのだ。
今回、このSSDの最新製品を評価する機会が得られたので、筆者が実際に普段から使用しているPCゲーミングマシンに組み入れて評価してみることにした。
コストパフォーマンスに優れたSamsung SSD 840シリーズ
今回取り上げるのは、SATA 6Gbpsに対応したサムスンの主力SSD製品「Samsung SSD 840」シリーズだ。
Samsung SSD 840シリーズがNAND型フラッシュのメモリセルとして採用するのは、一般的なMLCよりもさらに容量密度の高いTLC(Triple Level Cell)だ。高品位メモリセルの採用と新開発の新世代トリプルコアコントローラ「MDX」、そのほか多くの技術を組み合わせることで、TLCながらも高い信頼性の実現を両立しているのがウリとして訴求されている。「3年保証」をうたっているのは、その自信の表れ、といったところか。
今回取り上げるのは500GBモデル「MZ-7TD500K/IT」だが、このほかに120GBと250GBのモデルがラインナップされている。
SSD単体のベーシックキットに加えて、オールインワンキットをラインナップ。オールインワンキットには、SATAケーブルのほか、USB 2.0接続のSATA変換ケーブル、デスクトップPC搭載用の3.5インチマウンタ、ノートPC搭載用の9.5mmスペーサなども含まれている。既に手持ちのデスクトップPC、ノートPCのHDD環境をSSD環境に移行するために、おあつらえ向きなキットと言える。
まずは、基本的な性能テストを行ってみた
テストPCのSSDとHDD以外のスペックは以下のようになっている。最新スペックでないのは、前述したように実際に筆者が愛用しているゲーミングPCそのもの(笑)であるため。この点は「リアルな評価」ということで、ご容赦願いたい。なお、比較対象HDDとしてHGST製「HDS5C3020ALA632」(以下HDDと略記)を使用している。
CPU : Phenom II X4 940/3.0GHz
マザーボード : ASUSTeK Computer M4A78 PRO(AMD 780G+SB700)
メインメモリ : PC2-6400 DDR2 SDRAM 8GB(2GB×4)
GPU : NVIDIA GeForce GTX 680(グラフィックスメモリ容量4GB)
OS : Windows 8 64bit版
最初に試したのは、Windows8に標準搭載されているパフォーマンス計測機能「Windowsエクスペリエンスインデックス」(システムの評価)だ。
HDDでは、プライマリハードディスクの評価は「5.9」となり、基本スコアはこれに引っ張られ「5.9」であったが(図1)、SSDでは「7.3」にまで向上し(図2)、今までのボトルネックが一瞬で解消されたようで非常に気持ちがいい。
続いて、ドライブ系ベンチマークソフトの定番、「CrystalDiskMark v3.0.2e」をデフォルト設定で実行。結果は以下の通り。
SSDのシーケンシャル読み出し速度がHDDの2倍…というのは予想できていたのだが、書き込みがとても速いことに驚かされる。ランダムアクセスについても読み書き両方とも優秀で、特に512KBのランダムアクセスはシーケンシャルアクセスとほぼ同じ速度をたたき出せているのが凄い。
編集部から最新ハードウェアでもテストして欲しいというリクエストがあったため、以下のハードウェアもテストを行ってみた。SSDはSamsung SSD 840(500GB)で変更はないが、比較対象のハードディスクがSeagate Technology製「ST31000340A8」へと変更されている点には留意して欲しい。
CPU : Intel Core i7-3770K(3.5GHz)
マザーボード : GIGABYTE GA-Z77X-UD3H(Intel Z77 Express)
メインメモリ : PC3-12800 DDR3 SDRAM 8GB(4GB×2)
GPU : NVIDIA GeForce GTX 680(グラフィックスメモリ容量4GB)
OS : Windows 8 64bit版
「Windowsエクスペリエンスインデックス」では、CPUやメモリシステムが最新に変わっている関係で「プロセッサ」「メモリ(RAM)」のスコアが向上。そして、SATAインタフェースが、筆者の愛機のSATA2(3Gbps)に対し、編集部機材のマザーボードは最新のSATA3(6Gbps)と高速化されているのでその分、「プライマリハードディスク」のスコアも向上した。
HDDは機種が違うので比較できないが、SSDは同じSamsung SSD 840(500GB)で「7.6」から「8.1」に向上しているのは、SATAインタフェースの伝送速度が高速化したのが効いているためだろう(図5、図6)。
CrystalDiskMarkでも、同様の結果が読み取れる。特にシーケンシャルアクセスは読み込みで2倍、書き込みで1.5倍の実効速度が出ているのは凄い。
CrystakDiskMarkの結果 |
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(図7) Samsung SSD 840(500GBモデル)の結果。SATAインタフェースの世代を変えるだけで(3Gbps → 6Gbps)、パフォーマンスは1.5~2.0倍に向上 |
(図8) HDD(Seagate Technology製「ST31000340A8」) |
確かに、旧型のシステムでもHDDからSamsung SSD 840(500GB)に変えるだけでパフォーマンスは向上したわけなのだが、さらにマザーボードも新しくすれば(SATAインタフェースを6Gbps対応にすれば)、もう一段階パフォーマンスが向上するということだ。
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