2012年9月24日、韓国サムスン・エレクトロニクス(以下、サムスン)は、新世代SSD「Samsung SSD 840 PRO」および「Samsung SSD 840」を発表した(日本国内では日本サムスンおよびITGマーケティングを通じて正式発表)。上位となるSamsung SSD 840 PROは、性能にとことんこだわるアーリーアダプタ向けの製品であり、2012年11月時点で世界最速との呼び声が高い。Samsung SSD 840 PROの性能については、すでに検証レビュー『史上最速SSD登場 - 「Samsung SSD 840 PRO」の驚異的な性能を検証』を掲載しているので、そちらをご覧いただくことにして、今回はメインストリーム向け製品であるSamsung SSD 840の性能を検証することにしたい。

世界で初めてTLC NANDフラッシュを採用

Samsung SSD 840

Samsung SSD 840は、上位のSamsung SSD 840 PROと同じく、SSDを構成する主要パーツであるNANDフラッシュ、コントローラ、キャッシュ用DRAMのすべてが強化されていることが魅力である。詳しくは発表会の記事「サムスン新SSD発表会 - ベンチマークは? そして次世代のSSD像とは?」をご覧いただきたいが、Samsung SSD 840ではTLC(トリプルレベルセル)のNANDフラッシュを採用していることが特徴だ。

NANDフラッシュは、これまで1つのセルに1ビットのデータを記録するSLC(シングルレベルセル)から、1セルに2ビットのデータを記録するMLC(マルチレベルセル)へと進化してきた。現時点で販売されているSSDの多くがMLCを採用している。

TLCは、1セルに3ビットのデータを記録できる最新NANDフラッシュだ。USBメモリやSDカードなどで採用例が増えているが、コンシューマ向けの2.5インチSSDでTLC NANDフラッシュを採用したのは、Samsung SSD 840が世界初となる。

一般的にTLCは、MLCに比べて大容量化や低コスト化で大きなメリットがある反面、書き換え回数や速度などの点が見劣りするとされている。しかしサムスンは、TLCの高信頼化に関する技術開発で世界の最先端を進んでおり、従来のTLCの弱点をほぼ払拭したEnhanced TLCを開発。コストと信頼性を高いレベルで両立することに成功した。チップレベルでの選別を行い、さらに通常よりも過酷なテストをクリアしたもののみがSamsung SSD 840に搭載されるので、安心して利用できる。

シーケンシャルリードで実測500MB/s超え。ランダムリード/ライトとも高速

さっそくテスト結果を見ていこう。テスト環境は以下に示した通りで、比較としてSamsung SSD 830(128GB)を用意した。今回検証に用いたSamsung SSD 840の容量は250GBである。

テスト環境
CPU : Intel Core i7-3770K(3.50GHz)
マザーボード : GIGABYTE GA-Z77X-UD3H(Intel Z77 Express)
メモリ : DDR3-1600 4GB×2
グラフィックスカード : ELSA GLADIAC GTS 250
SSD : Samsung SSD 840(250GB) / Samsung SSD 830(128GB)
OS : Windows 7 Ultimate SP1 64bit

まずは、定番の「CrystalDiskMark 3.0.1c」から。Samsung SSD 840(以下、SSD 840)のシーケンシャルリードは526.9MB/sと非常に高速であり(図1-1)、Samsung SSD 830(以下、SSD 830)の494.1MB/sに比べて(図2-1)、32.8MB/sも高速だ。

ここで注目したいのは、ランダムリードおよびランダムライトの結果だ。一番下の4K QD32は、ファイルへのアクセス命令を同時に32個発行した場合のパフォーマンスを示している。SSD 840はリードが383.9MB/s、ライトが252.4MB/sにも達しているのに対し(図1-2)、SSD 830はリードが299.4MB/s、ライトが127.1MB/sにとどまっている(図2-2)。ライトに関しては約2倍もSSD 840が高速だ。

(編集部注:以降の画面写真をクリックすると、別ウィンドウで原寸表示となります。)

CrystalDiskMark 3.0.1cの結果

(図1)Samsung SSD 840

(図2)Samsung SSD 830

SSDの性能評価では、トップスピードであるシーケンシャルアクセス速度が注目されがちだが、実使用での体感的な快適さに効いてくるのは、むしろランダムアクセス速度なのだ。OSやアプリケーションの起動などでは、細かなファイルを多数読み込むことが多く、ランダムアクセスの処理が多くなる。

Samsung SSD 840ファミリーに搭載されている新コントローラ「MDX」は、実使用で効いてくるランダムアクセス性能を重視して設計されているのだが、その効果がはっきりと現れたといえる。

また、SSD 840 PROと同じく、SSD 840も書き込み時にデータ圧縮を行っていないことが特徴だ。データ圧縮を行うと、圧縮しやすいデータでは性能が上がるが、そうではないデータでは性能が下がってしまう(SSDのカタログなどではもっとも圧縮が効いている場合の性能を示していることがある)。確認のために、0で埋めたデータ(0Fill)でCrystalDiskMarkを計測してみたが、通常のランダムデータ時とほとんど結果は変わらず、データを圧縮していないことが確認できた。

CrystalDiskMark 3.0.1cの結果(0Fill)

(図3)Samsung SSD 840

(図4)Samsung SSD 830

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