“新世代Think”の潮流は液晶一体型にも波及
「ThinkCentre」はレノボのビジネス向けデスクトップPCシリーズで、ノート型の「ThinkPad」に比べれば一般ユーザーの認知度は低いと思われるが、企業での導入実績は以前から高い。近年は、個人やSOHOユーザーにも訴求できる液晶一体型モデルの拡充を進めているが、中でもこの「ThinkCentre Edge 91z」は、ビジネス向けの位置づけでありながらフルHDの光沢液晶を採用するなど、歴代の「ThinkCentre」とは方向性がずいぶんと異なる。このところレノボは、「ThinkPad X1」や「ThinkPad Edge」のような、従来の伝統やブランドイメージに縛られないニュージェネレーション志向の製品を積極的に投入しているが、2011年6月にリリースされた「ThinkCentre Edge 91z」もその一環といえる。
スリム一体型では珍しくデスクトップ向けのCPUを搭載
21.5型ワイドのフルHD液晶を搭載する「ThinkCentre Edge 91z」。フロントの全面を光沢のある一枚板ガラスで覆うなど、いままでの「ThinkCentre」液晶一体型とは面立ちからしてかなり違う |
今回試用したのは、量販店モデルの中では最もグレードが高い「7074B4J」で、想定される実勢価格は120,000円前後。ここ最近は国内メーカー製の液晶一体型にも廉価なものが多いので、取り立てて格安というほどではないが、この製品がほかの液晶一体型と決定的に違うのは内部の仕様だ。
液晶一体型は、形状こそデスクトップPCのカテゴリだが、その中身はノートPCに近く、CPUやメモリなどの主要パーツにはノート向けのものを使った製品がほとんどである。この「7074B4J」でも、メモリモジュールはノート向けのSO-DIMM(DDR3-1333)を使っているが、CPUがデスクトップ向けであることが注目点。確かに、インテルCPUがSandyBridge世代に移行してから、ノート向けとデスクトップ向けの性能の乖離は小さくなったものの、集積度や実効演算速度を考えるとデスクトップ向けプラットフォームの優位性はなお高い。とはいえ、スリムきょう体の液晶一体型にデスクトップ向けCPUをそのまま搭載すると、今度は熱対策が課題になる。
そこでこの製品では、消費電力や発熱量が比較的小さいCore i7-2600s(2.80GHz)を採用している。Core i7-2600sは、定格クロックがCore i7-2600(3.40GHz)より低いものの、ターボ・ブースト時の最大クロック(3.80GHz)やコア数(物理4コア、論理8コア)、3次キャッシュの容量(8MB)などはCore i7-2600と共通だ。この価格帯で買える液晶一体型といえば、ノート向けで2コアのCore i5-2430M(2.40GHz)かCore i5-2520M(2.50GHz)あたりが中心だが、それらの競合製品と比べて「7074B4J」の演算性能は抜きんでている。
CINEBENCH R11.5
Core i7-2600s(ThinkCentre Edge 91z) | 5.65pts |
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Core i7-2600(セパレート型デスクトップ) | 6.16pts |
Core i5-2520M(同価格帯の液晶一体型PC) | 2.85pts |
上の表は「ThinkCentre Edge 91z(7074B4J)」のCPU演算性能を「CINEBENCH R11.5」でレンダリングテストした結果。Core i7-2600搭載のセパレート型デスクトップには一歩及ばなかったものの、同価格帯でCore i5-2520M搭載の液晶一体型との比較ではほぼダブルスコアの差がついた。熱対策が必要となる液晶一体型ながら、性能を大きく犠牲にすることなくスリム化できたといえよう。
光沢液晶にBD-ROMコンボドライブを装備
デスクトップやノートの種別にかかわらず、ビジネス向けのPCでは照明の映り込みを抑えて文字の視認性を高めるため、非光沢液晶を採用することが多いが、この「ThinkCentre Edge 91z」では光沢液晶を採用していることも特徴だ。この点はおそらく評価が分かれるところで、実際に画面を見ても光沢感がかなり強く、映り込みが目につく。ただ、表面に非光沢処理を施していない分、発色はクリアで、写真や動画を表示したときにはなかなか見映えがする。
また、この「7074B4J」のみ、光学ドライブがBD-ROM/DVDスーパーマルチのコンボドライブになっており、映画などのBDソフトを再生することも可能だ(BD-R/REの書き込みは不可)。液晶パネルも21.5型ワイドのフルHD解像度なので、BDソフトならではの精細な映像を堪能できる。さらには、3W+3Wの内蔵スピーカーが思ったよりも量感があり、映画のセリフが明瞭に聞こえる。さすがに地デジチューナーは入っていないが、ハイクオリティなAV鑑賞を意識した設計になっている。
インタフェース類も主要なものはひと通り揃っていて、USB2.0は左側面に2基と背面に4基ある。ただし、付属のワイヤレスキーボードとマウスの受信ユニットで1基がふさがるため、実際に利用できるのは5基となる。ちょっと変わっているのは、背面にあるHDMI端子とD-Sub15ピンのディスプレイ端子だ。液晶一体型のHDMI端子というと、その多くはHDMI入力。たとえばゲーム機などをつないで液晶ディスプレイ代わりに使うというものだが、この製品ではHDMI出力になっていて、HDMI対応の液晶ディスプレイを接続することで簡単にマルチモニター環境を構築できる。反対に、D-Sub15ピンの方はディスプレイ入力になっており、ノートPCなどの画面を本機の液晶に映し出せる。