マウスコンピューターのゲーマー向けPCブランド「G-Tune」にはさまざまなスペックの製品が用意されているが、なかでもハイスペックなフラッグシップシリーズが「MASTERPIECE」だ。この春より同シリーズに追加された「MASTERPIECE i1520SA5-SP」は、NVIDIAの最上位GPUであるGeForce GTX 590を搭載し、そのほかにもゲーマーのニーズに応えるさまざまなメリットを備える魅力的なモデル。その実機に触れることができたので、早速詳しく紹介しよう。

実用性が高く美しい高品質ケースに恍惚

試用機が収められた箱を開梱すると、黒をベースとした落ち着いたイメージながら、フロントパネルの隙間から見える赤が印象的な本体が現れた。G-Tune MASTERPIECEの一番の特徴は、シリーズ共通で用いられるこのオリジナルケースである。

G-Tuneの「MASTERPIECE i1520SA5-SP」
MASTERPIECEを箱の開梱から行うのは筆者も今回が初めて。開口部のプリントが「OPEN」でなく「PLAY GAME」というのも振るっている

このケースは、高級PCケースメーカーとしてパワーユーザーから大きな支持を集める「Abee」(アビー)と、G-Tuneとの共同開発によって生まれたもの。Abeeが通常販売するラインナップにも含まれていない、MASTERPIECEユーザーだけが手に入れることのできる専用モデルとなっている。

マシンの電源を入れる前に、まずはこのケースをじっくりと眺めてみた。ユーザーの目に触れるフロントパネルは、アルミ素材の2層構造となっており、ヘアライン仕上げのメインパネル部には2mm厚、その上のセンターパネル部にはショットブラスト加工を施された3mm厚のアルミパネルを採用している。これにより美観や高級感を高めるとともに、スイッチやコネクターなど手が触れる部分の腐食を防止し、手触りも良いものとなっている。外部からアクセスできるドライブベイは5インチが2基、3.5インチが1基で、3.5インチベイには標準でマルチカードリーダーを装備する。ゲーマー向けPCケースには多機能だがゴテゴテとした見た目の製品も少なくない中、毎日使うものだけに、ベーシックな部分での上質さを追求したのが、このオリジナルケースとなっている。

フロントパネルは2層構成。デザイン上の美観を高めるだけでなく、スイッチやカードリーダーの周辺に触れたときの手触りもサラサラとした快適なものにしている

もちろん、このケースの良さは見た目の美しさだけではない。ハイエンドゲーマーのための特徴としてまず挙げておきたいのは、設置場所を調整できる可変式フロントファンの採用だろう。多くのPCケースでは、フロント側のファンはケース前面の決まった場所に固定されているが、MASTERPIECEでは搭載するグラフィックスカードの長さに合わせて設置場所を前後に動かすことができる。このため、グラフィックスカードに直接強い冷却風を当てることが可能となり、発熱の大きい高性能カードの搭載時や、複数のカードを使用するSLI構成時にも効率良い冷却が行える。

サイドパネルを取り外したところ。フロント方向(向かって右側)の中ほどに可変式ファンが見える

また、一部のPCケースはフロント部の空きスペースをすべてドライブベイとするような構造をとっているが、実際にそのベイをすべて使用するユーザーはほとんどいないだろう。MASTERPIECEのケースは、フロント部の一部を前述の可変式ファン設置スペースとして利用しているので、ケースの奥行き方向の長さをできるだけ短くしつつ、大型のハイエンドグラフィックスカードの装着も可能としている。カタログスペックを飾るだけの余分な拡張性を持たせるのではなく、パワーユーザーの求める積載性を確保しながら、全体をコンパクトにまとめようとしているところに、自社で一からケースを設計できるAbeeの技術力の高さと、ゲーマーのニーズをよく心得ているG-Tuneのノウハウが活かされていることがわかる。もちろん、ドライブベイを一部削っているとはいえ、内部ベイには4台のHDDを装填することが可能だ。

単純に前面をベイで埋めてしまう設計のケースも少なくない中、一部をファンスペースとすることで大型グラフィックスカードも装着できる構成に 内部のドライブベイにはHDDを4基搭載可能。ドライバーなしで着脱できるスクリューレスマウンタが付属する。HDDとフロントパネルの間にはHDD用吸気ファンも装備

フロントファンはグラフィックスカード用の可変式ファンに加え、HDD冷却用の固定ファンも装備している。また、これらのファンによる吸気に加え、サイドパネルには拡張カードの位置に合わせたエアホールが設けられており、ほかのパーツによって暖められる前の新鮮な冷気を、外部から直接取り込むことで冷却効率を高めている。ちなみに、内部のシャーシ部分については1.2mm厚のスチール合金を採用することで、剛性や制震性を高めている。アルミとスチールを適材適所で用いるという点もまた通好みの構成だ。

向かって左側のサイドパネルに開けられたエアホールはちょうどグラフィックスカードの位置にくるようになっている