身の回りのデジタル機器ではタッチパネルなどさまざまな入力デバイスが新たに使われるようになってきたが、やはりPCを使うときになくてはならないのがキーボードである。文字を入力するときに必ず利用するのは言うまでもないが、マウスだけでは操作できないFPSなどのゲームをプレイするときにも欠かせない。
大きなPCショップに足を運ぶと、キーボードの売り場には何十種類もの製品が並べられていて、店によってはサンプル機で打鍵感を試すこともできる。キーボードはPCにとっての必需品であり、単に文字が入力できれば良いのではなく、デザインやタッチにこだわりのあるユーザーも多いことがわかる。
その中で1ジャンルを築いているのがゲーマー向けキーボードだ。「ゲーマー向け」をうたう多くの製品は、特定のキーによく使う操作を割り当てるカスタマイズ機能や、サウンドの調整などをするための追加のキーを用意していることをセールスポイントにしている。ゲーマー向けの「機能」を売りにした製品ということができるだろう。あるいは、ゲームの雰囲気を盛り上げるためのミリタリーチックなデザインを前面に出していることも多い。
そんな中、マウスコンピューターのG-Tuneブランドから、ゲーマー向けの高級キーボード「Realforce108B-MP」が登場した。24,990円という価格からは、明らかに普通のPCユーザーとは異なる層を狙ったキーボードであることが伝わってくるが、製品自体はブラックの精悍なカラーリングが目を引くものの、一見しただけではデスクワーク用の一般的なキーボードと変わらないデザインだ。しかし細部を見ていくと、この製品は見かけの「機能」ではなく、ゲーマーに求められる「性能」を真に追求したものであることがわかる。
高級キーボードの代名詞「Realforce」シリーズ
「Realforce108B-MP」は、金融機関や計算センターなどで大量の入力作業を行う、プロフェッショナルのための業務用キーボードを開発・製造している東プレと、ゲーマー向けPCブランド・G-Tuneのコラボレーションによって生まれた製品だ。まずは、ベースとなった東プレの「Realforce」シリーズを簡単に紹介しよう。
Realforceシリーズは、東プレが業務用製品としてOEM提供しているキーボードと同じ「静電容量無接点方式」を採用した、コンシューマー向けの単体商品として販売されているPC用キーボードだ。
一般的なキーボードのキーの一つ一つには、メンブレンスイッチと呼ばれる接点が使用されている。キーを押し込むと接点が触れ合い(スイッチがオンになり)、そのキーが押されたことが検出される。安価なものでは片側の接点自体がラバードームでできており、打鍵感は「ペコペコ」したものとなる。また、物理的に接点を接触させることで入力を行うので、キーを底まで押し下げる必要があり、長時間の使用時に手が疲れやすい。
これに対してRealforceシリーズが採用する静電容量無接点方式は、キーの動きによる静電容量の変化をキー入力として検出する。キーは4mmものストロークを確保しているが、接点が触れ合う必要がないので、打鍵時にキーを底まで押し込む必要がなく、高速かつソフトなタッチでタイピングを行える。長時間の入力作業を行うオペレーターの負担を軽減するために、考え尽くされたキーボードとなっているのだ。
東プレが販売しているオリジナルのRealforceシリーズも、実売価格は1万円台後半とかなり高額な製品だが、2001年の発売以来確実にファンを増やしている。現在ではキー配列やテンキーの有無、カラーバリエーションなどでラインナップを大幅に拡充していることからも、その人気ぶりがうかがえる。
軽いタッチで高速入力が可能という特徴は、そのままゲーマー向け製品としての強みにもなる。タッチの重いキーでゲームをプレイする場合、ユーザーが画面の表示に反応してからキー入力を終えるまでの時間が、タッチの軽いキーの場合より長くかかってしまう。その点、軽いタッチのRealforceシリーズならより素早いキー入力が可能だ。また、Realforceシリーズでは高速打鍵を実現するため、複数キーの同時押しを正しく検出する「Nキーロールオーバー」に対応しており、これも多くのキーを同時に使用するゲームに適した仕様となっている。