グローバル企業であるHPだからできる部品調達
工場を円滑に運用していくに当たって、実のところ人件費の問題はそれほど大きくはないという。何といっても一番コストのかかるのは、在庫の管理なのだという。在庫をいかに圧縮して、効率よく回すかがポイントとなるそうだ。
実際の生産現場を取り仕切っている、製造・技術管理部長の清水氏。工場内の案内も清水氏にしていただいた |
日本HPでは、サプライチェーンにおける在庫管理の効率化を図るため、昭島事業所と隣接している建物に大きな部品倉庫を持ち、ここにサプライヤーからの預託在庫を置いている。約2週間分の在庫が常に格納されているという。ただし、この在庫は日本HPの抱えている在庫ではない。サプライヤーの在庫であるところがポイントで、注文があった時点で、この預託在庫が工場に運ばれ、日本HPの在庫となる仕組みをとっているため、在庫調整のリスクが軽減される。
同時にサプライヤーに向けて、HPの採用基準に合うかどうかのテストも納品前に実施しているという。検査に合格した製品のみが工場に運ばれる仕組みで、品質維持に一役買っている。後編で詳しく紹介するが、これらの部品すべてには、いつ、どこで作った、どこのメーカー製なのかが分かるバーコードが貼られており、このバーコードがあって、初めて日本HPの工場に納入できるのだ。このバーコードを使った仕様管理のおかげで、世界各地のサプライヤーから様々なパーツの供給を受けていても、パーツを取り違えるようなようなミスを防止できる。
また、たとえ一社がパーツの不具合など品質問題を起こしても、不具合のあるパーツを生産ラインから外して、適切な処置を確実に取ることができるという。このほか、国内生産によるメリットには、物流や在庫管理、品質に対するコストが抑えられる面もある。
このように、高品質の製品を供給できる体制が昭島事業所では整えられている。世界規模で強固な協力体制を組むHPにとって、こうした生産現場の工夫は欠かせないものといえる。
幅広いニーズにこたえるための生産ライン
日本HPの特徴の一つが、5営業日納品という、最速クラスの納期だ。顧客ごとにまったく違う製品が発注されるという、日本市場の特徴に対応するため日本独自に採用されているのが、ショートライン方式である。
生産ラインを通常より短い約6mの生産ラインとすることで、一人の組み立て担当者が担当する製品の幅を多品種に増やし、細かな要望にも対応できる仕組みをとっている。さらに、生産ラインの稼働状況に合わせて従業員の数を増減させるフレキシブルワークフォースや、昼夜2シフト体制による切れ目のない生産体制を採用することで、製品の品質と納期を維持しているのだ。
また、品質にこだわる日本人ユーザー向けの商品であるため、世界各地のHPの工場で通常行われている検査のほかに、世界でここだけとなる昭島事業所独自の検査も行っている。
このほか、2005年度から始めている法人向けサービス「Factory Express」の評判も上々だ。サーバーを現場に行ってから設置するのではなく、予め工場内で組み上げ、必要なOSやソフトウェアをインストールしたうえで納品するというこのサービスは、初期不良や現地スタッフの手配、IT担当者の負担などを軽減してくれるだけでなく、梱包材をできる限り抑えられるというメリットがある。また、数多のサーバーを組み上げてきたノウハウをまとめたケーブリングの技術にも定評がある。もちろん、注文者の要望に応じて、業務に必要な独自ソフトのインストールにも対応しているため、届いたらすぐに稼働できるサーバーが現地に到着するという仕組みだ。
先進の工場として全HP工場の指針となる昭島事業所
昭島事業所が現在の体制となるまでは、試行錯誤の連続だったという。長い工場の歴史は決して平坦なものではなかったが、そうした彼らを支えたのは、「お客様から日々寄せられる声」だったという。お客様の声に応えようとする姿勢が、常に競合に追われる立場であっても、新たな可能性や高品質、高サービスにこだわり続ける現在の体制につながった。そして現状では、世界のなかでも昭島事業所だけが、Pavilionの生産を認められている。昭島事業所が全世界に広がるHPの工場の指針となっている好例だろう。
それでは、後編では、実際に工場内部を見に行ってみよう。
昭島事業所で製作されるPCの一例を見てみよう!
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