NTTドコモは11月15日、災害時の携帯ネットワークが障害を受ける自体を想定した防災訓練を実施し、同時に災害対策の取り組みについて説明した。同社は東日本大震災で発生した被害を受けて、新たな防災計画を推進している。

ドコモは、公共インフラ事業者として「災害対策3原則」を定めており、「(1) システムとしての信頼性向上」「(2) 重要通信の確保」「(3) 通信サービスの早期復旧」という3つを掲げている。(1)としては、設備構造の強化として耐震対策や風水害防護対策通信ネットワークの高信頼化を実施。(2)として消防局などの防災期間に対する災害時の優先電話制度、音声通話とパケット通信を分けたコントロール、人口の約35%をカバーできる大ゾーン基地局の設置、基地局の無停電化、バッテリの24時間化といった対策を実施。(3)としては移動基地局車や衛星エントランス基地局などの災害対策機器によるエリア復旧を図る。

ドコモの災害対策3原則

こうした原則の元に対策を進めてきたが、2011年3月11日の東日本大震災では、震災直後は東北地方で4,900の基地局が停止。関東地方も含めると最大6,729局がサービスを中断した。地震・津波による直接の被害、伝送路の切断に加え、長時間の停電によってバッテリが枯渇したことが主な要因だ。4月30日にはほぼ震災前の状態までエリアを復旧させたが、この震災によって得られた教訓があったという。

携帯インフラにも多大な被害を与えた東日本大震災

その際に得られた教訓

停止した基地局の多くは、長時間の停電によるバッテリの枯渇であり、基地局自体が無事でも伝送路の断裂によって通信が行えなくなった。また、通常時の約60倍という音声トラフィックが集中して輻輳が発生した点も課題だ。

こうした状況を受けて、ドコモでは11年4月から新たな災害対策を策定し、12年2月には対策はほぼ完了。さらなる災害対策を進めている。

さらなる対策の1つは、エリア復旧を迅速に進めるためのもので、小型・軽量のマイクロエントランス装置の導入を進めている。マイクロエントランスは、光回線などの伝送路が使えなくなったときに基地局に取り付け、無線で伝送するための装置。従来のマイクロエントランス装置は、直径は75cm、重量は約40kgもあり、運搬には自動車が必要で、設置にも手間がかかった。

マイクロエントランス装置は、容量はあるが大きく重い従来のものと、低容量ながら小型軽量の新型を配備していく

震災では、通行止めなどで車が入れない場合もあり、そうした場所ではマイクロエントランスを設置できなかった。そこで開発されたのが小型軽量の装置で、寸法は約36cmで、重量は約2gと軽量化された。一人でリュックに入れて運べるまでに小型化されており、2人1組で運搬、設置までが可能になっている。小型のため、伝送容量自体は「150:7」(災害対策室長山下武志氏)と小さくなるが、臨時のエリア復旧に活用したい考えだ。従来のマイクロエントランス装置は100区間で配備され、小型は10月に全国で18区間に配備が行われている。

もう1つが、海上の船に基地局を設置するという方法だ。これは総務省の中国総合通信局が主導した対策で、船上に基地局を設置して復旧を図るというもの。10月22~23日に広島県呉市で実証実験が行われ、現在実験結果を取りまとめているという。実際には電波法の改正も必要で、実際の船をどう調達するかなどの課題があり、まだあくまで実験の段階だ。

また、ドコモはサービスを監視するオペレーションセンターを東日本(東京)と西日本(大阪)に分散し、通常時はそれぞれのエリアを監視している。これまで、どちらかが被災した場合、もう一方で監視を続けることができるが、データを扱うデータセンターは1カ所しかなく、それが被災すると、結局監視ができなくなってしまう。

海上基地局の概要

オペレーションセンターの分散に加え、瞬時に監視機能の切り替えができるようにした