――それでは、楽曲についてのお話をお伺いします。まずは、すでにEDテーマとして放送されている「雪華」についてですが、タイトルは雪の華と書いて「はな」ですね

喜多村「ちょっと小難しい感じですよね(笑)」

――『Be Starters!』とはまったく違う感じの曲になっています

喜多村「全然違いますよね。タイアップ曲というのは、やはり作品の看板曲にもなるわけですから、できる限り作品とリンクできる要素を盛り込みたい。これは『Be Starters!』のときからそうなのですが、その上で喜多村英梨の楽曲にしたいという思いがあります」

――作品の世界観を踏まえた上で、ご自身の色も出していくという感じでしょうか?

喜多村「『C3-シーキューブ-』という作品を見たとき、日本家屋の描写があったり、妖刀村正が出てきたりと、何かと『和』を意識させるような世界観が多いのではないかと思ったんですよ。『Be Starters!』のカップリング曲である『彩-sai-』もそうですが、もともと自分は和のテイストとか耽美な世界観が好きだったので、自分の好みにも合っている。それなら、どこまでもこのテイストを追求したいなと」

――「雪華」は和のテイストを追求した楽曲というわけですね

喜多村「タイトルを漢字にしたのは、視覚的なインパクトも狙っていますね。曲調については、『C3-シーキューブ-』という作品自体が、バトルがあったり、呪いが出てきたり、残虐な描写があったりと、ちょっとディープかつバイオレンスで激しい描写が多いので、私自身はすっごく好きなんですけど(笑)、約30分の作品を見終わって、流れてくるエンディングテーマは、やはりほっと一息つけるものがいいだろうと。なので、『雪華』の方向性はバラードというか、ゆったりとした曲調にしようということになりました」

――歌詞についてはいかがですか?

喜多村「私が演じている役をはじめ、『C3-シーキューブ-』という作品に出てくる女の子たちは、みんな『呪い』と関係があったりするのですが、主人公の男の子と出会って、接していくうちに、自分の本心や気持ちの内側がだんだんと"雪解け"のように明らかになっていく。これはオーディションを受ける際に原作を読ませていただいたときから思っていたのですが、フィアにしてもこのはにしても、私が演じる錐霞にしても、最初はいろいろなことを隠しているのですが、徐々に自分の本心を出していく。まさにこれは"雪解け"だなって。その印象が強かったので、今回の曲の歌詞を選ぶときも、ほかにもいくつかの候補があったのですが、私は一発でこの歌詞を選ばせていただきました」

――『雪華』の作詞は、『彩-sai-』と同じ山崎寛子さんですね

喜多村「そうなんですよ。今回いただいた詞は、非常に女性のやんわりとした、けど儚いような気持ちが、情景描写のようにうまく組み込まれていて、とっても素敵だったので、私は初めて読んだときから惚れこんでしまいました。それで、選んだからには、歌のほうも頑張らなきゃいけないなということで、できるだけ詞のイメージ、その距離感だけでも伝えられたらいいな思ったので、近くの人、それこそ目の前や真横にいる人に、訥々と自分の想いを語っているといったイメージで歌わせていただいています。このあたりのニュアンスの出し方は、これまで私自身が使わなかったし、必要ともされなかったところだったので、聴いたいただく方には、こういう雰囲気の曲もキタエリは歌えるんだねって思っていただきたいです。まさにその一心で、楽しみながら歌わせていただきました」

――『C3-シーキューブ-』の女性キャラクターたちの想いを代弁して歌っているという感じでしょうか?

喜多村「そうかもしれませんね。喜多村という人物が、キャラクターたちの気持ちを代弁している……そういう意味では、キャラソンなのかもしれません。ただ、自分が演じる錐霞の歌ではなく、もちろんフィアの歌でもなく、『C3-シーキューブ-』という作品を代表して、そのスピーカーになっているという感覚でした。でも、それがすごく楽しくかったです。楽曲にはたくさんの人が関わっていますが、その中で自分が一番貢献できるところは何かと考えたとき、やはり、声優であり、役者であるということから、作品に登場するキャラクターたちの気持ちを代弁できるところではないかと。いわゆるイタコですよね。それは自信なのか責任感なのかはわかりませんが、そのあたりを強く意識しながら、キャラクターたちの想いだったり、作品全体の流れだったり、シナリオだったりを歌で伝えられたらいいなと思っています。そういった事柄の答えはもちろんひとつではないかもしれませんし、私の理解が正解とは限らないのですが、それでもやはり喜多村英梨の答えというものをしっかりと確立しないと、歌が迷ってしまうと思うんですよ。なので、ここのAメロはフィアの気持ち、Bメロは錐霞、みたいな感じで、声を変えるとか芝居をするとかではなく、気持ちを載せていくということをどこまでも追求した曲になっています」

――実際に、テレビでエンディングテーマに絵が付いているのを見たときの感想はいかがでしたか?

喜多村「基本はフィアがいて、キューブに手をかざしたりしているのですが、要所要所で、私が気持ちを載せた、まさに思い浮かべてほしいと思っていたキャラクターの顔がパッパッパッと出てきたので、何か不思議な感じがしました。監督とは何も話していなかったのに(笑)。全体的にも、非常にシンプルに仕上がっているのですが、そのあたりもまさに私がイメージしながら収録したとおりの雰囲気だったので、うれしかったですし、ホッとしました」

――喜多村さんが「雪華」の中で気に入っている部分はどこですか?

喜多村「『雪華』を歌う際、この曲の距離感、優しさとか儚さというものを重視するために、あまり自分の声とか音圧を出さないようにして、できるだけそばで歌っているようなイメージで、語りかけている言葉にメロディがついている感じを出したかったのですが、サビの最後、『いまに届けと』という歌詞は少し違っていて、"儚く掻き消えていくように歌う"とか、"しっとりと落ち着いた表情とかニュアンスで歌い上げていく"とか、いろいろなパターンで収録したのですが、結局、情熱とまでは行かなくても、そこにたどり着くまでに積み上げてきたものを、最後にぐっと押し出したくて、凛とした感じで、真っ直ぐに歌ったものが採用されています。まさに白黒をはっきりさせる感じで、印象を付けて歌っている感じですね。ほかのところは、どちらかというと、ニュアンスを濃くしたり、歌い回しに自分節を入れたりもしているのですが、ここだけは小難しいことをせず、気持ちのまま、歌詞のままに『届けと』という想いをシンプルに歌っています。それがうまく嵌っているのではないかと思うので、ここはオススメポイントですね」

(次ページへ続く)