米国で月刊誌「WIRED Magazine」iPad版の配信が26日(現地時間)に始まった。同誌を提供する米Conde Nastは、すでに「GQ」のiPhone/iPad版をApp Storeで配信しているが、スワイプを用いたページ移動などタッチスクリーン操作を採り入れた程度の印刷版の焼き直しである。WIRED MagazineがサポートするのはiPadのみ。大きなタッチスクリーンを備え処理性能に優れたiPadで新たな雑誌の購読体験を実現するべく、コンテンツや広告を組み直した。iPad版雑誌の真打ち登場と話題になっている。そのタブレッド時代のデジタル雑誌を早速体験してみた。

iPad発売前からiPadに最適化したデジタル雑誌提供が期待されていた「WIRED Magazine

iPad版WIRED Magazine 2010年6月号の価格は印刷版と同じ4.99ドル(600円)。写真とビデオをふんだんに用いており、ファイルサイズは552.2MB。筆者のiPhone/iPadアプリの中で最大だ。

WIRED Magazine
価格 600円 ファイルサイズ 527MB
カテゴリ ニュース 販売 Conde Net
対応OS iPhone OS 3.2以降 対応デバイス iPad

WIRED Magazine誌編集長のChris Anderson氏は発表文の中で「リッチな読書環境を提供するために、われわれはAdobeが開発した新しいデジタル出版技術を用いている」と明かした。同じオーサリング/デザイン・ツールのセットを用いて、印刷版とiPad版を作成しているそうだ。iPad版は印刷版の焼き直しではなく、同氏は「強化されたデジタル版」と表現している。印刷版をベースに、iPadのユーザーインタフェース、タッチスクリーン操作、タブレットの特徴を活かせるようにコンテンツやレイアウトに手を加え、マルチメディア機能を記事に組み込んだ。

WIRED MagazineのiPadアプリの起動時間は約4秒。iPadをオンにする時間を含めると雑誌を開くよりもずいぶんと時間がかかるが、苦になるほどではない。

高いレベルのレイアウトデザイン

一見すると、すべてのぺージが印刷版のレイアウトをそのまま流用しているように見える。しかし雑誌レイアウトのルールを踏襲しながらも、すべてのページのレイアウトがタブレット向けに調整されている。例えば、どのページも縦・横の切り替えが可能だ。縦向きと横向きではレイアウトが根本から異なるが、文章を流すコラム数の変更、余白の使い方の工夫、縦横比の異なる写真の利用などによって、向きを変えても1ページに含まれる文章、イラスト/写真など情報量は変わらないように工夫されている。どちらの向きでも高いレベルのレイアウトは変わらず、どちらの向きでも同様に読みやすい。ただしレイアウトが固定であるため、フォントのサイズや書体の変更はできない。

縦向きでのページ表示

同じページの横向き用のレイアウト

縦横の変化を利用した広告。縦向きでは何の広告か分からない

横向きにするとHeinekenが現れる