――なるほど、藤田さんはエロなんですね(笑)。それでは続いて中山真斗さんをお願いします

「中山は、うちに来て3年目になるのですが、一言で言えば"天才"ですね。天才肌だと思っています。例えば、仕事をしていくうえで、礼儀作法や挨拶は重要ですよね。クライアントさんと名刺の交換をしたり、きちんとお話をしたり。中山はそういった、対面といいますか、人と話すのが苦手なんですよね(笑)。ただ音楽に関しては、すごく天才的な才能を発揮するし、こんなのが作れるの? っていう驚きが今でもとても多いです。しかも、以前は天才ゆえの"粗の多さ"も目立ったのですが、そういったところが最近では少なくなってきています。いろいろな仕事をこなす中で、自信がついてきて、『任せてください』みたいな感じも出てきたので、これからはドンドン、エースとして育っていってほしいなと思っています。あ、身長も高いですね。180cmを超えていると思います(笑)」

――だんだん厳しくなってきましたが、あえて色でいうと?

「色は……、グリーンですね。だんだん頼れる存在として育ってきている感じが、グリーンのイメージですね。続いては母里(もり)君というまだ入って3カ月しか経っていない新人がいます。Elements GardenにはよくCDやデモテープが送られてくるのですが、我々も送られてきたものは絶対に聴いていて、すごいと思う才能には声をかけたいなって思っているんですよ。母里君もそうやってうちに音を送ってきてくれたのですが、なぜか一緒にバストアップの写真と全身写真が送られてきたんですね。しかも、それぞれの写真で服がちがうんですよ(笑)。絶対に職種を間違えているって思ったのですが、もうメンバー全員がそこに釘付けですよ。『何でこの人は、こんな服を着て、しかも居間の柱の横みたいなところで撮影しているんだろう』って。それでもう気になって仕方がないので(笑)、連絡をしてみたら、一回面接をしに上京してくるというので、我々も全員で会いました」

――かなり印象的な出会いですね(笑)

「それで会ってみると、すごく"いい人"なんですよ。人を疑わないんですよ。最初のころは、作っているんじゃないかと思って疑っていたのですが、結局3カ月経っても"いい人"のままですね(笑)。今のところは、とにかく頑張らなきゃっていう気持ちが強く、何事にも精一杯頑張るのですが、頑張る方向性をたまに間違えてしまうことが多いタイプです。たとえば、僕らがお客さんと話をしているとき、現在の彼の使命は、まずお茶を出すことなんですよ。でも、そのお茶を入れるために、お客さんの前をウロウロと何往復もしてしまうみたいな(笑)」

――「お茶を入れなきゃ」っていっぱいいっぱいになってしまう?

「そうなんですよね。それで音楽はというと、すごくファンタジックな曲を書くタイプで、うちでは唯一のピアノ弾きなんですよ。Elements Gardenのメンバーはもちろんみんな演奏もできますが、"即興演奏"といいますか、思いついたことをその場で弾くというタイプはあまりいないんですよ。僕はけっこうそういうタイプで、とにかくすぐ鍵盤を触って、その場で音を合わせてみるといったことをよくするのですが、母里君も同じタイプですね。この前もスタジオで、僕がピアノの下を弾くから、右手で勝手にメロディを考えてみなよっていったら、すぐに入ってこれたりするんですよ。なので、そういった音楽を発想するという才能はすごくあると思います。ただ、機械が苦手で、機材にまったく興味を持たないんですよ。普通音楽を作るとなると、あの機材だとこういう音が出るといったところに向かうのですが、もうピアノが大好きで、ひとつひとつの音がどうやってできているかというところにはまったく興味がないんです。ちょっと順番を間違えている感じはするのですが、今は基礎をたくさん学んで、しっかりと成長しているところですね。彼は今一番幸福な匂いがするので、色でいうとピンクです(笑)」

――やはりElements Gardenと一言でいっても、メンバーによってそれぞれで曲作りの方法はちがうんですね

「全然ちがいますね。本当に面白いぐらいちがっていて、使っているソフトさえもちがうという感じです。最初は統一していたのですが、やはり自分にとって使いやすいソフトを使い始めたりして、今ではもうバラバラです(笑)。また、淳平は昔、『メロディを作るときは必ずコードからつける』と言っていたのですが、僕なんかはメロディから絶対に作りますし。ひとりひとりがちがうからこそ、Elements Gardenはいろいろなことがやれるのではないかと思っています」

――メンバーそれぞれの色が違うところで、最終的にElements Gardenとして世に出す際は、やはり上松さんが最後の舵取りをするのですか?

「やはりそこが一番重要なのですが、僕がということではなく、なるべくみんなで相談するようにしています。本当に曲に関しては、よく相談するんですよ。だからElements Gardenの統一的な色としてみんなが見ている色は同じなんですよ。そこから外れているかどうかは、僕が指示をするのではなく、みんなでとにかく考えて、『だよね』ってなるようにしています」

――作った曲は必ずみんなで聴くという感じですか?

「聴きますね。でも最近はちょっと遠慮しがちになってきて、これちがうよっていう意見はなくなってきています。もちろん遠慮だけではなく、それぐらいの信頼がみんなにできてきているというのもありますね。週に一回くらいはみんなで集まってご飯を食べるんですよ。そのときに、『あの曲よかったじゃん』とか、『あれ新しいんじゃない』とかって話しをするんですよ。最初にElements Gardenというブランドを立ち上げたときは、なるべくこういう曲を作ろうっていうコンセプトを明確にしていたのですが、現在はそういった枠をさらに広げていくことを考えていますね」

――ちなみに、曲の依頼が来たときに誰が担当するかというのは上松さんが決めるのですか?

「いや、これもですね、毎週みんなで話し合うんですよ。そして、やりたい仕事が重なったら、喧嘩して取り合うのではなく、やりたい人がそれぞれ作ってみて、いいほうを選ぶようにしています。社内で互いに切磋琢磨しなければならないシステムになっていて、常に向上していかなければならないんですよ。だから、みんながやりたいっていったら、もうみんなでコンペですよ(笑)。たとえばアニメのタイアップの仕事があった場合、長くこの仕事をやっていることもあり、僕の名前が目立ってしまう場合があるんですよね。なので、そういう場合は"上松"という名前を書かず、それぞれの曲に数字だけを振ってクライアントさんに提出するんですよ。そうすると、僕もよく負けたりして……」

――ネームバリューではなく純粋に音楽で評価してもらうということですね

「けっこう最近きつくなってきましたね(笑)。メンバーが増えてきたというのもありますが、みんなとにかく才能がありますから。僕はみんな天才だと思っているんですよ。だから、本気でやって負けたのなら、僕もうれしいんですよね。そういったことが大事なのではないかと思っています。常に本気でやって、いつか越えられてしまうのも時の流れかなって。そうなったら僕は庭師にでもなります(笑)」

――仕事の依頼が個人に来る場合もありますよね?

「そうですね。『この曲は絶対にこの方で』という指名で依頼が来ることもよくあります。ただ、初めてのクライアントさんの場合は、必ず一回話し合いをします。たとえば、淳平に作ってほしいという依頼があっても、ちゃんと話を聞いて、それなら藤間のほうが向いていると思いますよ、といった話をすることもあります」

(次ページへ続く)