不条理なバトルはもちろん健在!? いかに必殺技にもちこめるかがカギ

バトルは1対1ではない。1対1のバトルももちろんあるが、ほとんどは1対多数である。アクションゲームにおいて、敵の数が多いというのは決して珍しいことではない。敵がうじゃうじゃとわいてくることだってある。だが、そういったケースでは、たいてい敵はザコキャラである。しかし本作の相手はザコではない。基本プレイヤブルキャラが敵となってあらわれるからだ。「虎力」を基準に考えれば、1対1でも骨が折れる相手が2人、3人と、束になってかかってくる。ゲームに慣れていないと、簡単に"フルボッコ"にされてしまう……。ただし、このあたりはかなり絶妙のバランスとなっており、簡単には勝てないものの、まったく勝てないというわけではない。難易度「ノーマル」なら力技でもしのげることが多い。ただし、難易度が上がると、ある程度の戦略を立てる必要がある。

1 vs 2ならまだマシなもの。1 vs 3やそれ以上なんて状況も決して珍しくない

前作では、しのいでしのいで、最後に必殺技で一撃という戦法がかなり有効だった。しかし、本作ではゲームシステム、そしてゲームバランスの変更によって、そうは問屋が卸さない状態。まず、必殺技を使うためには、タイガーボールを持った状態でMP(魔力)ゲージが50%以上、超必殺技なら100%という条件がある。前作では、バトルスタート時からMPがあり、タイガーボールさえゲットすればいつでも必殺技が放てる状態だった。しかし、本作では、MPが「0」の状態でスタートする。つまり、敵と戦ってMPを溜めるか、アイテム(魔石)を集めないと必殺技が使えないのだ。しかも、アイテムによって溜まる魔力の量が前作よりも、大幅にダウンしている。さらに必殺技のパワーにも制限があり、一撃で倒しきれないケースも出てきている。とはいえ、必殺技が有効なのはやはり変わらない事実。前作ほど甘くはないものの、積極的に狙っていきたい。なお、この条件は敵も同じなので、いきなり必殺技を仕掛けられるという心配がなくなったのはちょっとうれしいところである。

やはり最後は必殺技、あるいは超必殺技で締めたいところだが、本作ではなかなかうまくいかない……

アイリの必殺技「アヴァロン治療」(左)は、一定時間HPが上昇し続けるというもの。倒される確率は減るが、相手はもちろんノンダメージ。アイリを助けに切嗣が登場する超必殺技「切嗣マン」(右)はかなり使える

ほとんどのバトルは条件設定が厳しめだが、キャラクターによっては、複数 vs 複数や複数 vs 1といったシチュエーションバトルもあり、圧倒的にこちらが有利なケースもある。ただ、こちらが複数だからといって、必ずしも有利というわけではない。このあたりが本作の難しいところであり、面白いところといえそうだ。

使えない(?)必殺技を持つ筆頭が「ファンタズムーン」。必殺技「偽・空想具現化 (マーブル・ファンタズムーン)」は、敵も味方も全員のHPが"1"でMPが"0"になるという恐ろしい技で、初動が遅れる即死亡である。超必殺技「秩序再構成 (みんな仲良くネ)」は、、全員が獲得していたタイガーポイントの合計が、バトル参加人数で割った数値にて再分配されてしまうというあまりにも強引な技。とにかく使いどころが難しいが、ファンタズムーンは地力があるので、必殺技に頼る必要はあまりないかも……


アクション要素の強化がポイント! 細かな修正も注目だが……。

先にも述べたとおり、前作と比較するとアクション性が強化されているのが本作のポイントとなっている。バトルをクリアできないとストーリーが進まないため、アクション下手のプレイヤーはたとえ難易度が「ノーマル」でも少々骨が折れるかもしれない。とはいえ、苦しみぬいた後に続く、カオスなストーリーはまた格別というもの。バトルは何度でもリプレイできるので、あきらめずにチャレンジしてほしい。もう少し易しいモード設定があってもよいのでは、とも思わなくもないが……。

修正されているのは、バランスだけではない。たとえば画面が急に切り替わってわかりにくかった「新都ビル」のフィールドが改善されていた点は、細かいながらも好感度大であった。また、本作ではバトル中にマップ表示が行われるようになったので、敵やアイテムの位置がおおよそながらもつかめるようになったのもうれしいところ。とはいえ、視点(カメラ位置)の切り替えをはじめ、まだまだ視点的な自由度が低いため、敵の姿が視界に入らない状況が多い。もう少し簡単にTPS的な視点でプレイできれば……、というのが正直な感想である。

バトルシーンももちろんだが、とにかくストーリーをいかに楽しめるかで、本作への評価は大きく変わってくる

ストーリーについては、やはり「Fate」シリーズを知らないと楽しみきれないという問題がつきまとう。このあたりは、パロディ作品として仕方のないところであるが、『Fate/stay night』以外はコンシューマ版がリリースされていないため、なかなか手を出しづらいという人も少なくないハズだ。本作で、かなり行くところまで行ってしまったという印象もあるが、もし次作があるとすれば、このあたりの課題をクリアする必要があるだろう。さらなるカオスにはまりこんでいくのも、それはそれで面白いのだが……。

さて、最後になるが、本作で追加された「エクストラ」モードについても言及しておきたい。「エクストラ」には「イメージビューワ」や「サウンドプレイヤー」などが用意されており、ゲーム中のイベントCGやキャラクターCD、さらにはBGMなどを楽しむことができる。ただし、そのためにはゲームをクリアしつつ、ポイント(tm / タイガーマネー)を貯めていかなければならない。しかも、すべてのCG、サウンドを楽しむためには、かなりやり込む必要がある。難易度「ノーマル」で全員クリアした程度では全然足らないのだ……。あと、ここで注目したいのが、クリアしたキャラのシナリオだけを、バトルなしで楽しめる「シナリオプレイヤー」。なんと前作『フェイト/タイガーころしあむ』のUMDを持っていれば、前作のシナリオ部分もチェックできるのだ。ちなみに、こちらはポイントなしでもOKなのがうれしい。

本作の注目は「エクストラ」モード。貯まったtmで特典を購入する必要があるあたり、かなりシビアである

「ディスクチェック」を選び、前作のUMDをセットすると、前作のシナリオ部分を楽しむことも可能である

アクション性が高まったとはいえ、本格的なアクションゲームと比べれば、まだまだ易しい部類といえる。アクションゲーム初心者でも、クリアできずに途中で投げ出すということはないハズだ。PS2『Fate/unlimited codes』へのつなぎとして、まずは本作でバトルに慣れておくというのもひとつの手……かもしれない。いずれにせよ、Fate好き、パロディ好きな人はこの冬、一度チャレンジしてみてはいかだろうか。

ゲームタイトル フェイト/タイガーころしあむ アッパー
対応機種 プレイステーション・ポータブル
ジャンル コミカルノベルアクション
発売日 2008年8月28日 (発売中)
価格 5,240円
CEROレーティング A (全年齢対象)
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