DS版ならではの新システムに注目

以上、本作の概要を見てきたが、ここでオリジナルの『武将風雲録』が『DS 2』になるにあたって導入された新システムから特に注目したいものを紹介しよう。まず、オリジナル版の作品テーマは「文化と技術」であった。技術はそのままで技術というパラメータを内政によって高めると、金山を採掘可能になったり、当時の最先端の武器である鉄砲や鉄甲船を生産できるようになり、戦争が大幅に有利になるというもので、これは実際ゲーム攻略上有効だった。ただ文化のほうは茶会を開催することで文化度というパラメータを上げることができたのだが、手間がかかるわりにはメリットがわかりづらい面があった。 それが、本作では茶会に参加した武将のパラメータが上昇し、文化度を最大まで高めると、その国特有の恩恵(文化効果と呼ばれるもので、金銭収入アップなどがある)が、自勢力が支配するすべての国に及ぶようになるなど、直接的なメリットが追加され、茶会の有効性が大幅にアップしている。開催に多額の資金が必要だったり、高価な茶器を用意しないと失敗するなどゲーム序盤は手を出せないコマンドだが、ゲーム中盤以降、資金に余裕ができ、自勢力が支配する国が増えてくると威力を発揮する。

茶会を開催すると、参加武将が和歌を詠む。上の句に下の句を続けることができれば茶会成功だ。たまに下の句を詠む武将が「高砂の、高砂の…」のようにどもってしまうと失敗になる。見ている分には面白いが資金は無駄になるので痛い

また、もともと有効だった「技術」にもさらに「技法獲得」というメリットが追加されている。技法というのは国ごとに設定されているポイントで、これを組み合わせることにより戦術を使えるようになる。戦術には、戦争中に一定時間、自軍の攻撃力と移動力を大幅に上げるなど強力なものが多く、戦局を左右することも珍しくない。ただ、こちらも戦術を自在に使い分けるには多くのポイントが必要になるため、支配国が増えてくると真価を発揮するシステムである。

初期状態で使用できる戦術は3つのみだが、「技術」を高めることで数を増やすことができる。圧倒的な威力を誇る「鉄甲船」も技術の賜物なのだ

「信長の野望」シリーズの宿命とも言うべき、自勢力が強大になったあとの中だるみ。技術と茶会という自勢力に余裕ができたあとにこそ真価を発揮するコマンドが生まれたことや、前述したようにコンピュータの有力大名がどんどん領土を広げてくるため大勢力同士の戦いが発生するようになったことによって、筆者はそれが大幅に軽減されていると感じた。これが、オリジナル版が『DS 2』として生まれ変わるにあたっての一番大きな、そして一番嬉しかった変更点である。

内政なしでコンパクトに多彩な戦争が楽しめる新モード「群雄争覇」

「内政だの米相場とにらめっこだの、ちまちましたことをやっとられるか。ワシは戦争がしたいんじゃ」という獅子心王の生まれ変わりにお勧めしたいのが「群雄争覇」モードだ。オリジナル版にはなかった『DS 2』だけの新モードで、日本の各地に待ち受ける大名たちに戦争を挑んでいくというもの。与えられた条件下での勝利を目指すステージクリア型のモードとなっており、敵の兵数や戦術はもちろん、味方の兵数や戦術も固定されているため、純粋に戦争の戦術的な面が楽しめる。味方を1ユニットも撃破されずに敵を全滅させるなど、特殊な勝利条件のステージもあり、詰将棋的な楽しさもあるのだ。味方として出撃させられる武将は、最初は少ないが、戦うたびに、勝っても負けても武将が増えていく(もちろん、勝った方がたくさんの武将が手に入る)。そのうえ、戦争に勝つたびに武将のパラメータをアップさせるアイテムが手に入り、そこで成長させた武将を本編で使用することも可能なのだ。

「群雄争覇」は短い時間でも遊べる合戦のみのキャンペーンモードである

先にも軽く触れたが、本編は戦略シミュレーション的な面が強い。戦争は絶対に勝てる状況で仕掛けるのが基本で、勝つか負けるか分からない戦争はリスクが高すぎるのだ。その点、この「群雄争覇」では、敵味方の間で強力な戦術が乱れ飛んだり、武将の天性(武将ごとに知将、猛将などの属性が設定されており、同じ属性の武将をそろえて出陣させると攻撃力などにボーナスがつく新システム)を考えて出撃メンバーを選ぶなど、戦争に関連する『DS 2』ならではの新要素を存分に楽しむことができる。敗北してもリスクはほとんどないので、気軽に再挑戦可能だ。あと1ターンだけ……と思いながら、ついつい何時間も続けてしまう本編に対して、こちらは1ステージが10分ほどで終わるので、空いた時間にちょっと、のような遊び方もできる。全体で30種類以上のステージが用意されており、さらに1つのステージに「ノーマル」と「ハード」の2つの難易度が用意されているため、ボリュームも十分。なお、ハードは本当に手ごわいので、戦術系シミュレーションが得意な方は是非挑戦してみてほしい。

小谷城を守る浅井家を攻撃するステージ。敵総大将の浅井久政が弱いかわりに、その久政を勇猛な浅井長政が守るという特殊な状況での戦いだ。「群雄争覇」でも戦争の基本的なシステム自体は本編と同じ。開戦時の状況が固定されている点が異なっている

ステージクリアすると宝玉が手に入る。これを武将に与えるとパラメータがアップするのだ。どのステージをクリアするかによって、どのパラメータが上がる宝玉が手に入るかが決まっている

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