エミリー、デイビッドに続いてスタジオに現れたのは、『BONES ?骨は語る?』の生みの親であるプロデューサーのハート・ハンソン。巷に溢れるクライムドラマを骨というユニークな切り口で見せ、個性豊かなキャラクターの人間ドラマをプラスすることでオリジナリティを確立したアイデアマンだ。
開口一番、「皆、疲れてない? もう家に帰りたいんじゃないの」とインタビュアーを笑わせる。気難しいところは皆無で、さすが大勢のクルーをまとめているだけあると納得。「誰のインタビューが面白かった? やっぱりデイビッドかな?」と日本からはるばるやって来た取材陣の反応が気になる様子。すかさずこちらも「もちろん、これから始まるハート・ハンソンさんのインタビューですよ!」と切り返し、一気に場が盛り上がったところでインタビューがスタートした。
クライムドラマ全盛の中で生き残ってきた『BONES』、その秘訣とは
――ヒューマニティとリアリティの絶妙なバランスが、『BONES』の魅力ですよねハート・ハンソン(以下H)「僕らのユーモアが日本の皆さんにも分かってもらえて嬉しいよ。このドラマの海外のセールスは結構良くて、ニュージーランドやイギリス、カナダでも人気があるんだ。他のシリアスなクライムドラマに比べて、『BONES』にはいくつかの特長がある。まずは、笑えるということとキャラクターを重視したドラマを作っているということ。それらが犯罪被害者から少し距離を置くことを可能にしているんだ。そして"死体が人間に見えない"ということ。それは骸骨であり、漠然とした"イヤな物"なんだ。だから少しユーモラスにもなれるし、もっと皮肉な距離を置くことが出来るのさ」
――シーズン2では類似の事件が現実に起きてしまい放映が見送られたエピソードがあったと聞きました。リアリティとの兼ね合いは、どう意識されてますか。また、ドラマを作る中で、現実に起きている事件をチェックしたり、ニュースに敏感になったりしているのでしょうか?H「このドラマでは、他のドラマほど多くのストーリーを新聞から拾っていない。でも実際に起きている犯罪は、注意して見ているよ。問題のエピソードは、大学のキャンパスで起こった銃撃事件のことだけど、昨年アメリカでは学校での銃撃事件がいくつもあったんだ。そのエピソードの放映予定日とその事件があまりに近かった。自分の中の悪魔は、『これはまさに時事問題だ。時代を見事に反映している。プロモーションに使える!』と叫んでいて、葛藤はあったんだけど、結局、放映日をずらすことにした。また、放映後にドラマと近い事件が実際に起きたことも何度かあった。それは、僕たちが現実に近いストーリーを語っているという証だと思う」
相反するキャラクターが生み出す相乗効果
――ブレナンとブースの関係は、『X-ファイル』のモルダーとスカリーを意識したのでしょうか。H「パイロット(第1話)の中で、彼らの関係を参考にしたよ。『X-ファイル』は、合理的な考えと感情的な考えのキャラクターを合わせた最初のドラマではないけどね。『スタートレック』もそうだ。カーク船長とスポック。『シャーロック・ホームズ』のワトソンとホームズ……その組み合わせは、とてもハマるんだ」
H「いろんな点で全く正反対の2人の人間を選んで一緒に仕事をさせる。作家は、正反対の形容詞のリストを持っていて、全てのキャラクターはそのどちらかに当てはまる。彼らは全てのことに反対し合うことで、ドラマやコメディとなり、ストーリーを生み出すんだ。ちなみに『X-ファイル』のモルダー役デイビッド・ドゥカブニーは僕の友達で、シーズン2の第11話『Judas on a Pole(原題)』を監督してくれたんだよ」
――コミュニケーション・スキルに欠けるというブレナンのキャラクター設定は、とてもリアルですね「昔、僕は物理を学んだ経験がある。数学を選択するほど頭がよくなかったからね(笑)。そして人文学に進んだ。だから物理学者や数学者のことも、作家や詩人のこともよく知っている。彼らの違いは、ものすごく興味深いよ。ボーンズとブースもそうだ。ブースはとても感情豊かで、迷信深く人間的だが、ブレナンは合理的で理論派だ。また、彼は宗教を信じているが、彼女は無神論者だから、しばしば宗教観で衝突する。そういったやり取りがドラマを面白くしているんだよ」
キャスティングの嬉しい誤算から決まった方向性
――主演のエミリー・デシャネルとデイビッド・ボレアナズの相性がとても良くて驚きましたH「彼らはすぐに打ち解けたよ。最初にオファーしたのはデイビッドなんだ。実のところ、なかなかピンと来る人がいなくて、キャスティングは難航していた。そんな時に、スタジオのトップがデイビッドはどうかって提案してくれて、『彼だ!』と感じた。その後、デイビッドとうまくやれる主役を探した。彼とエミリーが一緒にいる様子を見て、彼女は声が低く長身で、とても知的に演じることが出来ると分かり、彼と十分張り合えると確信した。キャスティングした後、デイビッドとエミリーの両方にユーモアのセンスがあると分かったことは嬉しい驚きだったよ。この2人を見て、ただセクシーでスマートなだけでなく、ファニーにしようとドラマの方向性を決めたんだ」
ドラマはキャストがすべてと言い切る理由
――私は、あなたが関わった作品の中で『アボンリーへの道』(1989-1996)も大好きなんです。サラ・ポーリーはこのドラマで知名度を上げ、エミリーも『BONES』でブレイクしましたね。そういった魅力的なヒロインを発掘する秘訣を教えていただけますか?H「僕も『アボンリーへの道』は大好きなんだ。サラ・ポーリーは少女の頃から才能があった。今は見事に成長して、素晴らしい監督兼脚本家になったね。どうすれば新しい才能を見つけられるかというと、ズバリ「運」だ。こんなこと言うと他の脚本家たちに殺されちゃうけど、テレビドラマが最初の数エピソードを越えて続いていくには、いいキャストがすべて。5エピソードの放送中に打ち切りになるようなドラマはそこがダメなんだ。このドラマが4シーズン目に入ることが出来たのも、出演してくれた役者たちのおかげだよ。彼らがオーディションに来てくれ、そして僕らがキャッチ出来たことは幸運としか言いようがないね」
――ドラマが打ち切りになるかもしれないというプレッシャーを感じることは?H「やはり、シーズン1を撮影している時は、プレッシャーがあった。いつも冷や汗をかいていたよ。僕は当初から、このドラマは『デスパレートな妻たち』や『LOST』のように、すぐに当たるものではなく、じわじわとファンを増やしていくようなものになると思っていた。エピソードの中盤で視聴率が上がれば、ファンが増えている証拠になるんだけど、このドラマはまさにそうだった。局の都合で放映時間が何度も変わったけど、それでも彼らはついてきてくれた。そして現在では、ヒットドラマと呼ばれるようになった。安定した人気を得ることが出来たから、視聴率を心配することはなくなったけど、クオリティの維持には相当気を使っている。ファンを失えば、すべておしまいだからね」
ハート・ハンソン
1957年7月26日生まれ、カナダ出身。
テレビドラマ『African Skies』(1991)で脚本家デビュー。『アボンリーへの道』『ジャッジング・エイミー』などに参加し、テレビ界で着実にキャリアを積む。映画『Trust in Me』(1994)以降は、プロデューサー業に進出。『BONES ―骨は語る―』では、ほぼすべてのエピソードの脚本を担当しながら、製作総指揮としても辣腕を振るっている。
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