もう1つ年末のモノマネ特番で欠かせないトピックスが審査員の人選と審査基準。どのモノマネ特番にも審査への批判は当然のようにあがっているが、今回も「なぜ?」という疑問の声が少なくなかった。お笑い賞レース特番と比べても批判の声が目立つのは、「審査員にモノマネのプロがいない上に技術的なコメントがないなど説得力に欠ける」からだろう。
実際、お笑い賞レースでは視聴者が自分の採点と違ったときでも、審査員の顔ぶれとコメントによって批判を回避できているところが大きい。裏を返せば、モノマネ特番の審査員や審査基準への不満が「モノマネが世間に浸透しながらも優勝者のステイタスが上がらない」ことにつながっているように見えてしまう。
冒頭にあげたように、3つのモノマネ特番は11月下旬から12月上旬で放送を終えた。今年を締めくくる「モノマネ日本一決定戦」と謳っているにもかかわらず、早々に放送を終えてしまうところにモノマネ特番の現在位置が現れている。
他の年末特番に目を向けると、お笑い賞レースの『M-1グランプリ』(ABCテレビ・テレビ朝日系)は12月22日の下旬にドンと構えている(ちなみに後発の『女芸人No.1決定戦THE W』(日テレ)は『M-1』の影響を避けるように上旬の10日に放送されている)。
現在最も年末特番として存在感があるのは音楽特番だろう。まず11月下旬から12月上旬にかけて集中的に放送され、その後12月下旬になるともう1つのラッシュが始まる。
つまり音楽特番には2つのピークがあるのだが、後者の12月下旬にはレギュラーバラエティの年末特番が「今年の総決算」として放送されることもあって、モノマネ特番は押しのけられて放送時期が早まっている感は否めない。
モノマネタレントの未来は明るい
現時点における12月の年末特番を整理しておくと、まずベースになり下旬に放送されているのがレギュラーバラエティの特番。次に今最もコア層(主に13~49歳)の個人視聴率獲得が期待できるため量産されている音楽特番が優先的に編成されている。さらにお笑い賞レースがあり、モノマネ特番はそれらの次というのが現実的なポジションなのだろう。
そんなポジションを踏まえてなお、モノマネというコンテンツの未来は可能性にあふれている。モノマネ特番は少なくてもモノマネタレントはバラエティで笑いを作るパートとして重宝されているほか、カラオケ企画などへの出演も多い。例えば『千鳥の鬼レンチャン』(フジ)で松浦航大や荒牧陽子らは美声を披露するだけでなく、千鳥やかまいたちからイジられることでバラエティタレントとしての幅を広げている。
もちろん営業先での引き合いが多い上に、TikTokやYouTubeなどを収益化していくことも可能。となれば「箔を付ける」という意味で、やはり「日本一決定戦」となるモノマネ特番を適正化してもっと納得感を上げたいところだろう。もし「“『M-1』チャンピオン”のように各局のバラエティに一周できる」くらいのステイタスが加われば、本人はもちろん視聴者もテレビ局も満足できるウィン・ウィン・ウィンの関係性を築けるのではないか。
そのためには「1年かけて作った新ネタをここにぶつける」「『M-1』のような生放送のヒリヒリとした構成・演出で盛り上げる」というくらいの気合いと覚悟が必要なのかもしれない。そのハードルは決して低くないが、モノマネは漫才と並んで昭和時代から令和の現在まで続いてきた歴史ある演芸の1つだけに、それくらいの高望みをしてもいいように見える。
TikTokやYouTubeなどの普及によってモノマネという演芸とモノマネタレントとの接触機会が増え、身近になったことは間違いないところ。そもそも昔も今も学校ではモノマネができるとちょっとした人気者になれるなど、幼いころから親しんできたものと言っていいのではないか。それらの意味で、テレビはモノマネという芸をより生かす方法を、芸能事務所はモノマネタレントを育てる方法をもっと追求してもいいように見える。