7日に『ザ・細かすぎて伝わらないモノマネ』(フジテレビ)が放送され、個人全体視聴率5.6%、コア視聴率(13~49歳)6.3%を獲得(ビデオリサーチ調べ・関東地区)。横並びトップとなったほか、ネット上の反応もおおむね好評だった。

2日には今年立ち上げられた大型モノマネ特番『モノマネMONSTER』(日本テレビ)、先月23日には『ものまね王座決定戦』(フジ)も放送され、主な「モノマネ日本一決定戦」は早くも終了した。

TikTokやYouTubeなどの短尺ネット動画全盛の中、テレビのモノマネ特番はどんな立ち位置なのか。その現在地点と今後の可能性をテレビ解説者の木村隆志が掘り下げていく。

  • (左から)『ザ・細かすぎて伝わらないモノマネ』石橋貴明、『モノマネMONSTER』吉村崇、『ものまね王座決定戦』今田耕司

    (左から)『ザ・細かすぎて伝わらないモノマネ』石橋貴明、『モノマネMONSTER』吉村崇、『ものまね王座決定戦』今田耕司

歌うまモノマネが上位を独占した理由

2020年代に入ったあたりから“歌マネ”の立ち位置が飛躍的に上がり現在に至っている。実際、2020年12月の『ものまね王座決定戦』で松浦航大が初出場初優勝を果たしたほか、ビューティーこくぶ、荒牧陽子、ダブルネーム、Mr.シャチホコなどの歌うま系モノマネタレントが再評価され、よよよちゃん、ななみなななども出番を増やしていった。

その背景にあったのが、TikTokなどでのモノマネ動画。かつてのものまね四天王(清水アキラ、ビジーフォー、栗田貫一、コロッケ)や原口あきまさ、コージー冨田、ホリ、神奈月らのような笑いを前面に押し出したスタイルではなく、歌のうまさも含め「いかに似ているか」の再現性を優先させたモノマネ動画が再生数を伸ばしている。若年層をつかみたい民放各局は歌うま系の若手モノマネタレントを重用するようになり、各番組の構成・演出はガラッと変わった。

『ものまね王座決定戦』はもともと歌合戦がベースの構成だが、ミラクルひかるやキンタロー。などの笑いベースの実力者や、JPやレッツゴーよしまさなどのトークモノマネ巧者に勝って歌うま系モノマネタレントが優勝を飾るケースが目立っている。事実、24年はダブルネーム、23年はななみなな、22年はビューティーこくぶ、21年は荒牧陽子、20年は松浦航大が優勝するなど、近年では歌うま系モノマネタレントしか王者になっていない。

一方、日テレでは番組そのものを『ものまねグランプリ』から『モノマネMONSTER』に変えつつ、「歌もトークも何でもアリ」の大会形式をキープ。「コピー度」5点+「エンタメ度」5点の計10点×一般審査員100人=1,000点満点の採点方法はフジとの差別化が見られるが、第1回の優勝が松浦航大、準優勝が荒牧陽子、3位がMr.シャチホコと歌うま系が上位を独占したことからも審査基準などによる影響を感じさせられる。

例えば『ものまね王座決定戦』はミラクルひかるやキンタロー。らのほうが明らかに視聴者にウケていたが、その芸は現時点で制作サイドにとって「必要でこそあれ、優勝ではない」ということなのかもしれない。

ただ、当然というべきか、どちらの番組もネット上に「もっと笑えるモノマネが見たい」「似ているかどうかだけではつまらない」などの不満があがるのがお決まりのようになっている。

特に、ものまね四天王や原口あきまさ、コージー冨田、ホリ、神奈月ら、笑いを押し出したモノマネを楽しんできた人々の不満は大きい。なかには「若者に媚びすぎ」という辛らつな声もあり、あながち間違っていないように見えてしまう。

また、『細かすぎて伝わらない』の視聴率が好調の要因は、逆にターゲット世代を問わないバランス感覚の良さではないか。笑いを前面に押し出しつつも、時に再現性の高さも感じさせるなど、どちらを好む人もすくい上げることで幅広い視聴者層を楽しませている。