これは「解答者が一般人では視聴率が獲れない」「トークパートで笑いにつなげにくい」「キャンセルやクレームのリスクがある」などの理由があるが、どれも「絶対にクリアできない」というレベルのものではない。事実、1980年代までは一般人が解答者のクイズ番組がほとんどを占めていた。

今秋終了の『東大王』は当初、一般人が東大王チームに挑むという構成だったが、すぐに芸能人チームとの対戦に変わり、2023年に再び一般人参加に挑むが、すぐにまた芸能人チームとの対戦に戻っている。『小5クイズ』も2年前に一般応募枠を採り入れたが、ごく一部のみに留めるなど、消極的な取り組みのみで終わった。ただ、この2番組はまだいいほうで、他のクイズ番組はチャレンジすらしていない。

SNSが発達し、個人の尊重が叫ばれる令和の今、エンタメは「主体性を持って参加できるものであること」が求められている。芸能人に対しても「主体性を持って推す」という時代になり、そうではない芸能人が出演する番組への注目度は低くなった。

また、ゲームやアプリで全国の人々とリアルタイムで対戦できるようになるなどの「クイズを取り巻く状況の変化にテレビが追いついていない」ように見えてしまう。そもそも世間のクイズ熱は冷めるどころか、一定の盛り上がりを保っている。クイズのゲームやアプリが流行してからすでに10年以上が過ぎ、高校・大学のクイズ部だけでなく社会人のクイズイベントなども活況。象徴的な存在のQuizKnockはYouTube登録者数233万人(9月18日現在)を数える。

しかし長年クイズというジャンルを支えてきたテレビは、そんな時代の変化に対応できていない。「リアルタイム視聴をベースにしたビジネスを変えられない」ことと同じように、クイズ番組をアップデートできないまま現在に至っている。今秋の『東大王』『小5クイズ』の終了は、その象徴的なニュースなのかもしれない。

特番は活況だがレギュラーは厳しい

では、「テレビのクイズ番組に未来はないのか」と言えばそんなことはないだろう。

まず前述したように、クイズを楽しんでいる人の数は少なくない。むしろ移動中や休憩中などに楽しむ身近なものになったという人もいる。しかし、彼らにとって「自分もあの番組に出てみたい。だから見てみよう」と思わせるクイズ番組はなく、そんな人々を取りこぼしているのではないか。

クイズ番組に「参加している」という意識を持ってもらうための策はまだまだあるはずだ。例えば、視聴者が参加できる生放送のクイズ企画を行った番組もあったが、賞金・賞品のスケールが小さかった上にすぐにやめてしまうなど、中途半端な結果に終わってきた。もう少しライブ感を楽しめる構成・演出は本当にできないのか。

また、「クイズ猛者ばかりが上位に来ると面白くない」のなら、「性別・年齢・職業・居住地・経歴などの属性ごとに参加者を集めて戦う」という『パネルクイズ アタック25』(ABCテレビ、現在はBSJapanextで放送)の形式をアップデートさせた形があってもいいだろう。「一般人に一世一代の大勝負をしてもらう」という構成・演出でショーアップできないところにもどかしさを感じさせられる。

いずれにしても各局の制作サイドは「『視聴率を確保するため』という前提に縛られるため、『アップデートしない』という歴史を繰り返してきたが、そろそろ限界に近づいている」という感は否めない。

そんな苦しい現状を物語っているのがクイズ特番。『芸能人格付けチェック』(ABC制作・テレ朝系)、『オールスター感謝祭』(TBS)、『クイズ ドレミファドン!』(フジ)などのクイズ特番は、放送のたびにネット上で盛り上がっている。ただこれは「出演者が豪華なため、注目を引きつけられる」という点が大きく、レギュラー番組でこうはいかないのは当然だ。

厳しい書き方になるが、やはり昭和・平成と変わっていないのだから、人々に「制作サイドの工夫と覚悟が足りない」と言われても仕方がないように見える。制作費や人材確保などで難しいのはわかるが、だからこそ「他のバラエティよりクイズ番組のほうがチャンスはある」のではないか。個人的にクイズ番組が「テレビがつまらなくなった」という理由の1つにあげられる現状は寂しいだけに、来年の改編では思い切った新番組を期待したい。