同様に、芸能人メインの『100kmサバイバルマラソン』には、やはり賛否両論の声が寄せられた。昨年は「『24時間テレビ』(日本テレビ)の検証」という主旨がハマったが、それを達成した今、猛暑の夏に命のリスクを負わせてまでやる意義は提示されていない。ランナーの奮闘でクライマックスこそ盛り上がったが、これを感動や学園祭に結びつけるのは無理があり、全体の影響力から見ても固執する理由はないように見えた。
それより『新しいカギ』には、今回採用されなかった『高校バスケ全国制覇への道』『先生と漫才グランプリ』『学校きもだめし』『校内一周!学校駅伝』『長の水博士MADロボ部』(サッカーのPK対決)などの学生参加コーナーがある。
さらに、『ハモネプハイスクール』ができたのなら、校内外の部活動やスクールなどにスポットを当てた新たなコーナーもありだろう。つまり、「日本一たのしい学園祭!」はまだまだ発展性のあるコンセプトだけに、芸能人メインのコーナーに頼らずにやり切ることができるかもしれない。
放送終了後から深夜にかけての長い時間、「日本一たのしい学園祭」と「テレビ最高」がトレンドワード入りし続けていた。テレビに限らずこれほどのビッグコンテンツは「見ていないのに叩く」という理不尽な人も含め、否定的な声も一定数あがるものだが、今回は極めて少なかった。
事実、21日の深夜にXのコメントを読んでいたら、「TVしかこの現象起きないんだよね!まだTVだけなんだよ こんなに世間を一気に染めることができるメディアは!!」「これ毎年したら? 団結力とか増すし ええ番組やと思う 無駄な募金もないし」「熱い熱いよ 熱すぎる、一生着いていきたい 最高だった」「マラソンのゴールとかハモネプとかダンスバトルとか全部泣いた 頑張ってる姿ってかっこいい」などの声があがっていた。
スタッフ&キャストの本気と懸命
1週前の13日に8時間生放送された『音楽の日2024』(TBS)もこれらに近い声がXで飛び交っていたが、最上級の称賛が集まったのは「スタッフとキャストの本気と懸命な姿勢が視聴者に伝わったから」だろう。両番組の2週連続生放送によって、「効率やコスパありきではなく、労を惜しまず予算をかけて本気で作る」ことの正しさが証明されたように見える。
さらに大きかったのは、視聴者に学生参加コーナーで彼らの生き生きとした姿を見せられたこと。目の輝き、満面の笑み、緊張感、安堵や悔しさの涙など…これらを編集のない生放送でリアリティたっぷりに見せたことのインパクトは大きい。個人が尊重され、誰もが発信し、自分らしく生きることが当たり前の時代だからこそ、「一般人の参加コーナーをどれだけ増やせるか」がテレビの未来を左右するのではないか。
少なくとも今回の制作サイドからは「学生たちと一緒に番組を作る」という意識を感じさせられた。XやTikTokなどがトレンドの発信地になっている現実を見れば、かつてのように「制作サイドが作ったものを一方的に見せる」「計算の立つ芸能人だけで作る」だけで支持を得ていくのは難しい。実際に参加できるものはもちろん、オンラインで参加できるもの、さらに参加している感覚を楽しめるものも含めて、フジに限らず「参加できるテレビ局」というイメージを付けられたところが、コア層への訴求力を高めていけるのだろう。
「来年も見たい」という声も多かっただけに、来年の『FNS27時間テレビ』でも「日本一たのしい学園祭!」を継続してもいいのかもしれない。もし3年連続で放送できれば、コーナーの出し入れや、今回多少の疑問や批判があったところもブラッシュアップされていくはずだ。
あるいは4~8時間程度の長時間特番を新たに立ち上げて、そこで放送するのもいいだろう。いずれにしても長時間の生放送でしか視聴者に感じさせられないものがあり、なかでも多くの人々を巻き込めるお祭り感は、今なおテレビの武器であることを再認識させられた。