20~21日に放送された『FNS27時間テレビ 日本一たのしい学園祭!』(フジテレビ)は、終始X(Twitter)のトレンドランキングを席巻していたほか、視聴率やネット上の評判もおおむね好評。終了後には称賛の声が飛び交い、大きなトラブルなどもなく、局内のみならず視聴者の間でも「成功」というムードが広がっている。

『FNS27時間テレビ』は2010年代あたりから低迷が目立ちはじめ、後半に入ると笑いの要素を減らした“ほぼ収録放送”になり、2020年代にはコロナ禍で中止になるなど苦境に陥っていた。昨夏、4年ぶりに放送されてそれなりに好評だったものの、まだ「完全復活」とまでは言えない状態だっただけに、今後に向けて希望を持てる結果と言っていいだろう。

「成功」というムードになった理由について、ベース番組となった『新しいカギ』、総合司会の霜降り明星(せいや、粗品)、チョコレートプラネット(長田庄平、松尾駿)、ハナコ(菊田竜大、秋山寛貴、岡部大)、「日本一たのしい学園祭!」というテーマ、各コーナーの構成・演出などの観点から、テレビ解説者の木村隆志が掘り下げていく。

  • (左から)『FNS27時間テレビ 日本一たのしい学園祭!』進行の小室瑛莉子アナ、総合司会のハナコ、霜降り明星、チョコレートプラネット、進行の井上清華アナ

    (左から)『FNS27時間テレビ 日本一たのしい学園祭!』進行の小室瑛莉子アナ、総合司会のハナコ、霜降り明星、チョコレートプラネット、進行の井上清華アナ

7人の芸人が面白かったという実感

まずベースとなった『新しいカギ』と総合司会の7人について。

民放各局が最も求めるコア層(主に13~49歳)の個人視聴率は、全時間帯平均が4.6%、21日18時30分~21時54分の平均が7.8%を記録した。特に後者は日曜ゴールデンの高視聴率番組を破っての時間帯トップだけに、この結果だけを取っても「『新しいカギ』と7人を選んだことが正しかった」と言っていいのではないか。

フジテレビのバラエティを見渡すと、昨年のベースとなった『千鳥の鬼レンチャン』以外で『FNS27時間テレビ』のベースになりそうな人気番組は見当たらない。今回、総合司会を務めた7人の年齢層を見ても、「より若い『新しいカギ』だからこそ、Xの反応なども含めてコア層に訴求できた」とみるのが自然だろう。

常にボケやツッコミを繰り出す長田、松尾と、毒舌芸を加速させている粗品の涙は意外性も訴求力も十分。さらに、せいやの熱さや、ハナコの一生懸命さもいつも以上に目立っていた。それらは「『FNS27時間テレビ』の総合司会を務めること」の特別な意味を感じさせるとともに、大きかったのは「『新しいカギ』の彼らがやったから面白かった」「彼らが総合司会でよかった」という視聴者の実感。

お笑いBIG3でも、ダウンタウンやウッチャンナンチャンでも、層の厚いアラフィフ世代でもない。さらに言えば、少し前まで民放各局とメディアが強引にフィーチャーしていたお笑い第七世代というくくりでもない。『ジョンソン』(TBS)や『オドオド×ハラハラ』(フジ)の今秋終了が報じられる中、既存バラエティのメインを張る3組が「彼らの番組は面白い」と実感させたことが、テレビ業界と芸人にとっての光となった。

とりわけ「つい最近まで『FNS27時間テレビ』の顔」として出演していたビートたけし、笑福亭鶴瓶、中居正広など。また、ダウンタウン、爆笑問題、マツコ・デラックスら50代以上の大物に頼らず結果を得たことに希望を抱かせられる。

出色だった生放送の学生参加企画

次に「日本一たのしい学園祭!」というテーマと各コーナーの構成・演出について。

ポイントは学生層やその関係者だけでなく、「全校生徒、1億2000万人!」と掲げて全国民をターゲットに据えたこと。大人にも学園祭のノリを楽しんでもらい元気を与えるような構成・演出が貫かれていた。

なかでも視聴者が最も学園祭のノリを感じて盛り上がったのは、『カギダンススタジアム』と『ハモネプハイスクール』だろう。この2つは「ずっと泣いていた」「毎年の恒例イベントにしてほしい」というニュアンスの声が次々にあがるなど、学生たちのあふれる熱気と笑顔に生放送のハラハラドキドキが加わって、近年でも最高峰レベルのテレビコンテンツと言っていいかもしれない。

特に『カギダンススタジアム』は、『学校かくれんぼ』のような既存の人気コーナーではない新企画であり、それを最重要なクライマックスに据えたこと。『ハモネプハイスクール』は、初の高校生大会を甲子園のように真夏の生放送で行ったこと。どちらもリスクを承知で挑んだ「制作サイドの思い切りの良さと労を惜しまぬ姿勢で好結果を得た」という感がある。

その他、『高校生クイズ何問目? ~年間チャンピオン大会~』や『生学校かくれんぼ ~かくれんぼ博士100人vsやす子~』なども含め、やはり生放送の学生参加コーナーが際立っていたのは間違いないだろう。逆に収録放送の芸能人コーナーである『千鳥の鬼レンチャン ~サビだけカラオケ タッグモード大会~』や『FNS逃走中』の盛り上がりは通常通りで“全体の保険”として組み込んだ印象が残った。

さらに、生放送だが芸能人メインの『さんまのお笑い向上委員会』『粗品ゲーム ~日本一不条理なお笑いバトル~』『ナゾトレ川柳』『ドッキリGP×新しいカギ』なども同様の印象。お笑いフリークに向けた内容で学園祭のムードはほとんどなく、特別感や話題性は今一歩だったのではないか。