『どうなの会』の放送を聞いたとき、瞬間的に「過去に似たケースはなかったかな」と考えて、いくつかの番組が頭に浮かんだ。
現在シーズン25が放送中の『東野・岡村の旅猿 プライベートでごめんなさい…』(日テレ)は当初TBSの正月特番として放送されたが、続行されなかったため、2度目の放送以降は日テレに移る形で現在に至っている。
今春30周年を迎えた長寿番組『開運!なんでも鑑定団』(テレビ東京)は、『EXテレビ』(読売テレビ制作・日テレ系)の「家宝鑑定ショー」がベース。同番組の最終回で行われた「企画オークションでテレ東が買い取る」という形でスタートした。
その他で印象深かったのは、『ウルトラ』(TBS)。この番組は『ウッチャンナンチャンのウリナリ!!』(日テレ)が終了する際、同番組で誕生したユニット・ウルトラキャッツに活躍の場を作る形で局を変えて放送された。
また、アニメでは『進撃の巨人』(MBS制作・TBS系→NHK)、『僕のヒーローアカデミア』(MBS制作・TBS系→読売テレビ制作・日テレ系)、『弱虫ペダル』(テレ東→NHK)、『HUNTER×HUNTER』(フジ→日テレ)など、シリーズ途中で放送局が変わるケースがしばしばあり、ドラマでも『マジすか学園』(テレビ東京→日テレ)の変更を覚えている人もいるだろう。
これら以外では、『「ぷっ」すま』(テレ朝→Amazonプライム・ビデオ『なぎスケ!』)、『やべっちF.C.』(テレ朝→DAZN『やべっちスタジアム』)のように「地上波での放送終了後、動画配信サービスで復活」というケースも見られ始めている。
編成、スタッフ、キャスト、制作会社、視聴者など、それぞれ背景や事情は異なるものの、これらの番組に違和感の声は少なく視聴者に受け入れられてきた。視聴者にとって大切なのはコンテンツであり、それを手がけるクリエイター。しかもクリエイターの業界内移動が活発化する現在、もはやこれくらいの「移籍」「変更」はあり得ることとして受け止めるほうが自然なのかもしれない。
逆に、もし放送をめぐって両局が対立するようなら、視聴者からあきれられて共倒れに終わるリスクがありそうだ。実際、中京テレビもTBSも具体的なコメントを出していないが、そのスタンスは賢明に見える。
コンテンツ・ファーストの時代へ
ちなみに、1日に『タモリステーション』(テレ朝)でタモリがアナウンサーらと盛岡を訪れたロケが放送されると、「『ブラタモリ』(NHK)に見える」という賛否の声があがり、ネットメディアもこれを報じていた。
『ブラタモリ』も『どうなの課』と同様に今春でレギュラー放送を終え、特番化も決まっていないのだから、ある意味これくらいのことは当然なのかもしれない。むしろ制作サイドには「『ブラタモリ』がない今、タモリのロケ番組を見たい視聴者ニーズに応えた」という大義名分があり、そもそもテレ朝は『タモリ倶楽部』を放送していた実績もある。
今後は今回のようなケースで「パクリかどうか」という声をあげる人が減っていくのではないか。やはり「コンテンツ・ファースト」「クリエイター・ファースト」の流れは止まりそうになく、放送局にはこれまで以上に取捨選択の判断力が問われていくのだろう。
オープニングでMCの生瀬勝久が「ここまでご覧になってザワついていると思います」と意味深に語り、企画レギュラーのチャンカワイが「まさかこんなに早く出会えるとはね……スゴイことが起こってんだよ本当は」と感極まるなど、他局での早期復活に自らふれるシーンがあった。また、画面右上に常時表示された「TBS」の文字も、あえて違和感を強調しているように見えてしまった。
これらはスタッフや出演者による中京テレビと日本テレビへの恨み節ではないかもしれない。しかし、「納得がいかない形で終わってしまった」という不本意さや、「それでも復活できた」といううれしさを感じられるリスタートとなった。
『どうなの課』は時間も人も手間もかかるタイプの番組だからこそ関係者の熱は高く、「新しいものを作りたい」というクリエイターの性を超えるほどの強い思いがあるのかもしれない。