地上波のテレビ番組は今なお一般層にリアルタイムで見てもらわなければビジネスとして成立しづらいのだが、その点で『THE SECOND』は再検討が必要なところがいくつかある。

その筆頭は4時間10分という放送時間。近年の賞レースを見ていくと、『R-1グランプリ』が2時間~2時間30分、『キングオブコント』と『女芸人No.1決定戦THE W』が3時間、『M-1グランプリ』が3時間40分であることから、突出して長いことが分かるだろう。今では絶対的な存在の『M-1グランプリ』もスタートから12年目までは2時間30分程度に留めており、人気が広く定着する前に長時間見てもらうことの難しさを物語っている。

そして視聴者側からネット上に多数書き込まれていたのは、「進行が遅い」「審査員のコメントが微妙」というニュアンスの指摘。つまり、「漫才以外の時間に不満がある」ということだろう。確かに『M-1グランプリ』や『キングオブコント』は、時に称賛や物議を醸す審査員のコメントがネタと並ぶ醍醐味の1つとなっているが、お笑い通とはいえ一般人にコメントさせる『THE SECOND』には、それがほとんどない。

一般人にトップ芸人並みのコメントを期待することも、生放送でリスクを負った発言をさせることも難しいのは当然だが、残念ながらエンタテインメントとしての密度は下がってしまう。その意味で、「お笑い通の一般人に偏っている審査員の構成に、有田や華丸・大吉などレジェンド級の芸人を加えてほしい」というコメントが散見されたのは当然かもしれない。いずれにしても、フラットな一般層も含め、審査員の構成は今後も固定せず議論を重ねていく必要性を感じさせられた。

さらにもう1つ気になったのが、ハイパーゼネラルマネージャーの有田哲平、スペシャルサポーターの博多華丸・大吉について。一般審査員のコメントが薄くなってしまう分、彼らにかかる期待は大きいのだが、時に笑いを交えてそつなくまとめていたのはさすがだった。ただ、称賛のみで敗因を指摘したり、改善点を提案したりなどの核心にふれるようなコメントがほとんどなかったのも事実だ。

  • 『THE SECOND~漫才トーナメント~』第2回大会のファイナリスト

エンタメと権威につながる厳しさ

『M-1グランプリ』を国民的な賞レースに引き上げたのは、一夜にして人生が変わるサクセスストーリーであり、勝者と敗者の残酷なまでの明暗だった。その背景には審査員の厳しいコメントがあり、だからこそ勝者と敗者のコントラストが際立ち、エンタメ度が上がるという要素がある。

その点、『THE SECOND』は、もちろんベテラン芸人たちへのリスペクトは大切だが、彼らに寄り添いすぎるとテレビ局のお客さんである視聴者の心をつかみづらくなってしまう。制作サイドが時に構成・演出面で厳しさを見せるくらいのほうが、王者と大会の権威につながっていくのではないか。

また、今回も「芸人として死んでいた」「ただ続けていただけ」「後輩たちに追いつきたい」「解散しかけた」などの切実な出場者コメントがたびたびフィーチャーされたが、そんな“苦労”が前提の構成も『THE SECOND』の課題に見える。

“苦労”が前提の構成は、感動と興ざめの紙一重。素直に感情移入できる人はいいが、あおりVTRを畳みかけられて冷めてしまう人もいる。例えば、浪花節だけでなく、全力の戦闘モード、まったくの無欲、終始ふざけまくる出場者がいてもいいのではないか。大会のコンセプトとしては浪花節で押したくなるのはわかるが、もし制作サイドにそれを誘導するムードがあるとしたら、テレビマンの悪いクセなのかもしれない。

ともあれ、芸人とお笑い通の評判がよく、フジとしても貴重な賞レースである以上、第3回以降の開催は既定路線。『M-1グランプリ』や『キングオブコント』がそうだったように、続けながら試行錯誤し続けていくことが何より重要なことは間違いない。