ここまで挙げてきた佐藤に関するポジティブなイメージは、MCというポストに置くことで「=番組の印象」となる。これまでバラエティのサブMCやアシスタントMCを務める女性タレントは優香、小島瑠璃子、新井恵理那、あるいはアイドルやアナウンサーなどビジュアル優先のキャスティングが基本だった。
また、『王様のブランチ』(TBS)の女性MCが優香、本仮屋ユイカ、新川優愛という女優路線から佐藤に変わったことを見ても、求められるものが「親しみやすさ」重視に移ったことが分かるのではないか。
なかでも日テレは、バラエティの女性進行役に水卜麻美、岩田絵理奈、市來玲奈など、親しみやすいタイプのアナウンサーを起用する傾向があった。今春の動きを見ても佐藤だけでなく、34年ぶりのゴールデン帯音楽番組『with MUSIC』のMCに親しみやすいタイプの有働由美子を起用している。
一方、他局に目を向けて見ると、現在放送中の朝ドラ『虎に翼』(NHK総合)主演の伊藤沙莉も「親しみやすさ」を評価されるタイプであり、現在の視聴者感情に合う存在なのだろう。
実は芸歴24年目のキャリアを誇る
ただ、佐藤栞里のようなタレントばかりそろえてもバラエティは面白いものにはなりづらいのも事実であり、「さまざまなタイプをそろえる中で、安心感や好感度を担うポジションを託している」のが本当のところだろう。
例えば『有吉の壁』は、毒舌の有吉弘行や必死な芸人たちの姿があるからこそ佐藤の親しみやすさが生きるし、『笑ってコラえて!』も主役は全国各地の一般人だからこそMCには笑顔で見守る佐藤の存在がハマりやすい。「他局より出演者の人数が多く、編集にこだわって笑いどころを詰め込む」と言われる日テレのバラエティにとって佐藤の存在は「面白そうな番組」というムードを作る上で大きいのではないか。
それにしても決して皮肉ではなく、取り立ててトークやリアクションに秀でているわけでもない女性タレントが、これだけ長く多くの番組でMCを務められるのは快挙と言っていいかもしれない。
ただ、芸歴24年目もの長いキャリアを持つ佐藤は単に「感じがいい」「親しみやすい」だけのタレントではない。小学生のころから大人に囲まれた中でモデルを務め続け、数々の現場で礼儀やプロ意識などを学び、制作側の意図を汲み取る力を培ってきた。実際、佐藤が昨年7月まで11年にわたってモデルを務めたファッション誌『MORE』(集英社)の編集者たちと話したとき、彼女の対応力や協調性を称える言葉を聞いたことがある。
佐藤の出演番組をよく見ていると、笑顔で見守っているだけでなく、何げない言葉で台本を進めたり、話を展開させたりなど、裏回しのような言葉を発していることが少なくない。さらに、MCを務める番組ですらMCというより裏回しのような佇まいで振る舞えることが、自然体で謙虚な印象を保っているようにも見える。
「他の出演者よりどう目立つか、どう爪跡を残すか」を考えるタレントが多い中、佐藤のような存在は希少なだけに、今春の起用で日テレとの関係性はさらに深まっていくのではないか。