日本テレビの藤井貴彦(52)と上重聡(43)、NHKの青井実(43)と、ベテラン男性アナウンサーの退局とフリー転身が相次いで発表されている。

約1年前に報じられた武田真一(56)のNHK退局が記憶に新しいだけに、「またベテランの男性アナウンサーがフリーになるのか」と感じた人も多いのではないか。

ここでは20年以上の実績を持つベテラン男性アナウンサーがフリー転身する背景と、成功を左右しそうなポイントをテレビ解説者の木村隆志が掘り下げていく。

  • 藤井貴彦(左)と青井実

    藤井貴彦(左)と青井実

帯番組はベテラン男性アナの保険

藤井は3月で日テレを退局し、4月から有働由美子に代わって『news zero』(日テレ)のメインキャスターに就任。一方、青井は2月でNHKを退局し、4月から『Live news イット!』(フジテレビ)のメインキャスターに就任する。

「退局後すぐに帯番組のメインに就任」という流れは、1年前に『DayDay.』(日テレ)のMCに就任した武田も同じ。これは「ベテラン男性アナの退局と独立にはこれくらいの“保険”がなければ踏み切りづらい」という現実の裏返しなのかもしれない。少なくとも起用する局側に「フリーのベテランアナウンサーに帯番組のメインを任せたい」という意向があるのは確かだ。

藤井アナはアナウンサー歴30年、青井アナと上重アナは同20年の節目に退局とフリー転身を決めたところが示唆に富んでいる。残りのアナウンサー生活、あるいは人生そのものを考えたとき、「やりたいことに挑戦したい」と考えているのではないか。

その背景には、少なからず現実と理想のギャップがある。アナウンサーと言えども、勤続年数が増えれば、おのずと管理職や若手育成などの仕事が増え、「やりたいことをやる」「新しいことに挑戦する」ことは難しくなっていく。特に「管理職として上り詰めるより、“生涯アナウンサー”でいるためにフリーの道を選ぶ」という人は少なくない。

報道・情報番組なのか。それともバラエティなのか。それとも両方なのか。さらにイベントや動画配信などもやっていきたいのか。その活動スタンスには個人差があるものの、フリーになることで選ぶ自由を手に入れられるのは確かだ。さらに、「より多い報酬を得ること」をフリー転身の理由にあげる人もいるだろう。

活動スタンスに個人差がある以上、フリーアナウンサーにおける成功の基準は定義が難しい。ただ、一般的な基準になり得るのは、退局前と同等以上のテレビ出演があるか。また、退局後、一時的に露出が増える“フリー転身バブル”が終わって以降、出演数が大幅に減ってしまうと成功とはみなされづらい。