振り返ると2010年代のドラマは視聴率を獲得していく上で厄介者扱いされることが多く、実際にドラマ枠は減っていたが、20年代に入ると一転して右肩上がりで増え続けている。民放各局におけるドラマは、「配信を中心にしたIP(知的財産)ビジネスの要」という最重要コンテンツに変わったのだ。

現在、民放各局はCMによる放送収入の低下をカバーするために、動画広告、自局系動画配信サービスの有料会員、海外配信、映画や舞台、イベントやグッズなど、さまざまな手段で収入を得ていくことが求められている。

その点、原作のないオリジナルドラマは、シリーズ化、スピンオフ、メイキング、海外配信、映画、イベント、グッズが自由に制作・販売できるなど、収益化の面でメリットが大きい。だからこそ日本最長の歴史を持ち、民放トップの影響力を持つTBS「日曜劇場」は、近年“ほぼオリジナル”の方針が貫かれている。

その他、「原作者や出版社などとのやり取りや許諾が不要でスピーディーに進められる」「脚色の制限がなく、キャラクター設定、伏線、小ネタなど、視聴率と配信再生数の両方を狙える脚本にしやすい」「ネタバレがないため考察を促し、終盤に向けて盛り上がれる」「他局との原作争奪戦を回避できる」「原作ファンからの批判を回避できる」などのメリットがあり、オリジナルの優先の方針で編成されている。

  • 日曜劇場で現在放送中のオリジナル作品『さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~』制作発表より

深夜帯の漫画原作ばかりは要改善か

しかし、前述したデータには続きがあった。現在放送中の冬ドラマを見ると、深夜帯(23時~)は主要作だけで漫画原作のドラマが11作もある。このところ今冬に限らず深夜帯のドラマは大半が漫画原作のドラマで占められていて、真夜中に限って言えば「ドラマは漫画原作ばかり」と言われても仕方がないだろう。

深夜帯のドラマは「制作費、関わる人数、かけられる時間、PRの質量などがゴールデン・プライム帯に大きく劣る」という厳しい制作環境だけに、「オリジナルより制作しやすく、すでに一定のファン層がいる漫画に頼りたい」という姿勢が透けて見える。

ただ、「深夜帯からのヒットは年に1~2作あるかどうか」というレベルだけに、漫画家、出版社、テレビ局の3者にとっても本当の意味で「ウィン・ウイン・ウィン」の関係性になることは難しい。

民放各局の台所事情を踏まえると今後も、「勝負をかけたゴールデン・プライム帯のドラマはオリジナルを中心に制作し、漫画原作は現状の20%程度に留めていくべき」だろう。また、前述したように「金、人、時間、PRなどの面で厳しい深夜帯は、漫画原作に頼りすぎるくらいなら枠を減らしたほうがいい」のかもしれない。

一方で漫画家や出版社から見たら、「深夜帯ばかりではなくゴールデン・プライム帯でもっとドラマ化してほしい」ことは確かだ。具体的には「20%程度で留めず30~50%くらいにまで増やしてほしい」と思っているのではないか。

もちろんその際は、漫画家、出版社、テレビ局の3者が十分なコミュニケーションを取って、それぞれにメリットがある落としどころを探っていく丁寧な仕事が求められる。とりわけ『セクシー田中さん』がそうだったように、原作漫画が完結していないケースでは細心の注意を払わなければいけないはずだ。

すべての作品が「漫画家が自分のSNSで積極的にドラマのPRをする」ような協力体制を築いていきたいところだろう。