今回のテーマは、「今冬のドラマは“ひとり親”の設定が多くないですか?」と尋ねられたことが発端だった。
実際、『君が心をくれたから』(フジテレビ)の逢原雨(永野芽郁)は母親・霞美(真飛聖)のみで、朝野太陽(山田裕貴)は父親・陽平(遠藤憲一)のみ、『春になったら』(カンテレ・フジ系)の椎名瞳(奈緒)が父親・雅彦(木梨憲武)のみ。
『Eye Love You』(TBS)の本宮侑里(二階堂ふみ)は父親・誠(立川志らく)のみ、『ジャンヌの裁き』(テレビ東京)の越前剛太郎(玉木宏)は2人の子どもを育てるシングルファーザー。
『不適切にもほどがある!』(TBS)の小川一郎(阿部サダヲ)はシングルファーザーで、犬島渚(仲里依紗)はシングルマザー、『厨房のありす』(日本テレビ)の八重森ありす(門脇麦)は父親・心護(大森南朋)のみ。
また、『さよならマエストロ』(TBS)の夏目俊平(西島秀俊)も、妻・志帆(石田ゆり子)が離婚届を突きつけて家を出たという設定で、子ども2人を育てるシングルファーザーのようになっている。
確かに多いのだが、その背景には何かがあるのか。テレビ解説者の木村隆志が探っていく。
「感動」「お涙ちょうだい」の紙一重
制作サイドが「社会的な背景を踏まえて“ひとり親”の実態を描いたドラマを作ろうとしたか」と言えば、ほとんどそうではないだろう。実際、“ひとり親”の子育てにおける苦労や問題、あるいは楽しさを描いたシーンは少なく、それぞれ別のメインテーマが設定されている。実際、冒頭に挙げた中で“ひとり親”をメインテーマに掲げた作品は、余命3カ月の父と3カ月後に結婚予定の娘の関係性を描いた『春になったら』くらいだ。
そもそも深刻化しているのは未婚に伴う少子化であり、逆に“ひとり親”であることは、そのサポートこそ必要である一方、そのこと自体は問題視されていない。「ドラマとして“ひとり親”をメインテーマに据えるほどの時代性は低い」という様子がうかがえる。
では、なぜ制作サイドは“ひとり親”の設定を採用するのか。その理由は、主に人物相関図の単純化にある。親子の関係性を描くとき、2対1より1対1のほうが良くも悪くも両者の結び付きを濃密に見せやすく、喜怒哀楽などの感情が視聴者に伝わりやすい。
例えば、父と娘に確執があった場合、ひとり親ではなく母親もいたら、それが娘にとっての救いになり、不仲のムードが薄れてしまう。また、父母の2人ではなく、父が1人で娘を育ててきたという設定だからこそ、「大変だっただろう」「仲良くなってほしいな」などの視聴者感情を抱かせやすいところがある。
このような“ひとり親”は、今冬に始まった話ではなく、昭和時代から制作サイドが多用してきた設定。病死・事故死などの悲劇や子育ての苦労話につなげやすく、感動を誘える反面、「お涙ちょうだい」と言われ、時代とともに好き嫌いがわかれやすい作風となっていた。