14日、日本テレビが『news zero』のメインキャスター・有働由美子が来年3月いっぱいで卒業し、後任を同局の藤井貴彦アナウンサーが務めることを発表。有働自身も「気づけば現在54歳! 次の新たなことにチャレンジする時は今しかないと考え、このたび快く送り出してくれることになりました」などとコメントした。

有働は2018年3月で27年間過ごしたNHKを退職し、同年10月から同番組のメインキャスターに就任。5年半にわたって番組の顔を務め、常に時間帯トップクラスの視聴率を記録してきた。チャレンジする「次の新たなこと」が気になるところだが、現在の有働は視聴者と業界内でどんな目で見られ、どんなポジションにいるのか。

一方で今年は、2月に武田真一(56歳)、6月に松尾剛(56歳)、9月に武内陶子(58歳)と、人気番組の司会を務めたNHKのベテラン看板アナが相次いで退局している。有働に加えてNHKアナウンサーたちのキャリアについて、テレビ解説者の木村隆志が掘り下げていく。

『news zero』を卒業する有働由美子

『news zero』を卒業する有働由美子

■番組卒業が良いタイミングの理由

有働は14日放送の『news zero』オープニングに、大きな2枚の絆創膏(ばんそうこう)を貼った姿で登場。「階段を踏み外して顔を打ってしまって、お見苦しくて申し訳ございません。忘年会シーズン、みなさんもお気をつけください」と話して頭を下げた。さらにエンディングでは同番組の卒業にも触れつつ、「でもこの顔で言われてもね……ホントに。階段踏み外して顔面が床についちゃったんですよ」とこぼして笑いを誘うことも忘れない。

このような率直さや自虐トークは、『あさイチ』(NHK総合)でたびたび話題になった“脇汗”を筆頭に、NHKのアナウンサー時代からまったく変わらず、有働の人気を支えてきたものだった。「好きなアナウンサーランキング」でも上位の常連であり、かつて若いアナウンサーばかりだったランキングを変えた一人と言われている。

しかし、そんな「率直でウソをつけない人」「最も信頼できる人」というクリーンなイメージが今年、崩れ始めていたのも事実。旧ジャニーズ事務所の創業者・ジャニー喜多川氏による性加害騒動で、月曜キャスターの櫻井翔がなかなかコメントせず、メインの有働も踏み込まなかったことで、批判の矛先が向き始めていた。有働の責任とは言えないのだが、今回の番組卒業に際しても「隠している」「良いキャスターだったのに」などの不満がネット上にあがっている。

旧ジャニーズ事務所の対応とスタッフの方針などに巻き込まれてしまっただけに、このタイミングでの番組卒業は、むしろ有働にとっていいものになるのではないか。もともと有働はNHKの退局時に、「海外での現場取材や、興味ある分野の勉強を自分のペースで時間をかけてしたい」などとジャーナリスト志望のコメントを発していた。

番組卒業によって今後は「これまで報道番組でメインキャスターを務めているからできなかったことを自分のペースで行っていく」ことができる。例えば、日テレに限らず“報道特番におけるスペシャルキャスター”のジョーカー的な存在としての活躍も十分可能だろう。また、動画配信サービスやSNSでの自由な発信も本人次第で実現できるはずだ。

さらに、報道番組のキャスターを卒業することで、かねてから「もう1つの才能」と業界内で評価されていたバラエティ出演を増やすことも可能。有働の所属は、くりぃむしちゅー、マツコ・デラックスらが所属するナチュラルエイトであることも含め、この点も本人の気持ち1つだろう。