ただ、「その強引な編成の印象をいくらか和らげられる」ことが、系列局が制作する理由の1つ。実際、『ミヤネ屋』は読売テレビのある大阪、『ゴゴスマ』はCBCのある名古屋で制作・生放送され、画面から在京キー局の情報番組とは異なるムードを醸し出している。
『ミヤネ屋』は在阪局エリアらしい率直かつにぎやかなムードで、『ゴゴスマ』は在名局らしい牧歌的かつ落ち着いたムードの番組。例えば20日の放送では、『ミヤネ屋』が「羽生結弦が離婚 誹謗中傷・ストーカー被害も告白」「宝塚歌劇団 全劇団員400人から聞き取り」、『ゴゴスマ』が「今季一番の寒気 12月下旬並み寒さ」「全国 今が見頃 紅葉マップ」をトップニュースとして扱っていた。それぞれMCに宮根誠司と石井亮次を起用していることからも、そのムード作りがうかがえる。
スタジオのキャストとセット、演出やコメントなどは、早朝から昼や夕方の情報番組とは異なるものがあり、視聴者に向けた多少の差別化や見やすさにつながっているのではないか。例えば、朝の情報番組を見ながら「このニュースを『ミヤネ屋』や『ゴゴスマ』はどう扱うのか。あのMCやコメンテーターたちは何を言うのか」と思う視聴者はいるはずだ。
もちろん系列局に任せられるレベルの制作力がなければ、この編成は成立しない。実際、系列局は「バラエティの制作力では大きく劣る」と言われている一方で、情報番組のノウハウは十分にあり、在京キー局が勝るとは限らない。さらに「全国放送の帯番組を手がける」ことでスタッフの士気が高く、局内の情報番組と比べられる在京キー局のスタッフよりモチベーションは上がりやすいのもメリットの1つだろう。
■配信視聴の普及で地方局の危機
在京キー局の手がける番組の配信視聴が全国的に広がり、「地方の人々が地元局制作の番組を見る機会が減りやすい状況になった」ことで、系列局は危機感を募らせている。在京キー局にとってもネットワーク全体の活性化は重要なことだけに、「ノウハウのある情報番組を託そう」「バラエティやドラマも含め、もっと系列局にチャンスを」という動きがあるのも確かだ。
とりわけ帯の情報番組は、局内の活性化、芸能事務所や文化人との関係良化、局のブランディングなどのさまざまな点で好影響を得られやすい。『とれたてっ!』を手がけるカンテレにとっては、全国放送が実現されたら読売テレビ、CBCとのし烈な戦いになるが、そこに挑むだけの価値は十分あるということだろう。
最後にもう1つ挙げておきたいのが、午後の情報番組に求められる役割の変化。芸能人の不倫やスポーツ団体の不祥事が相次いだ数年前から、14~15時台の記者会見が定番となっている。事実、今年は旧ジャニーズ事務所関連を筆頭に、何度も記者会見のライブ中継が行われ、高視聴率を獲得するケースも目立った。
現在14~15時台の大半が再放送枠であるフジはその都度、緊急特番を組んで対応したが、やはり連日放送している『ミヤネ屋』『ゴゴスマ』を上回るのは難しい。その点は速報性を重視した『旬感LIVE とれたてっ!』という番組名からもうかがえる。
はたして、同番組の全国レギュラー放送化は実現するのか。もしそうなら『ミヤネ屋』『ゴゴスマ』とどのように差別化していくのか。その試金石となる23日の放送には、多くの業界人が注目しているはずだ。