秋の改編から約1カ月がすぎて、ようやくバラエティの新番組が出そろった。

ゴールデン・プライム帯では、『ジョンソン』(TBS)、『木7◎×部』『オドオド×ハラハラ』(フジテレビ)、がスタート。

それ以外では土曜午前から昼に、『ニッポン人の頭の中』『メシドラ 兼近&真之介のグルメドライブ』(日本テレビ)、『トキタビ』(フジ)、『伊集院光&佐久間宣行の勝手にテレ東批評』(テレビ東京)。

平日23時台では、月曜に『何か“オモシロいコト”ないの?』(フジ)、火曜に『秋山ロケの地図』(テレ東)、水曜に『週刊ナイナイミュージック』(フジ)が放送されている。

これらの新番組にはどんな傾向があるのか。テレビ解説者の木村隆志が掘り下げていく。

  • 『ジョンソン』に出演する(左から)ニューヨーク、かまいたち、見取り図、モグライダー

    『ジョンソン』に出演する(左から)ニューヨーク、かまいたち、見取り図、モグライダー

■「楽しくなければテレビじゃない」「エンタメでもっと明るく!」

まず注目すべきは、今秋の改編キャッチフレーズ。フジは「やっぱり、楽しくなければテレビじゃない」を掲げて、『オドオド×ハラハラ』と『木7◎×部』をスタートさせた。

『オドオド×ハラハラ』は、芸人の持ち味を引き出すことに長けた佐久間宣行プロデューサーが手がけるお笑い純度の高いコーナーをそろえ、『木7◎×部』は芸能人が好きな部活動を立ち上げて楽しむ姿を見せる番組。特に象徴的だったのは後者で、スタジオの出演者たちは常にハイテンションかつ満面の笑みで、拍手などの効果音も多く、『バナナマンのせっかくグルメ!!』(TBS)を彷彿させる明るい演出が見られた。

次にTBSの改編キャッチフレーズは「エンタメでもっと明るく!」で、その象徴として『ジョンソン』をスタート。「芸人の芸人による芸人のための番組」がコンセプトでダウンタウンがメインを務めた『リンカーン』の後継番組であり、初回は芸人59名が集まる運動会で盛り上げた。

両局の3番組に共通しているのは、キャッチフレーズ通りの「楽しい」「明るい」を前面に押し出した構成・演出。近年、若年層がYouTubeやTikTokなどのネットコンテンツに流れ、テレビから離れている理由として指摘されていたのが、この「楽しい」「明るい」ムードの不足だった。

振り返ると2010年代の民放各局は、視聴率低下に悩まされる中、リアルタイム視聴につなげるために生活情報やクイズなどを優先させたバラエティを量産。「楽しい」「明るい」を軽視する形になっていただけに、それを変えなければという意思を感じさせられる。

■バラエティは先行きが見えない状態

その背景として挙げておきたいのが、ここにきてバラエティも配信再生数を無視できなくなってきたこと。TVerの月間再生数が約4億回を記録するなど、放送収入に代わるものとして期待値が高まっていく中、総合番組再生数ランキングの上位はドラマが独占するなど、バラエティは先行きが見えない状態が続いている。

そんな逆境の中でランクインしている数少ないバラエティが、『水曜日のダウンタウン』(TBS)、『アメトーーク!』(テレ朝)、『人志松本の酒のツマミになる話』(フジ)、『ラヴィット!』(TBS)などであり、視聴率が高いとは言えない一方で、「楽しい」「明るい」ムードが支持を集めてきた。

もちろんまだまだ視聴率獲得による放送収入を得ていかなければいかないが、TVerの再生による広告収入だけでなく、自局系動画配信サービスの有料会員増なども含め、配信にも注力していかなければならないのは間違いないところ。だからこそ、これらと同じ「楽しい」「明るい」という属性のバラエティを手がけ始めているのではないか。