一方、フジテレビは昨年6月に就任した港浩一社長のもとで、計画的なタイムテーブルの最適化が進められている。

まず昨秋から今春にかけて『まつもtoなかい』のスタートや『クセスゴ』の枠移動などで土日のタイムテーブルを整え、続いて今秋は平日のゴールデンに着手。「水曜日は知的好奇心」「木曜日はただただ面白く」「火曜日・金曜日は女性が特に楽しめる」と打ち出したことから、枠移動は前後を含めた番組のフローを意識したものであるのは明らかだ。

事実、枠移動によって、水曜は19時台に『世界の何だコレ!?ミステリー』、20時台に『奇跡体験!アンビリバボー』、21時台に『ホンマでっか!?TV』が続く知的好奇心フロー、木曜は20時台に『オドオド×ハラハラ』をスタートさせ、『私のバカせまい史』が続くお笑いフローで連続視聴を狙っている。たとえば今秋以降、お笑い好きな人ほど「木曜夜はフジ」という印象がついていくのかもしれない。

また、注目すべきは『アナザースカイ』が3回目、『モヤモヤさまぁ~ず2』が9回目の移動になること。これは「局を代表する看板番組の1つであり、移動しながらでも続けていきたい」ということだろう。とりわけ2007年春のスタートから9回目となる『モヤモヤさまぁ~ず2』の枠移動は曜日も時間帯もバラバラであり、「移動先で新たなファンを獲得しながら、テレビ東京のカラーを幅広い世代に印象付けていきたい」という狙いが見て取れる。

  • 今秋の改編で枠移動する(上段左から)『出川一茂ホラン☆フシギの会』『朝メシまで。』『楽しく学ぶ!世界動画ニュース』(C)テレビ朝日 (下段左から)『突然ですが占ってもいいですか?』『奇跡体験!アンビリバボー』『ウワサのお客さま』(C)フジテレビ

■「毎週レギュラー放送」が大前提

ただ、「枠移動が増える背景は決して明るいとは言えない」という現実もある。

コンテンツの数が増え、人々の視聴習慣が変わった今、視聴率低下に伴う放送収入ダウンの流れは、もはや止められないだろう。そのためか特にコロナ禍以降は、「打ち切って新番組に入れ替えても視聴率を獲るのは難しい」「お金をかけて立ち上げるリスクより、内容のリニューアルも含め、もう少し可能性を探ろう」というニュアンスの枠移動が目立っている。

以前は活発に行われていた「深夜からのゴールデン・プライム昇格」や「土日午後のパイロット版をレギュラー化」の動きが減っているのも、そんなリスクヘッジの観点があるからではないか。しかし、「枠移動でセカンドチャンスを狙う」は保守的な戦略だけに、劇的な視聴率アップは望みづらいところがある。

また、当然ながら枠移動は「せっかく定着した視聴者を手放してしまう」というリスクが存在する。実際、『ニンチド調査ショー』は視聴率が振るわなかったのも確かだが、枠移動が発表されたとき、「あの時間帯に放送してたからこそ、家族で見られてよかったのに」「内容は19時からに合っている」などの声が少なくなかった。

しかも、同番組は2022年秋のスタートから1年弱で17回しか放送されずに枠移動し、さらにそのほとんどが通常放送の1時間ではなく「2時間SP」。これでは視聴習慣がつくのは難しく、定着するまで待つ余裕がない様子がうかがえる。局内に「どうせ月に1~2度程度の2時間SPで定着できていなかったから枠移動しても大丈夫だろう」という開き直りの空気はないだろうか。

配信や録画での視聴が当たり前になった今、リアルタイムで見てもらい視聴率を得ていくためには、「毎週同じ時間帯で放送する」ことが最低条件のように見える。バラエティは相変わらず「視聴率狙い」のほぼ一択でドラマのように「動画再生でも稼いでいく」という戦略が見えていないだけに、どの番組も枠移動後は毎週レギュラー放送されることを願いたい。