民放各局が今秋の番組改編を発表し、それぞれの戦略が明らかになった。その中で注目を集めているのは、放送時間帯を移動させる“枠移動”の多さ。特にテレビ朝日とフジテレビで大きな動きがあり、終了する番組や新番組と同等レベルの話題となっている。
民放各局でどんな枠移動があり、どんな狙いがあるのか。テレビ解説者の木村隆志が掘り下げていく。
■個人視聴率3冠狙いのテレビ朝日
まずテレビ朝日は、『出川一茂ホラン☆フシギの会』を金曜24時台から火曜19時台に、『家事ヤロウ!!!』を火曜19時台から同20時台に、『朝メシまで。』を土曜24時台から水曜19時台に、『楽しく学ぶ!世界動画ニュース』を土曜22時台から木曜19時台に、『ニンチド調査ショー』を『ザ・ニンチドショー』に改題して木曜19時台から土曜22時台に、『有吉クイズ』を火曜20時台から日曜24時台にそれぞれ移動する。
次にフジテレビは、『突然ですが占ってもいいですか?』を月曜23時台から火曜20時台に、『奇跡体験!アンビリバボー』を木曜20時台から水曜20時台に、『ウワサのお客さま』を金曜21時台から同20時台にそれぞれ枠移動。その他でも、TBSが『クレイジージャーニー』を月曜21時台から同22時台に、日本テレビが『アナザースカイ』を金曜23時台から土曜23時台に、テレビ東京が『モヤモヤさまぁ~ず2』を火曜23時台から土曜11時台などに枠移動する。
枠移動の背景にあるのは、「視聴率が獲れていない」という厳しい現実。もし視聴率が獲れている、すなわち「視聴習慣があるのに移動させる」という策は、「スポンサーの理解を得る」という意味でも考えづらい。では、なぜ番組を終了させて新番組を立ち上げるのではなく、枠移動という策が選ばれているのか。
最大の理由は、各年代の個人視聴率獲得に向けたタイムテーブルの最適化だろう。特にテレビ朝日は昨年度、初めて個人視聴率で全日・プライムの2冠を獲得。残るゴールデンでの個人視聴率アップを狙って、平日19時・20時台の番組を積極的に入れ替えている。
今秋の改編で掲げる“オールターゲット戦略”という方針からも、「他局が狙う若年層やファミリー層だけでなく、高齢層も含めた個人視聴率を上げて3冠を獲ろう」という意図は明白。実際、今秋19時台に枠移動した『出川一茂ホラン☆フシギの会』『朝メシまで。』『楽しく学ぶ!世界動画ニュース』は、もともと若年層やファミリー層より中高年層に受けそうなコンセプトの番組だった。