今月8日、ダウンタウンの松本人志が60歳の誕生日を迎え、祝福の声が集まっている。
松本のX(Twitter)に還暦を祝うコメントが書き込まれたほか、前夜の7日には『ダウンタウンDX』(読売テレビ)で「松本人志 祝還暦SP」を放送。今田耕司、宮川大輔、ケンドーコバヤシら、ゆかりのある芸人が駆けつけ、赤いちゃんちゃんこを着た松本を囲んで盛り上げた。
しかし今年、松本は『人志松本の酒のツマミになる話』(フジテレビ系)で3回も引き際に言及。65歳での引退を宣言して驚かせたが、むしろ近年、民放各局からのオファーは増えた感すらある。コア層(主に13~49歳)の個人視聴率獲得を目指す民放各局は出演者を若返らせたいはずだが、還暦になった松本はなぜこれほど求められているのか。テレビ解説者の木村隆志が掘り下げていく。
■「信じられないぐらいの独占状態」は本当か
約3カ月前、オリエンタルラジオ・中田敦彦が自身のYouTubeチャンネルに「【松本人志氏への提言】審査員という権力」をアップ。『IPPONグランプリ』(フジ)、『人志松本のすべらない話』(同)、『キングオブコント』(TBS)、『M-1グランプリ』(ABCテレビ)、『THE SECOND』(フジ)などの番組名を挙げつつ、すべて松本がトップの座にいることを「他の業界だったら信じられないぐらいの独占状態」と批判した。
松本が大喜利、漫談、コント、漫才とさまざまなジャンルの笑いでトップにいるのは間違いないが、それにはもちろん理由がある。賞レースは松本が権威付けすることで参加者と視聴者の関心を促せるし、『IPPONグランプリ』と『人志松本のすべらない話』は、そもそも松本が芸人たちの活躍できる場を増やすべく企画に関わった番組。これほど発掘から活躍の場まで関わり続けてきたのは松本だけであり、代わりを務められるタレントはいない。
中田が語っていたように「若手を審査する仕事がめっちゃ多い」のは、制作サイドが「松本人志なしではこれらの番組は成立しづらい」と考えているからだろう。もし松本が審査員から退いたら、参加者と視聴者から「もし松本がいたら…」と言われ、開催意義すら問われるかもしれない。
松本は前述した番組以外でも、レギュラー番組の『クレイジージャーニー』(TBS)、『探偵!ナイトスクープ』(ABC)、『まつもtoなかい』(フジ)、特番の『審査委員長・松本人志』(TBS)、『まっちゃんねる』(フジ)、『キングオブコントの会』(TBS)に出演。
さらにダウンタウンとしても、レギュラーの『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』(日テレ)、『ダウンタウンDX』、『水曜日のダウンタウン』(TBS)、特番の『ドリーム東西ネタ合戦』(同)、『お笑いの日』(同)、『お笑いアカデミー賞』(同)、『ダウンタウン vs Z世代 ヤバイ昭和あり?なし?』(日テレ)などに出演している。
こうして見ていくと、TBS、フジ、日テレの3局から求められ続けてきた様子が分かるのではないか。そこでの役割は、MC、審査員、チェアマン、局長、アンバサダーなど肩書きの違いこそあれ、制作サイドに求められているのは、番組の権威付けと笑いを誘うひと言。前者は松本の実績を、後者は松本の技術を頼りにしているが、1人で2つのメリットを生み出せるのだから、オファーが集中しやすいのは当然だろう。