視聴者参加番組がジワジワと減っていった理由は多岐にわたる。まず最大の理由は、「視聴率が獲れないから」に他ならない。実際、前述した『クイズ$ミリオネア』や『99人の壁』、あるいは現在も放送中の『突然ですが占ってもいいですか?』(フジ)が視聴者参加型から芸能人出演型に変わったことがそれを裏付けている。
制作サイドから見ると、視聴者参加型は知名度やビジュアル面で芸能人出演型に劣るほか、笑いどころやドラマ性を作ることが難しく、さらにそれらの理由からスポンサーの理解を得るのが簡単ではない。もちろん視聴者の中にも面白い人がいて、『月曜から夜ふかし』(日テレ)、『笑ってコラえて!』(日テレ)、『サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん』(テレ朝)、『ヒューマングルメンタリー オモウマい店』(中京テレビ・日テレ系)などを見ればそれが分かるだろう。
ただ、これらは視聴者より企画にスポットを当てた番組であり、構成や演出のうまさで笑いどころやドラマ性を引き出してエンタメ性を高めたもの。視聴者から参加者を募り、視聴者にスポットを当てた純粋な視聴者参加番組で、なかなかこうはいかない。
さらに、確認や配慮、誘導や緊急対応などの労力、“素人イジリ”の難しさと炎上の危うさ、情報漏れやネタバレ、個人情報取り扱いなどのリスクが目白押し。出演同意書を書いてもらったのに、「これは避けてほしい」「やっぱり行けません」と言われるケースなども含め、視聴者参加番組に二の足を踏む理由は思いのほか多い。
一方で、00~10年代にかけて「テレビに出たい人が減った」「声をかけても断られてしまう」という人が多く、制作サイドを悩ませた時期が終わった感がある。Instagram、TikTok、YouTubeらで個人発信するのが当たり前になり、それ以外でも「撮られることに慣れた」という人が増えた。その意味では、もちろん内容次第ではあるが、視聴者参加番組のニーズは高まっているのかもしれない。
■時代に合う「主役になれる」番組
事実、そんなニーズの高まりを感じさせられる番組がいくつかある。『新しいカギ』(フジ)は、「学校かくれんぼ」を筆頭に視聴者参加型の企画を連発。学生らから多くの応募を引き出している。また、『クイズ!あなたは小学5年生より賢いの?』(日テレ)も、芸能人だけでなく一般の挑戦者を募集中。昨秋から芸能人に混ぜる形で不定期放送している。
さらに、“番組内の視聴者参加企画”という点で今、最も積極的なのは、平日昼の帯番組『ぽかぽか』(フジ)。「心臓バクバク! ファミリープレッシャー」「懐ぽかぽか! キャリーオーバー」「ふわふわ特技さん」などの視聴者参加企画をそろえ、生放送のスタジオに人々を集めている。
いずれも応募する視聴者自身、「自分が主役になれる」と感じられる企画であり、個人の尊重や自分らしい生き方を問われる時代に合っているのではないか。同時に裏を返せば、制作サイドが「芸能人ばかりの番組」への行き詰まりを感じ始めているのかもしれない。
これらの兆しがあるからこそ、年に一度の特番とはいえ、視聴者参加番組の象徴である『仮装大賞』復活の意義を感じてしまう。「家族や仲間と内容を考え、練習を積んで参加できる」「子どもからお年寄りまで年齢を問わず参加できるし、見て楽しめる」。そんな『仮装大賞』が苦しい時代も放送され続けてきたことで、視聴者参加番組の灯は消えなかったようにも見える。
来年放送の99回を経て100回を数えたとき、視聴者参加番組が増えていたら。その中にゴールデン・プライム帯のレギュラー番組がいくつかあったら、あらためて『仮装大賞』の功績が称えられるだろう。