今秋の番組改編でフジテレビが金曜21時台にドラマ枠を新設し、第1弾としてムロツヨシ主演『うちの弁護士は手がかかる』(仮)が発表された。

ドラマ枠は今春に、テレビ朝日(ABCテレビ制作)の日曜22時、フジ(カンテレ制作)の火曜23時、日本テレビの金曜24時30分に新設されたばかり。さらに1年前の昨春も、フジの水曜22時、テレビ東京の火曜24時30分、TBSの火曜24時58分にドラマ枠が新設され、これ以外でも深夜帯で不定期放送される作品などがある。

この1年あまり急激にドラマ枠が増えている背景にはどんなものがあるのか。また、それは視聴者や業界にとって歓迎すべきことなのか。テレビ解説者の木村隆志が掘り下げていく。

  • ドラマ枠を増やしている民放キー5局

    ドラマ枠を増やしている民放キー5局

■海外を含めた配信収入アップを狙う

ドラマ枠が急増しているのは主に2つの理由がある。それは、「ドラマがスポンサーの求めるコア層(主に13~49歳)に訴求できるコンテンツだから」と「配信収入の大幅なアップを狙っているから」。

配信や録画での視聴が当たり前になった今なお、各局の収入を支えているのはリアルタイム視聴に基づく視聴率であることは変わっていない。「配信での視聴が増えた」といっても現状では放送収入に遠く及ばず、コア層の個人視聴率獲得が求められている。今夏のゴールデン・プライム帯で放送される14作中9作で若い20代俳優が主演を務めることからも、コア層の個人視聴率狙いであることが分かるだろう。

しかし、視聴者の行動傾向を見れば、「リアルタイム視聴する人はますます減り、さらなる放送収入の落ち込みは免れられない」のが現実。配信広告はもちろんのこと、自社系動画配信サービスの有料会員増、Netflixなどを通じた国内外での配信など、配信関連の収入を増やしていかなければ未来は見えてこない。

実際そんな意識を強烈に感じさせられるのは、TBSが主演級俳優をズラリそろえ、約2カ月半のモンゴルロケを敢行した『VIVANT』(毎週日曜21:00~)。冒険活劇というジャンル、タイトルから人物、目的、ゴールまで謎だらけの物語、スケールの大きい映像、外国人俳優の大量起用などは、国内に留まらず海外への配信を強烈に意識したものに見える。

  • 『VIVANT』8月6日放送の第4話より (C)TBS

ただ、そのドラマ枠の急増は、「視聴者と業界にとって歓迎すべきことなのか」と言えば、賛否が分かれるところ。単純に「視聴者の選択肢が増える」と喜ぶ人がいる一方で、「こんなに増やしても見る人が分散するだけ」「数が増えても質が下がったら意味がない」などの否定的な声があるのも事実だ。さらに言えば、「数を絞って予算や人材を集中投下して海外の作品に対抗すべき」などの指摘もある。