テクノロジーが進化し、AIの導入などが現実のものとなった今、「働き方」が様変わりしてきています。終身雇用も崩れ始め、ライフプランに不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
本連載では、法務・税務・起業コンサルタントのプロをはじめとする面々が、副業・複業、転職、起業、海外進出などをテーマに、「新時代の働き方」に関する情報をリレー形式で発信していきます。
今回は、インドネシアのバリ島でデベロッパー事業を、日本では経営戦略・戦術に関するアドバイザーも行っている中島宏明氏が、顧問型金融コンサルタントとして活躍する片山喬太氏にお話を伺いました。
経営者と対等な立場になるために起業
中島宏明(以下、中島)――本日はありがとうございます。片山さんは、保険営業出身ながら、コミッション(保険商品の販売手数料)に依存しない顧問型金融コンサルタントとして多くの経営者やドクターから定評がありますよね。なぜ今のような金融コンサルタントを目指すようになったのか、その経緯を教えてください。
片山喬太氏(以下、片山氏)――起業したのは約4年前で、現在5年目です。最初は人材派遣会社に就職し、その後は保険会社でも働きました。保険会社の後は保険代理店で、法人のお客様が90%という環境でした。保険募集人は、保険商品を売らないと収入が増えない構造なのですが、収入は増えても「イマイチ経営者の役に立てていない」という実感があったのです。立場が低いというか……。
経営者の方にとって、「うちの先生」というと多くは税理士の先生で、なにかと頼りにする存在です。やはり士業が強い。自分は経営者の方の伴走者であるという意識はあったのですが、経営者の方からすると「しょせんは経営の経験や知識のない人」。それで、経営者と対等な立場で話をしたいと考えるようになりました。その考えをもとに、まずは保険代理店として独立したのが起業の経緯です。
中島――なるほど、対等な立場というのは大切ですよね。わざわざ上から目線になる必要はないですが、常にご機嫌を伺うような関係性は長続きしませんし……。片山さんは保険代理店として独立しながらも、「保険は売らない」と宣言していたと伺いましたが、それはどういうことだったのでしょうか?
片山氏――目指していたのは、顧問型の金融コンサルティングサービスの提供でした。保険商品を販売することが目的になってしまうと、本当の意味で経営者の方の役に立つことはできないと考えていたので、そういう宣言をしていたわけです。
起業したとき、すでに税理士の先生とのネットワークはあったので、士業の方々と連携して金融コンサルティングサービスを提供する構想でした。いわゆる保険屋さんは、用事がない限り経営者の方から呼ばれません。そういう関係性ではなく、「なにかあったら、まず相談される」ような立ち位置になりたいと思いました。
そこで、まずは自社で実験をしたんですよ。節税対策にはいろいろな手段がありますが、本当に経営者の方にとって有効なのかを試しました。それで気づいたのが、「資金ロックがキツイな」ということで、流動性・換金性の高い資金が目の前に貯えられることが重要だと感じました。
経営者の方とお話していると、事業に関してはとても詳しいのですが、案外お金に関しては知らないことが多い。「だれも教えてくれないから知らないんだよ」とおっしゃる方もいて、それならお金に関して話せる相手に自分がなろうと思ったのです。税理士の先生は、税務の専門家であって財務は専門ではない。それなら、税理士の先生とも連携して仕事ができるので、チームで仕事をするイメージですね。
中島――どんなお客さんが多いのですか?
片山氏――最初は小規模の会社さんや個人事業主の方がお客様でした。成果が出るとご紹介していただくことが増え、段々と顧問先の事業規模が大きくなって、今は医療法人や上場企業のお客様もいらっしゃいます。顧問先は120社を超えました。
中島――それは理想的な拡大の仕方ですね。やはり口コミで徐々に広がっていくのが持続性からも良いと思います。