民泊を巡るトラブル事例その3

違法な民泊運営を続け、上場会社が書類送検に

無許可の民泊ビジネスを繰り返した結果、上場会社が旅館業法違反の疑いで書類送検された事例もあります。

2016年7月、ジャスダックに上場するA社は、その子会社による旅館業法違反(無許可の民泊営業)の疑いで、A社とA社の代表取締役らが、東京地方検察庁に書類送検されたことを発表しました。報道によると、子会社の社長は「許可を取ろうとしても取れないと思っていた」と供述。保健所が書面などで営業をやめるよう注意したものの、従わなかったといいます。

■トラブル回避の対応策

個人の副業・兼業であれ、会社の事業であれ、民泊は必ず適法に営まなければなりません。旅館業法の許可要件は厳しく、取ろうとしても取れないこともありますが、だからといって違法営業が是認されるわけではありません。なお、2018年6月15日から施行される住宅宿泊事業法(民泊新法)では、消防用設備の設置など、一定の条件を満たして届出書を提出すれば、旅館業法の許可を受けなくても民泊を営むことが可能になります。旅館業法に違反しないように同法の許可を取るか、民泊新法の届け出をして、適法な民泊を営むようにしましょう。

民泊の「利用」を巡るトラブル

違法営業が問題となる民泊ですが、その「利用」を巡るトラブルは、意外と多くありません。その理由として、民泊仲介サイトには提供者(一般的にホストという)と施設のレビュー評価が掲載されており、利用者は「口コミ」でサービスの質の良し悪しを判断できる点や、民泊仲介サイトにはトラブル解決のための仲裁機能が備わっていることなどがあげられます。

質の悪い民泊は、利用者からの厳しいレビュー評価や仲介サイト上のトラブル履歴などにより排除される――。そんなマーケットメカニズムが民泊人気を支えているのかもしれません。

とはいえ、できれば違法民泊ではなく、適法な民泊施設に滞在したいもの。次回は、違法民泊の見分け方を解説します。

※写真と本文は関係ありません

筆者プロフィール: 石井くるみ

早稲田大学政治経済学部卒業。代表行政書士・宅地建物取引士。日本橋くるみ行政書士事務所代表。不動産ビジネスに関する許認可とコンサルティングを専門とする。民泊・旅館業に関する講演・セミナーの実績多数。主な著書に「民泊のすべて」(大成出版社)、共著に「行政書士の業務展開」(成文堂)など。