――日曜朝の「めざましテレビ×ぽかぽか」から、皆さんが「最後にダンスがある」と不安を吐露されていたので、相当なプレッシャーをずっと抱えながら生放送を走り続けているのが伝わってきました。
自分がミスることで高校生たちに迷惑をかけたくないという思いが強かったんだと思います。約24時間生放送に出演し続けた状態で踊るなんて経験をしたことがないから、どんなに準備しても本番で迷惑をかけてしまう可能性をずっと感じながらやってくださっていたので。
――長田さんがパフォーマンス後に自分のミスを話して涙されている姿も、本当に意外でした。このように「カギダンススタジアム」は、カギメンバーの知らない顔がたくさん見られましたが、田中さんは事前の取材で、この企画に込めたのは、演者さんと高校生が一緒に作り上げるものと、「学校かくれんぼ」が1日のロケで終わってしまうのに対して、長期間にわたるものをやりたいとおっしゃっていました。それは、ご自身が企画されて半年で終了してしまった『BACK TO SCHOOL!』でやりたかったことだと思うのですが、今回そのリベンジを果たせた思いはありますか?
本当に個人的な話になってしまいますが、「報われたな」という思いがあります。やりたいことは当時から変わってないんですけど、今振り返ってみると、『BACK TO SCHOOL!』は伝えたいことに正面突破しすぎたという反省があるんです。
最初にお話しした平野さんの番組もそうなんですが、『せっかくグルメ』は「グルメ」という見ることのきっかけと、その奥に制作者の伝えたいものがあると思っていて、『BACK TO SCHOOL!』には、そのきっかけがなかった。だから今回の「カギダンススタジアム」は、ダンスの賞レースという部分に見せる動機をつけた上で、『BACK TO SCHOOL!』でやりたかったドキュメント性を描けたし、結果もついてきてくれたと思っているので、個人的な反省を落とし込めたなと思っています。
――感動がありつつも、やっぱりカギメンバーらしい笑いがあって、改めて『新しいカギ』らしい、27時間のフィナーレにふさわしい企画だったと思います。
これは本当に、演者様々ですね。
――KEYTALKさんが歌う『新しいカギ』のテーマ曲は「MONSTER DANCE」と、図らずも「ダンス」がタイトルに入っているわけですが、これは番組の立ち上げ時に田中さんが選曲したと伺いました。
ひとつは『新しいカギ』と「KEYTALK」の「キー」つながりだったんですが、もうひとつはめちゃくちゃ個人的な話で。僕はずっとバンドをやっていたんですが、高校1年の時に、別の学校にいた2個上の首藤さんのthe cabsというバンドのライブを見たことがあるんです。でも、その後に見たKEYTALKは、the cabsの魅力を残しながらも、マスに向けたシステムを付けて、全然違う音楽をやっていたんです。
そこで、さっきの『BACK TO SCHOOL!』の話につながるんですが、自分のやりたいことをマスに伝えるためのフックを作るという、もの作りをする人間としての同じような苦しみを勝手に想像して、マスに向いている「MONSTER DANCE」という曲を番組のメインテーマに立てたら、聴くたびに自分の方向性を正してくれるんじゃないかと思って使わせてもらっています。
――その曲を『27時間テレビ』のオープニングとしてKEYTALKさんが生披露されて、放送4日後に活動休止を発表されました。『27時間テレビ』までは…という思いがあったのかもしれないですね。
そうだとしたら、本当にありがたいです。最後の最後まで、「ブラスバンドの高校生を巻き込んでいるんだから、出なきゃな」と話し合いがあったとも聞いているので。
若い世代に「テレビ面白いぜ」と伝えられた
――27時間を振り返ってみて、カギメンバーの皆さんに助けられた場面を挙げると、どんなところがありましたか?
基本的にはほとんど助けられたというか、演者さんあっての27時間でした。今年の『27時間テレビ』を評価していただけたのは、7人のドキュメント性だと思うんです。あの7人の魅力は、これまでのTVスター像とはちょっと違う気がしていて。圧倒的で破壊的なカリスマ性のある人がこれまでのTVスターだったと思うのですが、カギメンバーはロケに行くといつも“隅っこの人”にも優しいんです。上だけで盛り上がらず、全員に目を向けていて、その気配が今回出た気がします。若者に向けて、「見せてやるよ、俺らおもろいだろ?」じゃなくて、「一緒に作ろうぜ!」っていう姿勢が随所に感じられたので、そこが良かったです。
――高校生が参加する企画というのは、例えばタレントさんよりも丁寧な誘導や説明などが必要になったりして、通常よりも手間がかかると思うんです。それを、27時間の中でやるというのは、とても大変だったのではないかと想像しますが、いかがでしたか?
そこがカギメンバーにいちばん助けられたところだと思います。実は、僕らが演出をかけた部分は、通常の『27時間テレビ』より少ない気がしていて。「こういうのが面白いだろう」という演出はそんなにかけず、わりとドキュメントなんです。「学校かくれんぼ」ひとつとっても、高校生とカギメンバーが戦うという構造しか僕らは作っていないですから。ただ一般の方なんで、全部が全部撮れ高にならないという点で例年より不安があったかもしれないですが、そこをカギメンバーが丁寧に拾い上げて笑いにしてくれたので、めちゃくちゃ助けられました。
――生放送の最後に、せいやさんが「テレビ最高~!」とおっしゃっていましたが、田中さんの思いは。
いや、もう最高でしたね。本当にそこをスローガンにやってきて、若い子に向けて「テレビ面白いぜ」というのを伝えたかったので、X(Twitter)のトレンドに入って、ちょっとウルッときました。
――生放送が終わって軽い打ち上げだったと思いますが、そこでのカギメンバーの皆さんの様子はいかがでしたか?
本番が終わって、それぞれ高校生たちとお話をしているので、打ち上げ会場になかなかいらっしゃらなくて(笑)。でも、皆さん「やり切った」という満足の表情でしたね。それと、「ダンスは大変だった」とずっと言っていました(笑)
――今回、事前に立てた目標値というのはあったのですか?
番組として具体的に立ててはいなかったのですが、僕と杉野の中で、土日ゴールデン帯のコア(男女13~49歳)視聴率の数字は、去年を超えたいという目標がありました。それは去年に対するライバル心ではなくて、『27時間テレビ』は去年4年ぶりに復活してとても評価されましたし、去年を見て面白いと思って今年も見てくれるお客さんが絶対いると思うので、そういう意味でも上回らないと、去年のメインのスタッフにも失礼だという話をしていました。だから、そこはクリアできて良かったなと思います(※)。
(※)…昨年のコア視聴率は、土曜(19:00-22:00)6.8%、日曜(18:30-21:54)7.8%。今年は、土曜(19:00-23:25)7.4%、日曜(18:30-21:54)7.8%。ビデオリサーチ調べ・関東地区。
――『27時間テレビ』という大きな仕事を終えて、『新しいカギ』の“第二章”が走り出していますが、今後の展望はいかがでしょうか。
やはりここからつなげていくことが、いちばん大事だと思います。『27時間テレビ』で知っていただいたことを、『新しいカギ』のレギュラーにちゃんと還元できて、フジテレビの安定的な鉄板のソフトにすることが、僕のいちばんの仕事だと思うので、そこが目標です。
――先ほどゆりかもめの台場駅を降りたら、『お台場冒険王』の『新しいカギ』ブースで買ったグッズを持っている子どもたちがたくさんいて、驚きました。
そういうのは、めちゃくちゃうれしいですね。