――テーマにもよると思いますが、再現ドラマを1本作るのにどれくらいの期間がかかるものなのですか?
慎重に慎重に腫れ物に触るように作るものもあれば、一気にポンってできるものもあるのですが、「赤木ファイル」(※「森友学園問題… 赤木ファイル! 命をかけた375日間」24年1月9日放送)は、前の年の9月頃にやろうと思って、亡くなった赤木俊夫さんの奥様の雅子さんにアポイントを取って取材を始めました。
――「赤木ファイル」はギャラクシー賞の月間賞も受賞するなど、大きな反響になりました。
これは、何より雅子さんが喜んでくれました。「主人が一番喜んでいると思います。1人で死んでいった悪い人みたいに、何も知らない人もいたと思うので、あの苦しみが伝わって良かったです」と言ってくれて、これが一番うれしかったですね。
――あの回では、坂本龍一さんの曲をたくさん使っていたのが印象的なのですが、どのような狙いがあったのですか?
亡くなった赤木さんが坂本龍一さんを好きだったんです。雅子さんによると坂本龍一さんの考え方まで好きだったとおっしゃっていたので、それで曲を使わせてもらいました。
――関係者の方に寄り添って取材されていることが分かります。
こういうVTRは、一時的なお付き合いの気持ちでは作れないです。だから、放送後も雅子さんと連絡を取って食事をすることもあります。過去の例でいうと、 (9歳で殺害された)ジョンベネちゃんのお父さん、(北朝鮮拉致被害者の)曽我ひとみさんとも放送後にお付き合いがあります。
テレビで放送されるということは、自分をさらけ出す覚悟があってやっているのに、顔も出さない僕らが、ちゃちゃっと話を聞いて作るのは違うと思って、放送が終わった後もお付き合いするようにしています。そうすると、またいざとなったときに取材に協力してもらえることもありますから。
――やはり「赤木ファイル」を作るときは、タブーに挑むという意識がありましたか?
それはないですね。でも、放送に値するポイントを精査していく作業を報道の政治部の方と慎重にやりました。そこに時間がかかりますね。「偏向報道」と言われてしまうと、もうアウトなので。
ニュースに触れない子どもたちから大きな反響
――最近は「赤木ファイル」のほかにも「統一教会」など、“今の問題”に切り込んだテーマを積極的に扱っている印象を受けます。そこはやはり意識されているのでしょうか?
『仰天』って思いのほか子どもやティーンが見ているんです。でもあれだけ大きなニュースになった「赤木ファイル」も「統一教会」も、彼らにとってはほとんど“はじめまして”という感じなんですよ。ニュースに触れていないから。
――ネットニュースでもリコメンドされないんでしょうね。
だからニュース番組を見ないのであれば、子どもたちが見ている『仰天』の中で噛み砕いてやったほうがいいんじゃないかと思って、そこは強く意識しています。実は「赤木ファイル」の回は、ティーンもF1(女性20~34歳)もものすごく数字が高くて、子どもたちからのリアクションもすごかったんです。
――子どもに見てもらえるように、工夫している部分はあるのですか?
僕が子どもだった頃、親に隠れて見ていた番組があります。『11PM』(日本テレビ)もそうですが、『ウィークエンダー』(同)は、殺人事件に絡めてちょっとエッチな再現ドラマをよくやっていて、それを夜の10時からどうやって見ようかと画策していたんです。子どもって大人が何かいけないことをやっているのを見たいという気持ちが強くあると思うんです。それがお堅いニュースや文字になると面倒くさくて見ないけど、ドラマ化されると分かりやすいじゃないですか。だから、難しい内容を子どもに媚びずに作っても、ちゃんとついてきてくれるんです。
――その反応は、やはり驚きでしたか?
最初は驚きでしたけど、「なんでだろう?」と考えているうちに、自分もそうだったなと思い出しましたね。