――それが『ナカイの窓』ですか?

そうです。中居さんがすごいから勉強になりましたね。台本がなくなっていく感じでしたね。

――収録の空気で流れをどんどん変えていくということですか?

台本はディレクターと作家さんで一生懸命作るんですが、中居さんが収録が始まったら全て無視します。ご本人も毎回「台本は読んでいない」って言ってて、全然想定していない、絡みが始まります。で、「もうどうなるんだろ?」とドキドキしていたら、いきなり台本の展開に戻ります(笑)

面白い展開が撮れたら、台本に戻る。真意は分からないですが、おそらく中居さんは台本をめちゃくちゃ読み込んでいて、何度もシミュレーションしてるんじゃないかなと想像していました。これは千鳥さんや加地さんにも似ていて、あくまで台本は想定で現場で一番盛り上がった瞬間から展開していく。やってみないと分からないその「生感」を大切にしているんだと思います。だから僕も台本は時間をかけて作りますが、現場ではそこまで決めきらず、あくまで想定だと思って、その場でどうしたらいいかずっと考えて収録しています。

テレ朝の面接で「お笑いやりたい」ってめっちゃ言いました

――その後、テレ朝に中途採用で入ったんですね。

主にバラエティをつくる第1制作部では2人だけ受かって、僕が入ったのが『ロンドンハーツ』、めっちゃうれしかったですよ。「やっと来た」みたいな。当時部長だった藤井(智久)さんにも面接で恥ずかしげもなく「お笑いやりたい」ってめっちゃ言いましたから。中途採用で30(歳)超えて、そんなアホいないじゃないですか。それで選んでくれたんだと思います。36歳の頃でしたね。

――『ロンハー』に入ってみていかがでしたか?

忘れもしないですけど、最初に会議室のドアを開けたときは怖かったですね。加地さんをはじめとして、(放送作家の)そーたにさんとか高須(光聖)さんとか、レジェンドクラスの方たちばっかりだったんで。ほんまに「王下七武海」みたいに見えました(笑)

――加地さんと接した印象は?

めっちゃ優しかったですね。僕は最初、契約社員として入って何年かのリミットがあったんですよ。だから必死でした。会議が終わると加地さんの前に行列ができるんですよ。みんなチェックしてほしいから。僕は呼ばれてもないのにその最後にいつもいて、企画書を見てもらっていました。

加地さんは、言い方は優しいんですけど、その企画の欠点をボロクソに言ってくださるんです。ドMの発想ですけど、それが何か気持ちよくて、笑けてくるんです。黒川さんは僕の1つ上で友達みたいな感じなんですけど、若い軍団で頑張ろうみたいな感じで自由にやらせてくれたんで、自力もつきましたが、教えてくれるみたいな感じじゃなかった。だから、初めての「師匠」みたいな感じで勉強させてもらいました。「編集のテンポが速すぎてドライすぎる」とか言われて、芸人さんの面白さを損なわない編集のやり方も教わりました。

  • 加地倫三エグゼクティブプロデューサー

――それで3年が過ぎて無事、正式に社員になれたんですね。

僕、カンペ出すのが比較的、上手いんですよ(笑)。加地さんが演出をする番組って他のディレクターはビビってなかなかカンペを出せないんです。僕はクビになる危機感があったから必死だし、報道をやっていたからかもしれないですけど、ここっていう瞬間が分かるから、出していた。それで加地さんが気に入ってくれたのかもしれないです。3年目が終わる頃に、3階の廊下で「お前がいないと俺が困るからな」って言ってくれて、立ち去っていく背中は今も鮮明に覚えています(笑)