• 千鳥の大悟(左)とノブ

――千鳥さんとは『チャンスの時間』(ABEMA)もやられてますけど、『テレビ千鳥』(テレビ朝日)との差別化みたいなことと考えますか?

『チャンスの時間』はこの春で5年目に突入する結構長くやってる番組で。『テレビ千鳥』のほうが後から始まってるんで『テレビ千鳥』を意識するという感覚は、最初はなかったんですけど、あっという間に人気番組になったので、作家さんから上がってくる企画で『テレビ千鳥』っぽいものは排除してるっていうのはありますね。2人がロケに出ちゃうとそれっぽく見えるから、似たような画にならないようにとか。でもそれくらいです。

そういう意味で衝撃的だったのは『相席食堂』(ABCテレビ)。千鳥にVTRを見せる企画ができなくなるんじゃないかって思うくらい、千鳥にぴったりのシステムですよね。『テレビ千鳥』は大悟さん主導で進行する企画が多いですけど、『チャンスの時間』は、企画の主導は女子アナ、つまり番組側が握っていて、2人のどっちかが乗っかるっていう形。どっちでも行けるように広く構えてるって感じですね。

――千鳥さんのすごさは、どういうところで感じますか?

企画を自分のたちの笑いに持っていく能力と、その幅の広さですね。これはいろんな芸人さんとやっていくと分かるんですけど、これだけ何の企画でもできちゃうコンビって数少ないんですよ。『テレビ千鳥』のようにボケ回しもできるし、もちろんノブさんが普通に進行することもできる。VTR見ても、ロケしても面白い、若手をイジることもできる。自分たちでちゃんと大喜利もできるし、バカになることもできる。総合バラエティをやる上で企画の幅がめちゃくちゃ広いっていうのは最強ですよね。そんなに全方向できる人ってなかなかいないんですよ。しかも、ちゃんと千鳥のお笑いになってる。

ネタを口づてで作っているっていうじゃないですか。そんな風に2人が漫才をやって楽しんでいる感じのやり取りがそのまま平場でできる。台本に書いてボケてツッコんでっていう感じじゃない。そのまま番組になってるっていうのが一番強いんじゃないかと思います。

■テレビは「少し堅く守りに入っている感じ」

――地上波とABEMAを両方やられていて、違いというのは感じますか?

感じますね。ABEMAは歴史がない分、切り拓いていく、エンタテイメントとして面白いものを作りたいんだっていう気概をすごく感じるし、若いスタッフも楽しんで作ってると思います。テレビは万人が見るという責任があるから、今は少し堅く守りに入っている感じはしますけどね。

――そういう中で、そのテレビの役割はどういうものだと思いますか?

テレビ局員ではないので、あんまり考えたことはないんですけど、やっぱり新しいカルチャーを作っていくっていうことじゃないですか。『M-1(グランプリ)』(ABCテレビ)とかはまさにそう。出てる人の人生も変わるし、観ている人も毎年一緒になって楽しめる。そういう庶民の娯楽と、その時代の文化を引っ張っていくコンテンツを作るのが役割なのかなと。

誰かがすでにやっていることに寄せていくんじゃなくて、テレビ側がカルチャーを生むんだよっていうのを頭に置いて、自分も楽しみながら作っていければなと思います。テレビ番組作るのって、本当にめちゃくちゃ楽しいですからね。

――ご自身が影響を受けた番組は何ですか?

この業界に入る前、学生の頃で言えば、『夢で逢えたら』(フジテレビ)ですね。最初、23時台じゃなくて深夜2時くらいにやってたはずで、リアルタイムで見たいけど見れないから、翌日それを友達がカセットテープに録音してきてて授業中にウォークマンで隠れて聴くという(笑)。もちろん映像は見れないから、音だけで聴いて笑ってる。それくらい好きでした。

業界入ってからは『水曜どうでしょう』(北海道テレビ)。たまたま同録(ビデオ)が会社にあったんですよ。ウワサには聞いてたんですけど、最初に見たときは衝撃でした。予算がないからピンマイクがない。それで大泉洋さんがカメラから離れたときにディレクターに「俺の声拾えてるのか?」って言うと藤村(忠寿)Dが「拾えてねえよ」って(笑)。「じゃあ、どうするんだよ」「お前がでけー声出せ」って。それってもう衝撃でしたね。しかもそのやりとりがめちゃくちゃ面白い。ピンマイクをつけてロケするのが当たり前なんだけど、カメラマイクしかないから遠くに離れた場合は大きな声を出す。そのとき、お金のない制作会社にいたから、それでいいんだってひっくり返りました。お金がなくても面白くできるんだなって。

あと、それとは真逆の『めちゃイケ(めちゃ×2イケてるッ!)』(フジテレビ)の「オファーシリーズ」のようなテレビが本気を出してる長編ものの編集は、こすり切れるほど見ましたね。

――いろいろお話を聞かせていただき、ありがとうございました。最後に、気になっている“テレビ屋”をお伺いしたいのですが…

『水曜日のダウンタウン』で「おぼん・こぼん」シリーズのディレクターだった池田哲也さんです。仙台の番組を一緒にやったことがあって、ロケをいかに早く終わらせて最終の新幹線まで飲むというのをいつもやってたんですけど(笑)、今一番忙しいんじゃないかと思うくらい脂が乗ってるし、おぼん・こぼんさん以外でも『さんまのお笑い向上委員会』とかフジテレビの番組もいろいろやっていると思うので、これからさらに注目されてカリスマになってほしいなと思いますね。

  • 次回の“テレビ屋”は…
  • 『さんまのお笑い向上委員会』『水曜日のダウンタウン』池田哲也氏