注目を集めるテレビ番組のディレクター、プロデューサー、放送作家、脚本家たちを、プロフェッショナルとしての尊敬の念を込めて“テレビ屋”と呼び、作り手の素顔を通して、番組の面白さを探っていく連載インタビュー「テレビ屋の声」。今回の“テレビ屋”は、『7つの海を楽しもう!世界さまぁ~リゾート』『櫻井・有吉THE夜会』(TBS)などを手がける水野達也氏(ジーヤマ取締役)だ。
さまぁ~ずとは2007年にスタートした『神さまぁ~ず』シリーズ(TBS)からの付き合いで、YouTube『さまぁ~ずチャンネル』も一緒に立ち上げた同氏。「その先に笑いがあるならNGがない」という2人の魅力、そしてYouTubeを作ってからこそ分かったテレビの可能性も語ってくれた――。
■スタッフには優しかった細木数子さん
――当連載に前回登場した『SASUKE』の乾雅人さんが、水野さんについて「有吉(弘行)さんと櫻井(翔)くんの『究極バトル“ゼウス”』という番組でご一緒したことがあったんですけど、素晴らしいディレクターです。有名なバラエティをいっぱいやっていて、ジーヤマの取締役でもいらっしゃるんですけど、ディレクターとして話を聞いてみたいですね」とおっしゃっていました。
いやいや恥ずかしいです(笑)。乾さんの番組は特殊なので、『ゼウス』以降でお仕事は一緒にしてないんですが、事あるごとにプライベートでお会いして、「そり立つ壁、登らせてくださいよ」とか言ってます(笑)
――これまで、どんな番組をご担当されてきたのですか?
この前亡くなられた細木数子さんの『ズバリ言うわよ!』(TBS)で特番のときはチーフADだったんですが、レギュラーになって坂田(栄治、総合演出)さんにディレクターにしてもらい、同時に『世界一受けたい授業』(日本テレビ)でも福士(睦、総合演出)さんにディレクターにしてもらいました。だから、僕の中には坂田・福士イズムがあるんです。
――『ズバリ言うわよ!』は、当時すごい勢いでしたよね。
細木さんは「地獄に落ちるわよ」といったワードが結構フィーチャーされていましたが、普段、僕らにはめちゃくちゃ優しい人でしたよ。よく食べる人がとにかく好きで、細木さんとご飯に行くと坂田さんと2人で吐くほどご飯食べてました(笑)
――坂田さんに前取材したとき、「言葉の力が強くて気持ちもこもってるので、発言がズドンと来て流れない」という点で、細木さんとマツコ・デラックスさんに似ているところがあるとおっしゃっていました。
たしかにそうですね。でも、マツコさんは結構命がけで身を削ってテレビと向き合ってますよね。『有田とマツコと男と女』(TBS)を少しお手伝いしてたんですが、そんな感じがしました。
――細木さんはスパッとテレビをやめられましたもんね。そこからどんな番組をやっていったのですか?
『ズバリ言うわよ!』をやってるときに、新しくさまぁ~ずの深夜番組が始まることになるんですけど、坂田さんが「細木さんの番組は大丈夫だから、そっちに専念していいよ」と言ってくれて、『ズバリ言うわよ!』には籍だけ置かせてもらい、『神さまぁ~ず』という番組で初めて演出をやるんです。なかなかそんなこと言ってくれる人いないんですけど、坂田さんはちょっと変わってて(笑)、「やるからにはちゃんとやれよ」と。そこで初めてさまぁ~ずと出会ったんです。
■「オチなくてもいいじゃん」で始められる
――『神さまぁ~ず』はどのように立ち上がったのですか?
僕、生意気だったんでADの頃からいろいろ企画書書いてて、それが引っかかって「やってみないか?」となったんです。
――企画書にさまぁ~ずさんでやりたいと書いてあったのですか?
本当のことを言うと、最初は今田耕司さんで企画書を書いてました(笑)。その頃のさまぁ~ずって、『モヤさま』(テレビ東京)とか『怪しいホール貸しちゃうのかよ!!』(テレビ朝日)とかやってて「深夜の帝王」と言われていた時代だから、一緒にやれたら面白いなと思って。
――『神さまぁ~ず』はいろいろな企画がありましたが、印象に残るものは何ですか?
「ジェントルマンNO.1決定戦」ですね。水着の女性をコース上に並べて、ジェントルマンだから少しでも体に触れたらアウトっていう企画です(笑)。有吉さんがジャッジして、今じゃできないですけど、バカバカしいし面白いし、ちゃんと成立してたし、よくできた企画だなと(笑)
あとは、ブラマヨの吉田(敬)さんの誕生日会で、延々とイスを引いて転ばせるっていうのも好きですね。今のテレビじゃ、ケガするからダメだって言われるような企画ですけど(笑)
――まさに“痛みを伴う笑い”ですね(笑)
でも、吉田さんの返しが全部めちゃくちゃ面白かったんですよ。もう現場で本当に偏頭痛になるかと思うくらい笑ってましたね。
――そこから今に至るまで、さまぁ~ずさんとのお付き合いが続いていますが、魅力はどんなところですか?
もう10年以上付き合ってるから分かんなくなってきちゃいましたけど(笑)、あの2人に文句言う人ってほとんどいないんですよね。いい人だし、気をつかってくれるし、お笑いに対してストイックだし、ブレないところはブレないし、その分ものすごい大変だろうなと思います。
――放送作家の北本かつらさんが、「東京風の白黒はっきりさせない優しさがある」という言い方をされていました。
それはあるかもしれないですね。僕が感じたのは、「企画上、オチなくてもいいじゃん」って始められる2人なんですよ。例えば、関西の芸人さんとかだったらフリがあってオチがあってという1パッケージがあるんですけど、そういうのを明確に決めておかなくていいって言うんです。だから、ワ―って盛り上がって終わるんじゃなくて、「じゃあ、ここで終わりだから」って締めちゃって、「こんな終わり方するんですか!?」「渋すぎるでしょ!」ってみんなで笑って終わるという、あの感じがさまぁ~ずだなあと思いますね。