――ここ数年特番で放送されてきた『V6の愛なんだ』には、和田さんはスケジュールなどの都合で参加できなかったんですよね。今回は『学校へ行こう!』というタイトルになって久々に参加されています。

レギュラー当時の放送から名物企画だった「6人旅」を担当してるんですけど、これを縦軸としてやらせてもらうことになったので、放送に向けてワクワクしてます。今回の「6人旅」は、すべての演出をV6が知らないというのを貫いていて、行き先だけが書いてある旅のしおりがそのまま台本になっている感じなんです。那須塩原と日光の旅なんですけど、行く先々でただ旅を楽しんでもらう中で、過去の出演者と出会ったりみたいなサプライズも用意したり、他にもV6が驚く演出を数々仕掛けてまして。ちょうどコンサート真っ最中でもあるし、1日だけの旅だったんですけど、その中でかなり濃密な体験をしてくれたと思います。

――和田さんとしては、どんな気持ちでロケに参加されていたのですか?

僕らの演出にV6がリアクションしているというところも素敵なんですけど、本当にただ6人がキャッキャキャッキャ笑いながら車で移動してる姿を見るだけで、僕ら昔からやってるスタッフは、涙腺にガンガンするような感じで、勝手にめちゃくちゃエモくなってきちゃったんですよね。この6人がそろってロケに行くというのは、これが最後になるのかな…とか思って。最初はあんまりそういうのを考えてなくて、ケタケタ笑いながらロケしてたんですけど、終盤のラスト1時間くらいになったときに、ふっと思っちゃったんですよね。こんないいロケを任せてもらって、本当にTBSには感謝ですし、ロケ中に貴重な尊い仕事をしてるなという感覚になりました。

――V6さんの解散ということで最後の『学校へ行こう!』は生放送ですが、心境はいかがですか?

これは実際に会議でも言ってるんですけど、僕は視聴率はどうでもいいと思ってるんです。もちろんディレクターは視聴率に絶対向き合わなきゃいけないんですけど、今回は局員の方に任せようと思っていて(笑)。ウエットな言い方はメンバーも嫌がるので嫌なんですけど、僕の今の心境は、自分の制作人生の中で一番足を向けて寝られない『学校へ行こう!』の名前で復活するので、とにかく最高なものにしたい。V6もスターの人たちなので、全部が100%ノッてる仕事ばかりじゃないと思うんですけど、この『学校へ行こう!』に関してだけは、めちゃくちゃ気持ちよく終わってほしいんですよ。

僕、仕事を受けるのに4つルールがあって、1つ目はめちゃくちゃ自分がやりたい企画。2つ目は演者が死ぬほど得して楽しい企画。3つ目が演者のことを好きな人が死ぬほど喜ぶ企画。4つ目が死ぬほど金が儲かる仕事(笑)。この4つの条件のうち1つも当てはまらなかったら受けまいと思ってるんですけど、今回は3つも入ってるんです。だから、ディレクターとしてこれをやりたいんだっていうのを6人にぶつけて、6人が絶対得をする、6人にとってめちゃくちゃいい時間になって、それを見る6人を好きな人たちが死ぬほど喜ぶという番組を悔いなくやりたいなと思いますね。あとはTBSが死ぬほどお金をくれたら最高なんですけど(笑)

――よくバラエティの最終回は寂しく終わっていくと言われますが、最近あった『マツコ&有吉 怒り新党』(テレビ朝日)のように、こうやって盛大にフィナーレを迎えられるというのは喜びもありますよね。

そうですね。相当な打ち上げ花火になると思います。今回の「6人旅」は、今までのものとはだいぶ編集方針も趣向も違うんですけど、今撮れる6人が撮れてるんじゃないかなと思います。

――V6さん以外でも、KAT-TUNさんやSexy Zoneさんの番組をやったり、Snow Manさんも特典映像を担当して、ジャニーズさんとのお仕事が多いですよね。

そうなんです。でも、僕『BAZOOKA!!!』とか、徳井さんと『チャックおろさせて~や』とか、FANZAでも『カチコチTV』とか、えげつない下ネタの番組をやってるので、ジャニーズ事務所の運営にそれがバレてないのかな?とか思って(笑)

――そこを超えての信頼があるのではないでしょうか。

どこのグループの誰とは言いませんが、たまにエロ番組を「見たよ―」とか言ってくれる人がいるから、ヒヤヒヤしてます(笑)

■民放にはできない配信番組の魅力

――これまで多くのテレビ番組を制作してきた一方で、最近は『ドキュメンタル』をはじめ、配信の番組をたくさん手がけられていますよね。

最近は民放には申し訳ないんですが、企画のプレゼンを含めて仕事の比率は民放2に対して、AmazonとかNetflixの配信が8くらいですね。ある時、Amazonから企画を考える上での条件を2つ言われて。1つは『ドキュメンタル』みたいな加入者が一気に入ってくる大型企画で、話題になるというパターン。もう1つは、『有田と週刊プロレスと』のような、全員が知ってる内容じゃないけど、ファンが見たらきっちり面白くて、ちゃんと反応してくれるパターン。現にそういう狭いところに投げる番組が増えていて、つまり視聴率的なことで考えてないんです。民放はどうしても「それじゃ数字取れないじゃん」というのがベースにあるから、それで考えなくていいんだという驚きがありましたね。

でもそこから、コンテンツのトレンドで、ちょっと“いたちごっこ”現象が起きてて…。つまり、YouTubeでもこういう狭いところを狙ったコンテンツが増えてきたので、AmazonとかNetflixは、今度はYouTuberがやらないようなものを求めていく。それに応じて、僕らもまた違うものを提案していくみたいな、コンテンツ作りの波にサーフィンする楽しさがありますね。

あと、『ドキュメンタル』で言うと、マーケティングの戦術としては先に出場者の情報を出して期待値をあおったほうが視聴数は上がるというパターンが大セオリーなんですけど、一方で、普通のコンテンツはシーズン1が一番見られて、以降は下がっていくっていうセオリーがあって。でも、『ドキュメンタル』はシーズン1で話題になって、2、3と上がっていって、世界的にこのモデルケースがなかったそうなんです。そこで、違うマーケティングをしようとなって、視聴数が下がってもいいから、あえて出場者の情報を隠してみたいと言ってきたんですね。そしたら、そのシーズンの再生数がまた上がったんです。こんな実験まがいのこと、スポンサー料金をもらって制作費にしている民放にはできないですよね。だからすごく面白いし、こっちの仕事が多めになっちゃってます。

  • 『HITOSHI MATSUMOTO Presents ドキュメンタル』シーズン1の完成披露会見=2016年11月30日

――一緒に『ドキュメンタル』をやられている小松さんは「テレビ局が地上波の番組を作るために人を囲い込んでおくのは合理的ではない」とおっしゃってました。

実際、僕はTBSの藤井(健太郎、『水曜日のダウンタウン』など演出)くんと、フジの木月(洋介、『痛快TV スカッとジャパン』など演出)くんと、日置(祐貴、『人志松本の酒のツマミになる話』『まっちゃんねる』など演出)くんの3人には「早く局辞めなよ」っていつも言ってます (笑)。ゴールデンの制作費なんて、もう昔の半分以下ですよ。そしたら、「お金じゃなくてアイデアで頑張る」と言われるかもしれないけど、やっぱりお金がない分アイデアとか可能性も減らされる中で企画を考えなきゃいけないから、どうしてもコンテンツが縮こまってしまう。かたや、1億円使える番組があるのに、頑張って2000万円で作るとなると、どんどん乖離していくじゃないですか。だったら、彼らのような能力があって面白いものを作れる人たちは、局を辞めてこっちの世界に行こうよって思うんですよね。彼らが来たら僕のライバルが増えちゃうから、本音は自分のことで必死ですけど(笑)