――プレゼンを担う弘中アナは、今や独自の地位を確立していますが、ブレイクのきっかけはこの番組ですよね。
もともと面白い人だなと思ってたんです。アナウンサーの人って普通は断定して話さないんですけど、この前若林さんに『Abemaだからコンプライアンス緩いの?』って聞かれたら「コンプライアンスは一切ありません」って言っちゃうとか(笑)、思い切りの良さがすごく面白いなと。『アップデート大学』にはいろんなアナウンサーが出ていたんですけど、弘中さんにぜひ絞りたいということでお願いしました。
――大当たりでしたね。
台本は1回の収録、2本撮りでA4の紙40枚くらいあるんですが、それを頭に入れてきてプレゼンをするなんてことをすんなりできると思っていなかったので、弘中さんがいきなり完璧にこなしてめちゃくちゃびっくりしました。カンペ見っぱなしになるかと思ったら、全て自分の言葉に変換してプレゼンしてくれたし、情報番組の説明じゃなくて、機転を利かせてちゃんと笑いに落とし込む話術、表現力があって、ちょっと特殊だなと思いましたね。
――予想以上に跳ねたという感じなんですね。
そうですね。「跳ねたのはこの回だ」というのがあるんですけど、それは台本に「弘中アナがすごく盛ったことを言う」っていうのを入れてみたんです。そこの部分で、若林さんが「さすがにそれはウソでしょ!」って言いながら、激レアさんに「これ本当ですか?」って確認したら、激レアさんが「それはウソです」って言うくだりがあって(笑)。それを1回やったら「この人、なんでそんなこと言うんだ!?」っていう異質な面白さが出て、そこから今の感じに番組がステップアップしたと思いました。
――以前、弘中アナにインタビューした際、本人は当時担当していた『Mステ』と「本番の臨み方はそんなに変わらない」と言ってたんですけどね…。
よく「あざとい」という言われ方もするんですけど、僕は全然そんなことないと思います。あざといとも毒舌とも両極端なことを言われてると思いますけど、僕なりに3年間見てた結果、「シンプルにただ面白い人」なんじゃないかと(笑)。表裏が一切なくて、その都度機転を利かせて頭の回転が早くてパッと面白いことを言える人なんだなと思いました。
――それを引き出すのに、若林さんの役割も大きいですか?
そうだと思いますね。企画段階から横に並んだ雰囲気も、明らかに合うだろうなと思って。オープニングトークで、弘中さんがカンペを全無視して自分で持ってきたもっと面白い話題を始めちゃうとか、画面上には映らない良さを若林さんが面白がって拾ってくださったことで、個性が際立ったと思います。若林さんは激レアさんに対しても、必ずすごい部分を見つけて感心したり、人と話す中で相手の魅力など、たくさんの情報量を感じ取る方だなと思います。
――お互いの恋愛ネタをイジり合ったときは、すごいなと思いました(笑)
あれはあの2人じゃないとできなかったですね。そもそも、弘中さんじゃないとああはならないです。普通の女性アナウンサーだったら、イジっちゃいけないじゃないですか。でも、「今まで散々若林さんのことをイジってきたから大丈夫です」って堂々と受けて立っていたので、すごいなと思いましたよ(笑)。若林さんのイジリも、ひねりが効いていて鮮やかで「とんでもない名勝負を見たな」と思いました(笑)
12月14日放送のオープニングトークでも、若林さんの結婚と弘中さんの「好きな女子アナ1位」をお互いに祝い合っているんですけど、互いに過去の発言を持ち出したりしてチクチク刺しあっていて(笑)、この関係性はこれまで3年間の積み重ねで、この番組だけの面白さだなと思いました。
■今のテレビのセオリーに逆行した作り
――ほかにも、演出面でのこだわりはありますか?
基本的に45分くらいの話を垂れ流すという構成なのですが、そうすると途中でチャンネルを変えて見てくれる人には分からないから、今のテレビのセオリーには逆行していると思います。だからこそ、物語性をちゃんと作るということを意識しています。
それは無理くりこっちが作るんじゃなくて、物語性が出てくるまで取材するということを念頭に置いているんです。出てくれる方は、人生の中でみんなすごい決断をして、それが転がって激レアさんになっているから、その決断しているところにストーリーがあるはずなんです。誰が聞いても面白いと思う起承転結がある1つの物語を作るってというこだわりから、台本を書き直す回数も多いですね。
――その人の人生そのものですもんね。今年の4月に月曜23時台から土曜22時台に進出されましたが、それに伴う変化というのはあったんですか?
ありました。僕は、一般的に何に引きがあるのかがあまり分かってなくて、ディレクターになった『怒り新党』でも「新・3大〇〇調査会」というとにかくマニアックで面白ければいいというVTRをずっと作っていたので、土曜日という各局ものすごい派手なコンテンツが並んでいる中で勝負するにあたって、ちゃんと見てもらう努力をしないといけないと思いましたね。
そのために、ちょっと入り口を広げるようなテーマも考えるんですが、みんながめちゃくちゃ興味あるとされていることにしてしまうと、それはそれで他の番組と似たようなものになっちゃうので、そのせめぎ合いがずっとあります。だから、すごくキャッチーな回もあれば、持ち味を再確認するためにあえてマニアックなことをやろう、という時もあるので、そこは毎回試行錯誤しています。
――これまでで一番の会心の“激レアさん”はどの回ですか?
いっぱいあるんですけど…「小学校に6日しか通わなかったので、ウソみたいに何にも知らなかったけど、スーパーマーケットのバイトだけで文字や常識を学び、超やり手の社長にまで上り詰めた人」(18年9月10日放送)ですね。ホッチキスが分からないとか、ヘアピンが鍵を開ける道具だと思ってたりとか、電卓の「×(かける)」ボタンが「×(バツ)」に見えて押したら大変なことになると思ってたりとか、信じられない体験をしていて、なおかつそれが全部成功に向けて消化されていくっていうのが、ストーリー性もすごくドラマチックだったんですよ。世間から一見ハミ出して見える人こそが、本当はすごいんだよっていう敬意がちゃんと伝わった回だったので、良かったなと思います。