――これまで五箇さんが手掛けてきた番組は、テレビだけで完結していないという印象があります。たとえばEXILE/三代目 J SOUL BROTHERSのNAOTOさん本人が、夜は悪を倒すヒーローになる『ナイトヒーローNAOTO』など、設定が現実とリンクしたドラマもあります。
メタ構造が好きというのはありますね。『電影少女-VIDEO GIRL AI 2018-』もそういった部分はあります。自分だけのアイドルだった西野七瀬さん演じる天野あいが社会的に有名になっていく。たまたまですが乃木坂46の卒業の時期に特番を放送することができ、結果的に内容もリンクすることになりましたし。『四月一日さん家の』も、ある種のメタで、キャラクターたちを「演じさせる」というところがミソだったりします。
――今後、こういう番組を作ってみたいという構想はありますか?
興味のあるジャンルで言うと、VTuberやVR、3DCGもそうですが、テクノロジーは日進月歩、どんどん進化しているじゃないですか。それをいかにテレビ番組、ドラマに融合させるかに一番興味があります。Netflixでやってる『ブラック・ミラー:バンダースナッチ』は、主人公がインタラクティブにAかBかで選択を迫られていくんですが、タイムラグがなくシームレスにB選んだらすぐそのシーンに進むんです。そういうインタラクティブなエンタテインメントが主流になっていくだろうなと。そのときに第一線で仕事できるように、知見を積みたいと考えていて、そのためには『四月一日さん家の』のような試みを恒常的にやっていきたいですね。
■最終的な起爆剤にテレビを
――「若者のテレビ離れ」と言われることについては、どうお考えでしょうか?
結局テレビって、オールドメディアの宿命ですが、視聴者の方々の中心は年配の方々です。けれど、影響力はまだまだ大きいので、若い人に「テレビってこういう使い方をしたら面白いのに」と思ってもらいたいし、何かを広げることの最終的な起爆剤的に、うまく使ってもらえたらいいな。ウェブから広げても親の世代には届かなかったりする、「それならテレビで」みたいな。僕はいい年なので、そういう風に考えて、テレビで表現をする若い人たちの手助けをしたいと思っています。
――ご自身が影響を受けた番組を1つ挙げるとすると何ですか?
難しい質問ですね…(笑)。影響を受けた番組は、ドラマ『演技者。』(2002~04年、フジテレビ)でしょうか。松尾スズキさんをはじめとする、小劇場の名戯曲を映像化する番組です。この番組を見て、「自分がやりたかったことをテレビでやっている人がいる!」と思い、初めての自分の企画『30minutes』を『演技者。』の監督に直談判して、演出してもらうことになりました。それが、後にたくさん作品ご一緒することになる、大根仁監督との出会いでした。
――いろいろお話を聞かせていただき、ありがとうございました。最後に、気になっている“テレビ屋”をお伺いしたいのですが…
酒井健作さんですね。『トリビアの泉』(フジテレビ)をはじめとする、名だたる番組を手掛けてきた頼れるベテラン構成作家です。『電影少女-VIDEO GIRLシリーズ』『四月一日さん家の』の構想は、健作さんとの雑談から始まりました。特撮をはじめとする圧倒的な知識量とプロとしてのバランス感覚を併せ持つ、僕にとって稀有(けう)で大切な存在です。