1年放送できなかった再現ドラマ
――これまでいろんなエピソードを紹介してきたと思うのですが、なにか鉱脈みたいなものはあるんですか?
先ほども言った航空パニックモノは、番組開始5年目くらいからやり始めましたが、最初から数字が良かったですね。航空パニックは本当によくできているんです。『アンビリバボー』は昔、冒頭で心霊写真などの「恐怖のアンビリバボー」、真ん中で「ミステリアスアンビリバボー」、最後に「感動のアンビリバボー」という3つのコーナーをやってる時期があったんですけど、航空パニックは、最初にウキウキした感じからいきなり恐怖が訪れ、なぜその事故が起きてしまったのかを解明するミステリーの要素、そして最後はクルーが勇気を出して決断して全員助かるという感動もあって、1つの話ですべて網羅することができるんですよ。だから、視聴者の皆さんの反響も大きかったんだと思います。
――航空パニックは世界中でありますから、事例も多いんですか?
でも、大体やりきっちゃいましたね。パイロット養成学校の方がいろんな航空事故の文献を調べているので、そういう人にも話を聞きに行くんですけど、担当ディレクターは「もうありません」と言っています。番組のポリシーとしては、一部例外はありますが、基本的に人が亡くなってないものをやろうというのがありますからね。
――そこまでやり尽くすと、もはや映像資料ですよね。他に、印象に残っているエピソードはありますか?
「クラウディア 最後の手紙」(04年2月12日放送)ですね。蜂谷弥三郎さんという方が、妻の久子さんと戦時中、結婚してすぐ満州に行って、弥三郎さんは終戦直前にソ連に連行されてシベリアに抑留されるんですね。久子さんと赤ん坊だったお子さんは日本に帰ってくるんですけど、弥三郎さんはなかなか解放されず、日本では死んだということになったんですが、久子さんは再婚を勧められても生きてると信じて待ってたんです。そうして年月が経ってソ連が崩壊すると、弥三郎さんの存在が判明して、現地でクラウディアさんという女性と事実婚状態で一緒に暮らしていることが明らかになって。するとクラウディアさんは「あなたは日本に帰るべき」と主張するんですが、弥三郎さんが「おまえを残して帰れない」と言うと、「久子さんを不幸にすることはできない。人の不幸の上に自分の幸せを築くことはできない」と、無理やり日本に帰すんですよね。それで、弥三郎さんと久子さんが再会するときの映像もあって、これはやろう!ということになりました。
――すごい話です…。
ただ、いろんなことがあって、再現ドラマを作ってから1年くらい放送できなかったんです。弥三郎さんが"明治の男"的な方で、スタッフのちょっとした言動がお気に召さなかったり、再現ドラマの箸の使い方が自分と違うと納得されなかったり。でも、ようやく放送できて、それがすごく良い回になって、その後、阿部寛さんと黒木瞳さんの共演で、私もプロデューサーを務めて『遙かなる約束』というドラマになったこともあり、非常に思い出深い作品ですね。こうやってちゃんとしたドラマになったのを思い出すと、古沢さんに褒められたのが、やっぱりこっ恥ずかしいです(笑)
信頼感を持たせるたけしの説得力
――この番組は、やはりストーリーテラーのたけしさんの存在も大きいですよね。『世にも奇妙な物語』のタモリさんと双璧をなしているという感じです。
初期の頃は、本当にそんなことが起きたの?っていうネタも結構やってたんですよ。そういう中で、たけしさんがいらっしゃることによって説得力が出てくるので、視聴者が信頼感を持てるんです。
――たけしさんのパートの収録はどれくらいのペースでやってるんですか?
月1回ですね。たけしさんは、いろんなところで「『アンビリバボー』はVTRの中身知らないでやってんだよ」なんて照れも含めておっしゃっていますが、実は現場では「あれね!ディスカバリーチャンネルで見たよ」と、結構ご存知でらっしゃることも多くて、ああいう話にすごく関心を持ってらっしゃるんですよ。
――MCの剛力彩芽さんとバナナマンさんも6年目になります。
もうそんなになりますか! 感覚的には3年くらいなので、早いなあ。このお3方はバッチリだと思いますよ。剛力さんはすごく『アンビリバボー』にマッチした人で。VTRで取り上げられる人や考え方に、心の底から感動して共感されるんですよ。剛力さんって奇跡みたいな人で、最初にお会いした時はまだ10代でしたけど、日本にこんな無垢でピュアな人がいるんだ!って衝撃を受けたのを覚えてます。かといって、ものを知らないわけじゃない。ご家族とすごく仲がいいし、本心で「家族が大事」っておっしゃるんですよ。だから、VTRに感情移入できるんですよね。
――この前の取材会では「番組を通して私もちょっとずつ成長できてるんじゃないかな」とおっしゃってましたよね。バナナマンさんはいかがですか?
設楽(統)さんは、毎回コメントがすごいなぁと思うんです。僕らも想定してないような、いろんな角度からポーンと深いことをおっしゃって、「そういう見方があるんだ」と思わせてくれます。日村(勇紀)さんもいろいろおっしゃってるんですが、設楽さんがあまりにも良いことを言うので、OAではどうしても設楽さんが多くなっちゃう(笑)。でも、日村さんは、一般の視聴者に近い感覚でコメントしてくれますし、笑いも作ってもらえるので助かります。そしてバナナマンの2人で、うまく剛力さんをフォローしながら、実はスタジオを回してる感じもあって、本当にすごいなと思いますね。
――以前のスタジオメンバーは所ジョージさんや関根勤さんといった大御所の方でしたが、そこからバナナマンさんと剛力さんに交代するというのは、大きな決断だったのではないでしょうか。
そうですね。でも僕は、テレビを見ている人の3分の2が50歳以上という今、その方に見ていただかないといけないのはその通りだと思うのですが、少なくとも『アンビリバボー』は、若い人が全然見ない番組であってはいけないと思ってるんです。やっぱり未来の日本の担い手になる若い人たちが見て、何かを感じてくれたり、何か思ってくれたりしてほしい。僕らが小学生とかの時代に冒険モノの本を読んでワクワクしたり、偉人モノの本を読んですごいなと思ったりしたのと同じような番組でありたいと思っているんです。そういう意味で、20年やってると僕も含めてだんだん年が上がってくるので、剛力さんとバナナマンさんにお願いしたんです。