――今でこそ『クレイジージャーニー』という番組名は知名度も広がっていますが、最初は警戒されることもありませんでしたか? ジャーニーの方は「俺、クレイジーなのか?」みたいな。
本人たちはやはり自分をクレイジーだと思ってないんですよ。僕が話をすると、「確かに、周りからクレイジーって言われるわ、へへへ(笑)」みたいな感じなので、取り立てて問題はないのですが、困るのは外国で取材申請するときですね。「リングリングサーカス」っていう今はなき世界一のアメリカのサーカスで活躍していた日本人を取材する時に、タイトルが『クレイジージャーニー』ということで警戒されました(笑)。褒め言葉で言ってるんですけど、伝わらないですよね。ゴンザレスさんがミギンゴ島というところに行く際の取材申請でも「ヤバい旅人じゃないんですよ」と説明するときはドキドキしました(笑)
――やっぱり(笑)。もともと旅がお好きだということですが、ご自身がロケに行きたいという気持ちはあるんじゃないでしょうか?
はい、本当は全部行きたいですからね(笑)。基本的にジャーニーと最初に会って"クレイジー具合"を見てるんですけど、そこでいろいろ話を聞くと、もうワクワクします。でも、そこをグッと抑えてますけどね。
――他局ですがナスDみたいな人もいますが…。
あれはすごいパターンだと思います。世界を旅する番組がいっぱいある中、新しい演出手法ってそんなにないんと思うんですが、演者を静止するはずのスタッフが一番イケイケになっちゃうっていうすごい斬新なパターンですよね。
――ナスDに感化されて自分も…ということはないですか?
いやいや、ないです(笑)。やっぱり出る人たちってすごいと思いますし、ましてや作り手で出るなんて、とてもじゃないけどそんな能力、僕にはないですから。だから、ナスDもそうですが、僕はヘイポーさん(『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』アドバイザー・斉藤敏豪氏)もすごいと思っているんです。作る側なのに超面白いじゃないですか(笑)
刺激的な画もリスペクトの気持ちで
――横井さんの人となりも伺っていきたいのですが、入社されて最初から制作ですか?
そうです。バラエティ志望で入ったんですけど、1年目はドラマで、田村正和さんと黒木瞳さんの『夫婦。』や、市原隼人さんと綾瀬はるかさんの『あいくるしい』で末端のADをやって、バラエティに移って『学校へ行こう!』にADから入ってディレクターになり、番組終了までやりました。何が起こるか分からないロケが楽しいというのは、そこで学びましたね。それから、ダウンタウンさんが大好きだったので、念願だった『リンカーン』に入って、お2人との打ち合わせは刺激的かつ楽しくて仕方なかったです。面白いものを作るということに対するストイックさは、それこそ"クレイジー"なので、企画を見せるのはやっぱり怖かったですけど、そういう姿勢が勉強になったし刺激になったし、直接会話してやり取りするということが楽しくてしょうがなかったですね。
――そんな横井さんが、今後作ってみたい番組はどんなものですか?
好きなことをうまく番組にしたいなって思っているので、自分の好きな「歴史」をうまくエンタテインメントにして面白く見られるような番組を作りたいというのを、すごく考えています。いろんな時代に眠っているカッコいい話とか逸話とか、男気とか裏切りとか、そういうのをバラエティでやりたいですね。『クレイジージャーニー』の、「難しいテーマの回」でも少し笑えるよう工夫して、松本さんたちが驚いてるから見てみようという人たちが出ることを狙っているので、バラエティにすることによって、間口を広げるイメージです。
――最近のテレビは規制が厳しくなったと言われる中、危険地帯にも果敢に臨む『クレイジージャーニー』をやっている横井さんも、そういう傾向は感じますか?
はい、変化が早過ぎるなと思いますね。前はOKだったものが、急にダメになるということが多くなってると思います。でも、その中でやらなければならないものもあると感じています。
――そんな中で、例えば『クレイジージャーニー』で紹介された「ボディサスペンション」は、このご時世になかなか刺激的な画でした。
そうですよね。でも、そこは文化だから否定するのはおかしいという正義なんです。あれを見て不快に思う人は多いかもしれないけど、そういうことに情熱を持っている人たちがいるということを伝えたいというリスペクトの気持ちがあるんです。
――ご自身が影響を受けたテレビ番組を1本挙げるとすると、何ですか?
『電波少年』(日本テレビ)ですね。ヒッチハイクの旅で有吉弘行さんが、お金がなくなってお寺に入って、一緒に托鉢に回るというシーンを強烈に覚えてるんです。世界の日常にこんなことがあるんだと衝撃的で、そこから海外旅行に目覚めました。何十カ国も旅して、今も路地の裏を覗いてみたりして、それが『クレイジージャーニー』につながっています。
――いろいろお話を聞かせていただき、ありがとうございました。最後に、気になっている"テレビ屋"をお伺いしたいのですが…
『家、ついて行ってイイですか?』をやってるテレ東の高橋弘樹さんが作るものはいつも面白いですね。作り手の色、個性を感じるものばかりで、それは高橋さんが一番面白いと思ってることをちゃんと形にしていて、それがエンタテイメントとして面白いからすごく勉強になります。『ジョージ・ポットマンの平成史』で、狭い特定の歴史をテーマにするというのは、僕もやってみたかったことでもありますし、『家、ついて行ってイイですか?』も、テレビは人が見たことのないものを見せるという気持ちでやっている中で、一番身近にあったのが「他人の家」だということに「なるほど!」ってなりました(笑)