注目を集めるテレビ番組のディレクター、プロデューサー、放送作家、脚本家たちを、プロフェッショナルとしての尊敬の念を込めて"テレビ屋"と呼び、作り手の素顔を通して、番組の面白さを探っていく連載インタビュー「テレビ屋の声」。

今回の"テレビ屋"は、TBS系バラエティ番組『クレイジージャーニー』(毎週水曜23:56~)の演出を務める横井雄一郎氏。危険地帯に乗り込んでいく"クレイジージャーニー"たちが、なぜ番組ディレクターの同行取材を受け入れるのか、その秘密を聞いた――。

カメラが蹴られて吹っ飛んでいく

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横井雄一郎
1981年生まれ、神奈川県出身。法政大学卒業後、04年にTBSテレビ入社。『学校へ行こう!』『リンカーン』『ドリームマッチ』『キングオブコント』などをへて、現在は『クレイジージャーニー』で演出、『水曜日のダウンタウン』でディレクターを担当。

――当連載に前回登場したテレビ朝日『人生の楽園』の森川俊生プロデューサーが、「テレビ局も安全基準に敏感になっている中で、一見闇雲に危険な道に突っ込んでいるようで周到なリスクコントロールをしているはず。その秘密や、どういう取材体制を組んでいるのか」と気になっておられました。

答えはすごいシンプルなんですけど、旅のプロであるジャーニーのリスク管理に従っているだけなんです(笑)。危険なところに行って、そこの空気感とか、これはカモにされてるなとか、相手の仲間同士で連絡が回っちゃってるなというのを、現場でジャーニーがリアルに感じ取って、行こうか引こうかと判断しています。

――番組側でなにか基準を設けていることはあるんですか?

基本的には、外務省の渡航情報で退避勧告の国には行かないことくらいですね。例えば、ブラジルのスラム街・ファベーラのギャングの撮影の時なんか気をつけようがないので、コネクションを持っている人とちゃんと密に信頼関係を築いてやるっていうことですね。バーンって銃で撃たれることもあり得る環境らしいので。そんな中でも、極力カメラは回したいと思っています。臨場感とか、回せない理由が撮れるようにしてますね。14日(今夜)の放送でも、カメラが蹴られて吹っ飛んでいくみたいなことがあって、それでロケは撤退しましたし。

――現地の取材体制は、ジャーニーと同行ディレクターの他にもスタッフがいるんですか?

ケースバイケースですが、基本はその2人ですね。あとは現地の通訳や移動のドライバーがいたりいなかったり。カメラは、ディレクターのハンディと、GoPro(小型カメラ)をつけて"2カメ体制"になってます。だから、旅に行って帰ってくると、ジャーニーとディレクターがすごい仲良くなってるんですよ。

――滝沢秀明さんもそうでしたか? 同行ディレクターは「ポンコツ」と言われていましたが(笑)

そんな2人にも絆ができていて、帰国の日に空港に迎えに行ったら、滝沢さんの方からディレクターに握手をして帰っていったんですよ。そんなところを見ると、「あぁかっこいいし、うらやましいなぁ」と思いますね。あんなに「ポンコツ」って言われていたのに、収録の時なんかはディレクターが「編集こんな風になってます」みたいなこと言うと、「もう任せてるよ」っていう感じで、信頼関係ができてるんですよね。

――そうすると、危険地帯ジャーナリストの丸山ゴンザレスさんや、奇界遺産フォトグラファーの佐藤健寿さんなど、おなじみのジャーニーには、決まりのディレクターが付くんですね。

そうですね。よく出てくださる人には、相性やリズムが合うディレクターがいつも付いてます。旅は人間の本質が出るので、カメラの回ってないところでうまくいかないこともあったり、待ち時間でせっかちなタイプの人がいたりしますからね。

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    佐藤健寿氏(左)と丸山ゴンザレス氏=2016年2月のDVD発売イベントより

選ばれし"ロケ猛者"たち

――そのディレクターは、全部で何人くらいいらっしゃるんですか?

実は結構少なくて、6人くらいです。それでローテーションで旅に行ってもらってます。

――選ばれし6人ですよね。

ロケが好きで、どうなるのか分からないことを楽しんでいる人が多いですね。それと、人やモノに興味がある人。それが大前提だと思いますけど、"ロケ猛者"たちですね。

――志願してくる人もいるんですか?

やりたいって言ってくれる人はいますし、やってることを誇りに思ってくれている感じもありますね。「あれは俺が撮ってきたんだ!」という気概があります。