――今は制作一部長というお立場ですが、具体的な仕事はどんな内容なんですか?
番組内容にはノータッチですね。感想は面白かったときだけ。つまらなかったとかは言ってもしょうがないと思うんですよ。言ったって面白くならない。自分の経験でも嫌な思いするだけでプラスになったことないですから。でも、20個に1個くらい、聞いておいて良かったっていう場合があるんで、その20個に1個を目指してたまに言うことはありますけどね。褒めて調子に乗らすほうが僕は当たる近道だと思ってますから。僕の業務は、褒める。コンプラチェックする。あとはお任せ、です。
――どういう部分を褒めるんですか?
素人でないからそういう演出面を褒めるようにしてますけど……最近はそうでもないかなぁ。普通のオジサンみたいな褒め方してますね(笑)。でもそれでいいと思うんですよ。部長が細かいことを言うのが良いとは思わないので。構成がどうとか編集がどうとかよりも「いやー、あれ感動したよ」「面白かった」って。凝って作っている部分とか、気づくと喜んでくれるだろうなって部分は言ったりしますけどね。
――部長の立場だと当然、全体の視聴率が気になるとは思いますが、そのあたりはどのようにお考えですか?
うちは今、編成がいいと思うんですよ。だから、僕は編成の言いなりです(笑)。制作は編成の言いなりなのが会社としていいと思うんですよ。会社のヘッドクォーターが決めた指針は、スムーズに水が流れるように行くことが何よりも大事。もし、その出元の水の流し方がおかしかったら、その出元である編成はいずれ変わるわけだから、それよりも途中の水路に障害があることのほうが問題だと思うんです。で、うちのここ5年くらいの編成が、ちゃんと考えていると思うのは、ひとつは視聴率をもちろん取らなきゃいけないけど、あとひとつ、オリジナリティのことをすごく言うんです。僕はその方針だから編成の言うことをちゃんと聞いてる。うちの編成ちゃんとしてると思いません?
――いい意味で狂ってると思います(笑)
いや、元々はそれが真っ当だと思うんですよ。やっぱりオリジナリティがなければ、どんな商売でもそうですけど、人は注目しない。他局がアレをやっていたから、うちもやるって言うのはどう考えても自殺行為。合理的じゃないですよね。オリジナリティのある番組は「そんな訳のわからない番組、数字取れないよ」って言われたりしますけど、確かにそういう面もある。けれど、他局の番組を真似したって20%取れるわけじゃないじゃないですか。20%取れるなら、ビジネスなんでそれでいいと思うんですけど、5%だったのが、視聴率が取れるって言われている要素を足したって6~7%とかになるくらいだったら、合理的じゃない。オリジナリティにこだわらないほうが理屈に合わないなと思ってますね。
だからきれい事ではなく、ビジネス感覚としてオリジナリティが大事だと思ってやってます。だからみんなにも言いますね、2つある、と。「オリジナリティがなくても鬼みたいに視聴率を取る」か、「ものすごくオリジナリティがある」か。どちらかがあればいいと思うよって。『クレイジージャーニー』もいい番組だし、『ぴったんこカン・カン』もいい番組。そこに僕の中で差別はない。そういう考えだけは伝えてますね。手前味噌ですけど、今のTBSは、個性があるいい番組がいっぱいありますよね。
――すごくバランスがいいと思います!
確かに『水曜日のダウンタウン』は問題ばっかり起こりますよ(笑)。部長の仕事で一番大変なのはトラブル処理です。大変ですし、大して視聴率も取らないですよ。でもやっぱり今テレビ界であんな番組はあれしかないので、すごく値打ちがあると思いますね。
この間の編成から来た企画募集も「オリジナリティがあって視聴率が取れるもの」で、そりゃそうだろって(笑)。でも笑い話のようですけど、"真実"だと思うんです。編成はアホみたいに真実を言い続けるのがいいと思うんですよ。数字さえ取れればいいとも言わないし、オリジナリティがあれば数字はいらないとも言わないのが当然。恥ずかしくもなく堂々と言うのが大事だなって思うんです。僕は現実的に両方兼ね備えてなくてもいいからどっちかって控えめに言ってますけど。視聴率なんて目指して取れるものではないですからね。
――30日(19:00~)には『学校へ行こう!』のスタッフが集結して、特番『V6の愛なんだ2017 史上最高の夏まつり!』が放送されますね。
この番組も「やりましょう」って提案してきたのは編成からなんですよ。今、明るくて笑えて泣ける青春バラエティって他局にないじゃないですか。だから、これはうちがやらなきゃいけないって。そういう余所(よそ)でやらないことをやるっていうのはすごくいいことだと思うんです。『学校―』や『ガチンコ!』を作った年寄りたちが集まって作ってますよ(笑)。V6も大人になって今、すごくいい雰囲気ですからね。
『V6の愛なんだ2017 史上最高の夏まつり!』(TBS系、30日19:00~21:54) |
――今、TBSのバラエティで、第一線で活躍されている方のほとんどは、合田さんの元で育った方たちですよね。
僕のことリスペクトしてるヤツなんて1人もいないですよ(笑)。編集のやり方も変わりましたし、作り方を教えることはもうできませんから。テレビは時代のものなんで5年も現場を離れたズレちゃいますし。昔の僕の番組を見て参考にしているなんてヤツもいないと思いますよ。
――でも、僕が取材したTBSの作り手の方はみなさん、合田さんの名前を出されます。
言いやすいからじゃないですか(笑)。でも、僕の影響下にはないけど、考え方は多少はあるかもしれないですね。あとは、自分たちがこうでありたいと思うときに、それを保護してくれそうな人に寄ってくるんじゃないですかね。若い人は大人の理屈より、僕がさっき言ったようなことを考えてるから、僕のところに行ったほうが有利じゃないか、この人は味方かもって思ってくれてるのかもしれないですね。そんな味方じゃないんですけど(笑)、味方っぽく見える。視聴率を取ろうとする努力は必要だけど、こうやれば視聴率が取れるみたいな考え方は僕の中ではドツボにはまってること。同じようで全然違う。そういう考え方だけは伝わってほしいなと思って、一生懸命、言ってはいますね。
――そんな合田さんが影響を受けたテレビ番組を1本挙げるとすると、何ですか?
『ビートたけしのお笑いウルトラクイズ』には憧れましたねえ。あんなバカげたことをやって、しかも、それがコントではないというのが面白かったですね。でも、やっぱり1本っていうと素人さんの面白さを教えてくれた『元気が出るテレビ』ですかね。
――いろいろお話を聞かせていただき、ありがとうございました。最後に、気になっている"テレビ屋"を伺いたいのですが…
『ワイドナショー』『IPPONグランプリ』などを作っているフジテレビの竹内誠くんって元々MBSなんですよ。中途入社でフジに入ってるんですけど、MBS時代にTBSに派遣されてきて、1年だけ『学校―』のディレクターやってたんです。こんなことを言うのは失礼ですけど今、フジテレビが苦しい状況の中でいい番組を作り続けている原動力が何か気になりますね。